万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

文字の大きさ
11 / 165
第一章

第十一話 資源ダンジョン



 ◆◇◆◇◆◇


 国家によって対応に多少の差はあるが、ダンジョンは基本的に一般にも開放されている。
 この場合の一般とは探索者ではない覚醒者、つまりは下級覚醒者のことを指しており、彼らの多くは覚醒者になったからといってダンジョンに潜ることはない。
 モンスターやダンジョンの罠、果ては同じ覚醒者の手によってダンジョン内で命を落とす危険性があることを考えれば、覚醒者に覚醒しても一般社会で働く道を選ぶのは当然のことだと言える。
 回帰前の俺も当初はそんな道を選んだ1人だった。
 だが、ドロップアイテムやモンスターの素材といったダンジョン内産出物の金銭的価値が世間に知れ渡るに従い、ダンジョンに潜る一般覚醒者の数は年々上昇傾向にあった。
 一言で言えば、一攫千金を狙う覚醒者の数が増えていた。


「スゲー人集り。流石は資源ダンジョンと言うべきか」


 探索者協会で探索者IDを発行してもらってから初めてダンジョンに来てみると、多くの覚醒者がダンジョン前に屯っていた。
 空気中には放出された大量の魔力が漂っており、それだけ魔力制御力の拙い一般覚醒者が多数集まっていることが分かる。
 前世でもそうだったが、やはり国が管理している資源ダンジョンは人気があるな。

 ダンジョンは現実空間への顕現後、一度探索者協会に接収され、探索者協会による簡単な調査の後に初探索権のオークションがなされる。
 その初探索権を落札したギルドによる独占期間を経た後は、他の覚醒者と探索者達にも開放されるというのが通常の流れだ。
 しかし、この流れにも例外があり、探索者協会による調査の段階でダンジョン内にて有用な資源が確認された場合は、国によってそのダンジョンが管理されるようになる。
 そういったダンジョンは〈国営ダンジョン〉に分類されるが、一般的にはその成り立ちと目的から〈資源ダンジョン〉という俗称で呼ばれている。
 今日やって来た目の前のダンジョンは、そんな資源ダンジョンの一つだった。

 この国営たる資源ダンジョンは、国の大事な資産であり、勝手に攻略した場合は問答無用で重罪になる。
 ダンジョン内の資源には、ダンジョン外にモンスター素材だけでなく草花や鉱物などを持ち出しても時間経過で復活するという特徴がある。
 そんな尽きることのない資源の宝庫を失った場合の経済的損失は計り知れず、攻略厳禁となるのは当然のことだろう。
 大半のダンジョンは、回帰後に挑戦し攻略した2つのダンジョンのような迷宮タイプのダンジョンであり、こういったダンジョンには資源的な価値はないため攻略を推奨されている。
 一方で、資源ダンジョンは環境タイプと呼ばれる山や森林などといった自然豊かなフィールドがダンジョン内に広がっていた。
 そのフィールドに沿った資源が産出されるのが殆どであり、資源によってはこれまでのように外国からの輸入に頼らずに済むようになるため、新たな資源ダンジョンが見つかる度に貿易問題が起こっていたりする。


「みんな凄い荷物だな」


 無限とも言える資源が得られるとはいえ、ダンジョンであることには変わりないので、魔力の使えない一般人ではダンジョンに潜ることはできない。
 そのため、資源ダンジョンの資源採集に多くの一般覚醒者が駆り出されることになった。
 彼らは基本的にその身一つでダンジョン内の資源を回収して売却するため、頑張り次第ではあるがかなりの収入を得ている。
 探索者ではない一般覚醒者であっても魔力やステータスを有しているので、非覚醒者の一般人以上の膂力と体力を持っており、これが高収入の理由の一つでもあった。
 そんな常人を超えた身体能力を持つ一般覚醒者であっても、採取道具や収納道具、作業中に現れるモンスターから身を守るための武器や防具が必要であることに変わりなく、自然と大荷物になっていた。


「身軽な格好で浮くかと思ったけど、そうでもないな」


 先日の未発見ダンジョンで収納系マジックアイテム〈宝納の指環〉を手に入れており、手荷物や戦利品を収納用の異空間に収納することができる。
 収納系マジックアイテムは非常に高価なので、偽装用にリュックサックを背負っていた。
 ただ、収納道具以外はその辺の店にでも出掛けるつもりなのかというぐらいの軽装の格好をしている。
 これは、単純にモンスターと戦うための防具を持っていないからなのだが、一目で防御力の高い鎧などの防具を身に付けている者は珍しいのと、専業探索者ではない一般覚醒者が多いのもあって目立っていなかった。
 

「資源ダンジョン〈紅果の森〉か。懐かしいな」


 ダンジョンの外観である黒い塔を見上げながら前世の記憶を振り返る。
 資源ダンジョンは他の攻略可のダンジョンとは異なり固有の名称が国から付けられている。
 その名称に法則はないことから、適当に付けられているとか、ネーミング担当が複数人いるとか、AIが付けているとか言われているが、真実は不明だ。
 どんなダンジョンか分からない名称の資源ダンジョンもある中、この〈紅果の森〉は非常に分かりやすい。
 このダンジョンのフィールドは〈森林〉で、ダンジョン内で最も価値のある資源は特殊な効果を持つ〈紅色の果実〉であるため、まさにダンジョンの特徴を簡潔に表したネーミングセンスだと言えるだろう。


「そのまま過ぎる気もするけど、分からないよりは良いもんな」


 前世にあった〈飛び出せ魔境戦線〉とかいう名称の資源ダンジョンよりはマシだしな。
 ちなみにこれは多種多様なモンスターの素材が手に入ることを示していると言われていた。
 今の時期にはまだ出現していないが、回帰後もやはり同じ名称になるんだろうな……。


「次の人どうぞ」

「あ、はい。お願いしまーす」


 トラブル防止用に一般覚醒者と探索者とで分けられた受付の列の、探索者用の列に並んでいると順番が回ってきたので探索者協会の職員にIDを渡した。
 今回、俺がこのダンジョンに来た目的は紅色の果実ではないが、普通に買うと高いので、いずれ自分用に手に入れてみても良いかもしれない。
 ま、それももう少し強くなって安全マージンを確保してからだな。
 そんなことを考えつつ入場受付を済ませると、資源ダンジョン〈紅果の森〉へと足を踏み入れた。

 
感想 0

あなたにおすすめの小説

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。 十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。 スキルによって、今後の人生が決まる。 当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。 聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。 少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。 一話辺りは約三千文字前後にしております。 更新は、毎週日曜日の十六時予定です。 『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら
ファンタジー
前世で過労死した久世織人が目を覚ますとそこは異世界の王都、しかも古道具屋の跡取り息子として転生していた。アクセル・リオットとして成長した彼は荷物持ちとして冒険者パーティーに同行、その道中に【無限収納】スキルを開花させる。 パーティー活動から離脱後、四十歳となったアクセルは前世の記憶を思い出し、儲かりそうという考えで道具レンタル屋を始めていた。客足もなく店がさびれる中、道具の使い方が出来てない冒険者によって治安の乱れや魔物討伐の失敗が続いているという話を常連客から聞かされる。あらゆる道具に精通するアクセルは客の冒険者に使い方を教えに行くことを思い立つ。 アクセルの教えにより、やがてS級冒険者や聖女、王女までも勘違いして彼の元には次々と弟子入りを求める者が現れていくのだった。