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第二章
第九十四話 光王ノ武戯
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遠距離攻撃強化スキル【光王ノ投射撃】と〈混幻黒銃ドライド〉のチャージショット能力によって強化された闇の魔弾の一撃は、巨大な天使系ボスモンスター〈浮動晶騎の大天使〉の身体を揺るがした。
下半身が円錐形の結晶体となっているフロータルナイトは常に浮遊しているため、強烈な攻撃を受けた際の衝撃を完全に殺すには一対の大翼を使って姿勢制御を行う必要がある。
だが、翼を使った姿勢制御も翼からの光線攻撃の最中は十全に発揮することは出来ず、闇の強撃を受けてよろめいた巨体の体勢を整えるのに数秒ほどの時間が掛かった。
これほど時間が掛かったのは、事前に受けていた同属性の魔弾の攻撃と比べて威力が桁違いに大きかったのが理由だ。
チャージショット分の威力の差異によって隙を突かれた形になる。
その隙も、そういう攻撃手段があることを知ることにより埋まった。
完全に衝撃を殺すことは出来ないが、同じ攻撃であっても次からはフロータルナイトの巨体を大きく揺るがすことは出来ないだろう。
そうして警戒心が高まったフロータルナイトの元に、敵である外神クロヤの声が聞こえてきた。
「【光王ノ武戯】──第一王型〈不治の光王剣〉」
光の狼人と化したクロヤに追随していた4つ全ての光王珠がその形状を変える。
白銀色の球体だった光王珠が瞬く間に同色の光の剣へと姿を変え、その剣尖をフロータルナイトへと向ける。
「行けッ!」
術者であるクロヤの指示に従い、光の剣──フラガラッハが空中を疾走する。
風よりも速い動きで駆け抜けていった4つのフラガラッハが、フロータルナイトの巨大な身体を縦横無尽に斬り刻んでいく。
自由自在な動きで宙を舞うフラガラッハは、クロヤからの追加の指示も操作を受けることなく攻撃を仕掛けている。
飛び回るフラガラッハを撃ち落とすためにフロータルナイトが翼から光線を放つが、人よりも小さく、そして素早い光の剣を捉えることは出来ず、一方的にダメージを負っていた。
その上、フラガラッハによって斬り刻まれた傷は、そのままでは決して癒えることはない。
これは光王珠単独での形態変化の時とは違い、【光王ノ武戯】によって形を変えた光王珠には名前に応じた魔法的な力が宿っているからだ。
〈不治の光王剣〉の名で宿った力は、その名の通り〈不治〉。
〈不治〉という名を冠しているのは伊達ではなく、フラガラッハによって受けた負傷には高位の不治の呪いが掛けられる。
このランクの呪いを解呪する手段は非常に限られており、フロータルナイトの能力では解呪することは出来ない。
「チマチマやってればフラガラッハだけでも倒せるが、魔力が保たないな」
光王珠専用形態変化スキル【光王ノ武戯】の魔力燃費の悪さを嘆くクロヤが、強化付与スキル【天燐】を発動させる。
光属性攻撃の強化と炎属性の追加によって、光属性の剣であるフラガラッハの攻撃力が強化される。
フラガラッハの〈不治〉の効果は強化された分のダメージにも適用し、それは追加属性である炎属性による〈火傷〉も同様だ。
自動治癒されない攻撃により、フロータルナイトの全身に目に見えてダメージが現れていく。
それでも耐久型ボスモンスターであるフロータルナイトにとっては致命的な状態ではなく、ここまでの戦闘でも体力は1割も削られていなかった。
鑑定系アイテムの研究開発のために鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉を貸し出していて、フロータルナイトの状態を鑑定できないクロヤだが、未来での戦闘経験と【気配察知】によって眼前のボスモンスターの状態を看破していた。
懐から〈天使の雫〉を取り出して魔力を回復させたクロヤは、フロータルナイトの攻撃を躱しながら次なる攻撃を行使する。
「【光王ノ武戯】──第二王型〈必中する光王槍〉」
大量の魔力の消費と共に発動した能力により、クロヤの手元に2振りのフラガラッハが飛来する。
身体の前に翳した手に飛び込むようにして2つのフラガラッハの形状が崩れる。
白銀色の粒子と化した2つの光王珠は融合し、1本の長槍へと姿を変え、その色彩を白銀から黄金へ変化させた。
光王珠2つにより転じたのは、必殺必中の黄金の槍。
狙った場所に必中し、急所に命中時のダメージ量が増大されるという、シンプルかつ凶悪な効果を有する黄金の槍を、クロヤは逆手に持ち振り被ると、すぐさま投擲した。
投擲攻撃も遠距離攻撃であることに間違いはなく、ガエ・アッサルの一撃にも遠距離攻撃強化スキル【光王ノ投射撃】が適用されている。
結果、黄金の閃光となったガエ・アッサルは、その増大した威力を保ったまま狙い違わずフロータルナイトの頭部へと命中し、頭部だけでなく胸から上の全てを爆散させた。
「コレにも〈不治〉効果があれば良かったんだけどな……」
フラガラッハと違って〈不治〉効果がないガエ・アッサルによって負ったダメージは回復が可能であることを知るクロヤは、目の前で欠損した部位が高速再生されていくフロータルナイトを見据える。
「『極闇の爆発』」
高速再生中の隙を無駄にすることなく闇属性上級魔法で体力を削るクロヤの手元に、飛翔してきたガエ・アッサルが収まる。
徘徊主であるフロータルナイトによって転移阻害フィールドが展開されているからか、ガエ・アッサルの転移による自動帰還能力に多少の変化が生まれていた。
そのような変化が起こることに内心驚いていたクロヤは、再びガエ・アッサルを投擲し、今度はフロータルナイトの左半身を吹き飛ばした。
「これで第二王型は使えなくなったが、2割ぐらいは削れたかな?」
【光王ノ武戯】の各形態には、第一王型の〈不治の光王剣〉を除いて、使用回数制限と再使用可能時間が存在する。
少なくとも、この戦闘中に第二王型の〈必中する光王槍〉が再び使えることはないだろう。
「抜剣」
クロヤは複合系アーティファクト〈支配の王環〉の能力の1つである念動力を使って〈白霊剣オルトレール〉と〈狐幻魔刀サイラ〉を鞘から引き抜き、元の球体へと戻った2つの光王珠と同じ様に追随させる。
狐幻魔刀サイラの能力【五煌刃尾】により、更に実体のある5つの幻刀が周囲に具現化する。
2つの光王珠を大剣形態に変化させ、合計で9本の刀剣を周りに顕現させたクロヤは、その全てを支配し追随させながら、高速再生中のフロータルナイトへと斬り掛かっていった。
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