万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第三章

第百三十六話 アムネジア



 ◆◇◆◇◆◇


 翌日。
 朝方に再び資源ダンジョン〈紅果の森〉にやってきた俺達は、昼頃には紅果が採れる深層部に到着した。
 ダンジョンの深層部は基本的にひと気が少ないため、その広さもあって移動先にさえ気を付ければ転移を使った直後に人に遭遇する可能性は低い。
 エリアボス前に体力の消耗を抑えるならば転移を使うのも手だが、〈紅果の森〉はその紅果の価値もあって深層部にはそれなりに人がいるため、転移で移動してきたところを偶然目撃される可能性があった。
 そういう理由がある故の徒歩で移動してきたわけだが、少し想定外のことがあった。


「戦闘の痕跡を見るに結構な人数だな。最適でも20人はいるぞ」

「同じ集団でしょうか?」

「たぶんな。足跡が同じ方向に向かって移動しているから団体行動をとっているはずだ。どこぞのギルドが深層部に来ているみたいだが……方角的に狙いは果樹園か?」


 いくら〈紅果の森〉の深層部が他のダンジョンの深層部より人がいる傾向にあるとはいえ、ギルド規模の人数が迷いなく奥地にある果樹園に向かうのは変だな。
 紅果が採れる木は周りに沢山あるので、〈珠玉の迷果〉が目的なら周りの木々から採ればいい。
 だが、この集団は迷いなく果樹園がある方角へ向かっていた。

 実際に果樹園に向かったことはないが、このダンジョンのマップは探索者協会の公式サイトで公開されており、エリアボスがいる居場所も記されている。
 果樹園のエリアボスがいる場所も載っているので、方角に間違いはない。
 果樹園のエリアボス狙いなのかもしれないが、まさか果樹園では〈珠玉の権果〉が採れやすいことを知っているのか?


「この集団の狙いが果樹園だとしたら、どうするの? 諦める?」

「……いや。諦めるかどうかは現場の状況を見てから判断する。権果はまだしも、隠し要素は知らないと思うから、上手くいけば労せず手に入れられるかもしれない」

「なるほどね。じゃあ、こっそり行きましょう」


 エリスの言葉に頷くと、リリアの方を向く。


「リリア。念のため魔法で俺達の姿を隠してくれ」

「分かりました。『夢幻の虚像アムネジア』」


 俺達4人の姿が徐々に薄れていき、やがて互いの姿が半透明になった。
 同じ魔法を掛けられた俺達は互いの姿が見えているが、俺達以外からは見えず、完全に透明化していた。

 特異性ダンジョン〈幻想遊戯〉の深層部〈魔王城〉エリアの宝物庫でリリアが選んだマジックアイテム〈幻想魔女杖ファンタズム〉。
 その能力【魔女魔法・幻想】によって、リリアは異界の魔女の固有魔法〈幻想魔法〉の一端を行使することができる。
 使用者次第で使える魔法の数は異なり、クラス〈魔女〉であるリリアは13個の幻想魔法が使える。

 その1つ『夢幻の虚像アムネジア』は姿を偽る魔法であり、見た目だけを別の姿に変えることも姿自体を隠すことも可能だ。
 光魔法の『光学迷彩ステルス』でも同じことはできるが、魔法性能は『夢幻の虚像アムネジア』の方が上なのでリリアに任せた。


「よし。進むぞ」

「分かりました」

「陣形はどうしますか?」

「周りからは見えないから、このまま固まって移動しても大丈夫だろう」


 『夢幻の虚像アムネジア』が優れている点の1つが、魔法の影響は姿だけでなく声にも及ぶ点だ。
 別の姿になる時はその声を真似、透明化の時は同じ魔法の影響を受けた者以外には音が漏れることがない。
 そのため、姿を隠していても普通の声量で話すことができる。


「モンスターも私達に気付かないわね。この状態で攻撃したらどうなるの?」

「『夢幻の虚像アムネジア』で消費した魔力の半分以上の魔力を使ったら解けますよ。あとは、この魔法に掛かっていない生物に触れられたり、ダメージを受けても解けます」

「……それって、魔力を使わない攻撃を使えば、ずっとこのままってこと?」

「効果時間があるからずっとじゃないけど、魔法を更新すればこのままだと思いますよ」

「地味にチートな魔法ね……」


 魔力が込められていない攻撃だけでなく、低位のマジックアイテムや魔法による攻撃なら、最初の一撃は高い確率で当てられるってことだな。
 消費魔力量の少ない攻撃という縛りはあるが、攻撃次第ではかなりの有効打を決めることができそうだ。

 そうして姿を隠したまま進んでいると、遠くから強い魔力の波動が感じられた。
 方角的には果樹園がある辺りが発生源のようだ。


「クロヤさん、この魔力は?」

「たぶん果樹園のボスモンスターだな。この魔力の跳ね上がりからして、果樹園にあった分の権果が最後の権果だったみたいだな」

「リーダーが言っていた通り、労せず隠し要素が手に入りそうですね」

「そこはボスとの戦闘状態に入ったであろう集団の戦闘力次第だな」

「集団がボスに勝ったらどうしますか?」

「んー、その場合は出現した隠し要素だけ奪う」


 未来で伝え聞いた隠し要素は、一目で分かりやすく出現するわけじゃないらしいから、出現しても気付かれない可能性が高い。
 なので、俺がこっそり貰っても問題にはならないはずだ。
 まぁそれも、全ての権果が採取されたことで強化状態になったボスモンスターを謎の集団が倒せたらの話なんだがな。
 取り敢えず、更に状況が動いても対応できるように駆け足で果樹園へ移動するとしよう。


 
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