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第三章
第百三十五話 果樹園の隠し要素
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スキル【鏡像ノ偽権】。
このスキルは名前の通り、鏡に物が映るように、物の能力をコピーするスキルだ。
ただし、コピーできるのはアイテムが有する能力の中から1つのみであり、1度コピーしたら【鏡像ノ偽権】はその能力へ完全に置き換わり、2度と再使用は不可能になる。
【鏡像ノ偽権】によりアイテム能力からスキルへと置き換わる際に、人でも使えるように微妙に仕様が変わるため、コピーしたら使えなくなる能力というのは滅多にない。
どうせコピーするならば、そのアイテム固有の特殊な能力をコピーした方が効果的だ。
そのため、俺は特に迷うことなく、マジックアイテム〈豊穣の大釜〉の能力【豊穣の大釜】を選択した。
──スキル【鏡像ノ偽権】が使用されます。
──スキル【鏡像ノ偽権】が能力【豊穣の大釜】へ置換されました。
──能力【豊穣の大釜】がスキル【豊穣なる増殖】へ変化しました。
マジックアイテム〈豊穣の大釜〉が持つ同名の能力は、『釜の中に入れた同格までの消費型マジックアイテムを1日1回1個までノーコストで増殖する』という効果だった。
それがスキル【豊穣なる増殖】へ変化したことにより、その効果も微妙に変化していた。
○スキル【豊穣なる増殖】
任意発動型生産スキル。
叙事級までの消費型マジックアイテムを1日1回1個までノーコストで複製することができる。
また、体力と魔力の回復力を常時強化する。
体力と魔力の回復力強化が追加された以外は殆ど変わらない。
大元の〈豊穣の大釜〉の等級は叙事級であるため、能力【豊穣の大釜】の効果にある『同格までの消費型マジックアイテム』というのは当然ながら『叙事級までの消費型マジックアイテム』のことを指している。
スキル化した際に、等級形式も変わっているため、対象となるアイテムの等級が表記されたようだ。
「……やっぱり大釜でもスキルでも複製は不可能か」
「流石にそんな都合良くはありませんでしたね」
「地道に探せってことだな」
マジックアイテム〈豊穣の大釜〉とスキル【豊穣なる増殖】の両方で特殊アイテム〈珠玉の権果〉を複製しようとしてみたが、どちらの効果も対象外だった。
まぁ、特殊アイテムである〈珠玉の権果〉には等級が無いので、この結果は想定通りだ。
ちなみに〈珠玉の権果〉だけでなく〈珠玉の迷果〉も特殊アイテムなので、同様に複製不可能だった。
「これでクロヤも毎日消費型アイテムを複製できるのね」
「私達が引っ越した後は私達の方で大釜を使いますけど、リーダーの方で複製するのもやっぱり〈天使の雫〉ですか?」
「ああ。現状は体力も魔力も回復できる〈天使の雫〉一択だからな。他に良い消費型アイテムがあれば、そっちにするつもりだ」
「クロヤさんでアーティファクトで創造できる〈天使の雫〉みたいな希少性の高いアイテムが良いですよね」
「そうだな。あとは、ダンジョンの宝箱からドロップする消費型アイテムとかも候補に挙がるか」
「クロヤの異能でダンジョンのレアな情報が分かるのよね? 何かそういったアイテムの情報はないの?」
正確には回帰前の未来の情報なんだが、回帰したことは明かすつもりはないから、未知のダンジョン情報を知っているのは異能の力ということにしている。
俺の記憶力にも限界はあるので、未来で見聞きした全ての情報を忘れずに記憶しているわけではない。
全てを思い出すことは無理だと思うが、ステータスの知能値は多少なりとも記憶力に影響を及ぼすため、今の知能値ならば時間をかければ記憶の奥底から掘り起こすことができるかもしれない。
「そうだな……あー、そういえば、このダンジョンの奥地に何かがあったような?」
「何かって?」
「んー、ハチ達がボスのために育てている果樹園かなんかがあるんだが、その中では権果が高い確率で採れるんだ。確かそこに隠し要素があったはずだ」
「隠し要素。内容的に権果とは別の物っぽいわね」
「ああ。そのためには、えっと……」
大事な部分が中々思い出せなかったので、異能【万物変換】第4層能力【肉体変換】を使用して他の能力値の一部を知能値に移していき、知能値を440からキリの良い500へと到達させる。
もう1度思い出そうとしてみると、今度は無事思い出せたので、その内容を彼女達に説明する。
「果樹園にある権果を含めた全ての紅果を無くした上で、その果樹園内でボスモンスターを倒す必要がある」
「ボスモンスターって、もしかして迷宮主?」
「いや、ハチ系ボスモンスターの領域主の1体だ。果樹園の管理者なんだが、このボスモンスターの死体を果樹園に捧げることで出現するらしい」
俺も聞いたことがあるだけで実際に試したことはないが、未来では何度も確認された現象だ。
これによって出現する消費型マジックアイテムは特殊アイテムではないため、複製が可能なはずだ。
その希少性と効果を考えれば、試してみる価値はある。
「──という効果を持つらしいアイテムなんだが、どうする? 狙ってみるか?」
「それが本当なら試してみる価値はあると思うわ」
「危険ですけど、それだけの価値はありそうです」
「リーダー、紅果は木から切り離すだけでいいんですか?」
「というと?」
「武器で切り落としたり、紅果自体を破壊するだけでも大丈夫なのかと思いまして。大丈夫なら作業が早く終わりますから」
マリヤに言われて記憶を振り返ってみるが、果樹園の紅果の採取方法に関する情報は確認できなかった。
あまり派手に攻撃していたら管理者のボスモンスターに気付かれそうだが、遅かれ早かれ気付かれるから大した問題ではないだろう。
「……特にやり方の指定はないから、問題はないはずだ」
「了解です!」
「じゃあ、決定だな。今日は半日探索して疲れてるから、明日一番でチャレンジしよう」
「今日じゃなくていいんでしょうか?」
「エリアボスとはいえ、相手はダンジョン深部のボスモンスターだ。万全の態勢で挑んだ方がいい。それに、もしかすると俺達が挑む前に他の探索者が果樹園の紅果を減らしていてくれるかもしれないからな」
「それは都合が良すぎる気がしますが、分かりました。安全確保は大事ですものね」
「そういうことだ。明日のボス戦のためにも、今日は切り上げるぞ」
果樹園のエリアボスの情報を振り返りながら深層部を後にする。
俺達ならエリアボス自体は大したことはないが、それ以外の雑兵達が問題だった。
運命属性魔力による魅了があるが、エリアボス麾下のモンスターにどこまで効くか不明だからだ。
その時は力尽くで対処するしかないため、今日はしっかりと休み、明日に備えるとしよう。
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