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第十四章
第三百七十六話 討伐団
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リテラ大陸冒険者協会。
中央大陸でいうところの冒険者ギルドにあたるこの組織には、多くの人々が冒険者として所属している。
リテラ大陸の冒険者協会の活動内容も中央大陸の冒険者ギルドと同様で、魔物と戦う人材の管理と斡旋などといった基本的な部分は変わらない。
だが、リテラ大陸ではその魔物自体がそこら辺にいるわけではないため、近辺に出没する魔物討伐の依頼は滅多にないらしい。
では、リテラ大陸の冒険者達は何処で魔物と戦っているかと言えば、それは迷宮だ。
「うん。リテラ大陸の食い物も悪くないな」
「むぐむぐ」
「口の中の食べてから喋ろよ」
「むぐ」
大通りに面した飲食店の店内にて、テーブルの上を埋め尽くさんばかりの様々な料理が並べられている。
これらに使われている食材の多くはダンジョンにいる魔物であり、そのダンジョンは俺達がいる都市の近郊に存在している。
ダンジョンの種類は幻造迷宮。
俺の領地の一つ神迷宮都市アルヴァアインの中心部である巨塔のような神造迷宮ではないため、最奥にある迷宮核が破壊されれば崩壊する。
そのため、この幻造迷宮の崩壊を防ぎつつダンジョンから継続的な資源回収を行うために、ダンジョンはそのダンジョンがある土地が所属している国家が所有権を有し、管理している。
これはリテラ大陸の殆どの国家でも同様で、それらのダンジョンの実質的な管理運営を国家から委託されているのが冒険者協会だ。
国家が直接ダンジョンの管理運営を行わないのは、冒険者協会がダンジョン管理のノウハウを有しているのと、特定の有力者へ権力が集中するのを防ぐのが理由だと思われる。
ここまでならば、中央大陸の冒険者ギルドと然程変わらないのだが、リテラ大陸のグランアス真帝国では都市部から遠く離れた場所に出現したダンジョンに関しては、その完全攻略によるダンジョンの破壊が推奨されている。
中央大陸では新たに出現したダンジョンの近くに村や町、そして都市を築くのが一般的──立地やダンジョン自体に不利益な理由でも無い限りは──だが、グランアス真帝国ではそうではない。
人口の増加や国防上の理由などが挙げられているが、それは表向きの理由で、実際は幻造迷宮にのみ存在する資源である迷宮核に大きな価値が生まれたからだ。
「迷宮核などを用いた魔力錬核技術か。詳しく調べたいが、国家の秘匿技術だから外からは何も分からないな」
「んぐ。この料理もですが、技術についても主様の方が上です!」
冒険者協会の冒険者となって一ヶ月が経つが、ヒュスミネの主様呼びは今も直っていない。
偽名のニグラスよりも敬称や本名の方が呼びやすいらしいので、今のようなオフの時は好きに呼ばせることにした。
「まだ直接的見たわけではないから技術に関しては何とも言えないな。料理については好みの問題だから上とか下とかはないだろ」
目の前のヒュスミネを生み出した時には既に料理系統職業スキルは最高位の【最高位料理人】になっていた。
そのジョブスキルに裏付けされた技量を以て調理した料理を口にしたことのあるヒュスミネは舌が肥えている。
ここの料理に使われているダンジョン産の食材も料理人の腕も良いものだが、それ以上の最高級の食材と技量で作った料理を知っているヒュスミネがそう言ってしまうのも無理はないかもしれない。
「そんなものでしょうか?」
「そういうものだよ。料理はさておき、魔力錬核技術について知るためにも近いうち動くとするかな」
「お供します!」
「お前には隠密技能を与えていないから宿に留守番だ」
「全部潰せば問題ありません」
「国の重要施設だからそう上手くはいかないだろう。それに、戦闘の余波で資料や実物が破壊されるのは避けたいからな。その時は俺一人で潜入してくる」
「む……やけ食いします」
元より大食いフードファイターと化していたので、やけ食いと言っても何も変わっていない。
軽く十人前を平らげたヒュスミネが追加の料理を注文している。
注文を聞いている店員の顔が引き攣っているのを横目に見ながら、大通りを歩く冒険者の一団に顔を向けた。
リテラ大陸の冒険者ならではの特徴の一つに〈討伐団〉という集団がある。
この討伐団は、中央大陸で言うところのクランであり、大人数での集団戦闘を目的として結成されている。
店内から見えるあの一団もその討伐団の一つだ。
リテラ大陸の冒険者協会では、協会に登録されている討伐団は幻造迷宮の〈攻略権〉という物を購入することができる。
攻略権とは一定期間のダンジョン占有権を意味しており、その期間中は攻略権を持つ討伐団以外の者達がダンジョンに入ることは禁止されている。
これを破った冒険者は協会から罰則が科せられ、場合によってはダンジョンを所有している国家からも犯罪者として裁かれるそうだ。
攻略権に支払われた金銭の一部は国に納められることを考えれば不思議ではない。
この攻略権の一番の利点は、討伐団でダンジョンを占有することによって第三者からの横槍を防げることだろう。
まぁ、事前にダンジョン内に潜伏されていたら防げないわけだが、それでもその期間中は冒険者協会とダンジョン所有権を持つ国家が討伐団の後ろ盾になってくれるので、攻略権の価値は非常に大きい。
他にも、グランアス真帝国のように遠方にある幻造迷宮の破壊を推奨している国家の場合は、そのダンジョンの完全攻略権まで購入することが可能だ。
完全攻略に成功した場合は、迷宮核を除いたそのダンジョンにある資源の半分が討伐団の物になるため、ダンジョン破壊を目的とした完全攻略権は人気があった。
「あの様子だと完全攻略に成功したみたいだな」
「あんなに弱そうなニンゲンなのにダンジョンを潰せたのですね」
「まぁ、あれだけ人数がいればな。聞いた話だと百人ほどの討伐団らしいが、見た限りだと怪我人含めても七十人ぐらいか」
「やっぱり弱いニンゲンですね」
ヒュスミネの飾らない物言いに苦笑すると、テーブルの中央に備え付けられている防諜用魔導具がちゃんと起動しているのを確認する。
防諜設備付きのテーブル席だったため料金は高かったが、こういう席でもないと俺達みたいのは外食中に気楽な会話などできないからな。
[発動条件が満たされました]
[ユニークスキル【神魔権蒐星操典】の固有特性〈魔権蒐集〉が発動します]
[対象の魔権を転写します]
[ユニークスキル【死魂と降霊の魔権】を獲得しました]
[対象の魔権はユニークスキル【神魔権蒐星操典】の【魔権顕現之書】へと保管されます]
討伐団のリーダーである男を視認したことにより、リーダーの冒険者が所持している魔権系ユニークスキルがコピーされた。
中央大陸にある魔権系ユニークスキルをコピーして回ったのが約七年前だから、その時以来の通知だ。
今日までに解放された【情報蒐集地図】のリテラ大陸のマップによって、この大陸には他にも魔権系ユニークスキルの所持者がいることが分かっている。
まだリテラ大陸の国家が所有している戦力や強者の情報を集めている段階なので、こうして偶然にでも遭遇しない限りはコピーして回るつもりはない。
「この大陸にも超越者はいるみたいだから油断はするなよ」
「んぐ。かしこまりました」
追加注文分の料理が届いて食事を再開していたヒュスミネが、口の中にあるのを飲み込んでから返事をした。
まぁ、ヒュスミネの言うことも分かるんだけどな。
仮に魔力錬核技術などを用いて作られた特別な魔導具である〈魔導機具〉を使う相手であっても、この都市にいる者達ではヒュスミネに勝つことは困難だ。
「魔導機具、通称ギアか。弱者を容易く強者にする魔導具という触れ込みだったか。人類の欲に限界はないとはこのことだな」
遠方の幻造迷宮の完全攻略を果たし、都市に凱旋する討伐団。
そのリーダーや一部の冒険者達が所持する装備は魔導機具であり、元より強者な彼らに更なる強さを与えていた。
それでもなお、俺やヒュスミネとのレベル差やステータス差といった性能の差を覆すほどではないため、ヒュスミネが危機感を抱けないのも無理もない。
魔導機具は非常に高いが、幸いにも俺にはこちらの大陸の通貨で大金を用意する術があったので、幾つか購入してみてもいいかもしれないな。
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