万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第一章

第十九話 製作依頼と引っ越し候補

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 ◆◇◆◇◆◇


 鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉の簡易版である鑑定宝玉の開発と量産を委託した先は天城コーポレーションだが、探索者用装備の製作は個人の工房へと持ち込んだ。
 後に凄腕のマジックアイテム職人として名を馳せる職人系覚醒者が営む工房だが、今はその腕前が世間に明らかになる前なので工房内は閑散としていた。
 だが、閑散としているのは店頭のみで、奥の作業場では熱の籠もった声が響いていた。


「質の良い魔蟲系甲殻ですね。含まれている魔力も多いし、それにデカい。こんなデカいモンスターっていましたっけ?」

「とあるダンジョンのエリアボスの素材です。場所については秘密ですが」

「そうですかー。ダンジョン内の全てが明らかになっているわけではありませんから、そういうこともあるでしょうね」


 〈宝納の指環〉から取り出した〈女王魔蟻クイーンアントベラス〉の素材を繁々と見ているのが、この工房の主である久坂マモルだ。
 年齢不詳の見た目をした痩身の男性だが、今は30代になって間もないぐらいの年齢だったはずだ。
 腕前は確かなのだが、工房自体が裏路地に構えているのと、工房の外観がボロいのもあってか客は全くいない。
 工房主であるマモル自身も商売上手というわけではないのも拍車をかけており、日々の生活にも苦労していた。

 そんな彼の貧乏生活も、とある企業が主催する武器系マジックアイテムの品評会に気まぐれで出品したことにより一変した。
 マモルが作った武器が品評会に来ていたとある高位覚醒者の目に留まり、その場でこの高位覚醒者のギルドと専属契約を結ぶことになった。
 そのギルドが更なる成長を遂げ、大手ギルドの一つに数えられるようになった背景には、マモルが作ったマジックアイテムの力があるのはタイミング的にも明らかだった。
 その結果、マモルは一躍有名人になったのだが、彼の成功を妬んだギルドの古参職人によって事故死に見せかけて殺されてしまう。
 まぁ、こうして外部の人間である俺が知っていることからも分かるように、事故死ではなく殺害されたことはすぐに世間にバレたのだが。
 その事件の特集で、ギルドにスカウトされる前にマモルが構えていた工房の位置は明かされていたおかげで、こうして今の居場所が分かった。
 

「他にもこんなのもあるんですよ」

「ん? おっ? おお、これは高濃度圧縮魔力結晶体ですね!」

「ご存知でしたか」

「ご存知ですとも! 実物を見るのは初めてですが、ネットで見てどのようなモノかは知っていたんですよー」


 顔を上気させながら黒い結晶体を持ち上げ、隅々まで確認しているマモルが落ち着くのを待ってから装備の製作を依頼した。


「ふむふむ。身体の動作を阻害せず、尚且つ防御力も重視した防具が欲しい、と」

「ええ。インナーにはコレがあるので、その点も考慮して製作してもらえますか?」


 そう言いながら、インナーに着ている〈蒼銀絹ミスリルシルクの護身衣〉を見せた。
 これは、エリアボスであるベラスを倒した際に出現した宝箱から手に入れたマジックアイテムだ。
 対物理・対魔法に優れたミスリルの力を持つ特殊なシルクで作られたインナーであり、その見た目からは信じられないほどの耐久性を持つ。
 インナーならば、一般的な探索者用装備とは違って場所を選ばずに使用することができるため、今もこうして内側に着込んでいた。


「ほほう。これはミスリルシルク製ですね。これもまた何ともレアなアイテムですなー。ミスリルシルク製のインナーがあるならば、外側の防具はそこまで厚くしなくても良さそうです。戦闘スタイルはスピード系ですよね?」

「そうなります」

「なるほど、なるほど」


 そこから更に幾つかの質問を受けた後に、製作費込みで依頼料を全額先払いした。
 これは求める性能の防具を製作するには材料が足らず、その材料を用意するための金をマモルが持っていなかったからだ。
 前世でのマモルの腕前と、工房に来る前にアリ系モンスターの素材を売って得た金がなければ、全額先払いするのを躊躇うほどの金額だったが、マモルは自信があるようなのできっと大丈夫だろう。
 一抹の不安がないわけではないが、これ以上は気にしても仕方がないので後のことは任せてマモルの工房を後にした。


「さて、あとは引っ越し候補地を見て回るか」


 管理している不動産屋に連絡を取る前に、実際の場所をこの目で見て回った。
 

「探索者の姿も多いし、結構賑わってるな」


 鎧や剣などといった分かりやすい武具を身に着けた者達の姿をチラホラと見かける。
 そういった探索者用装備を着込んだ覚醒者だけでなく、戦闘用ではない普通の衣服に身を包んだ通行人の中にも、魔力を有する覚醒者の存在が至るところに確認できた。
 体感ではあるが、この辺りにいる人々の10人中4人ぐらいは覚醒者のようだ。
 これほどまでに覚醒者の比率が大きいのは、やはり近くに出現済みの資源ダンジョンが存在するからだろう。


「考えることは皆同じなのかねぇ」


 見上げた先の引っ越し候補の物件であるマンション内の気配を探ったところ、魔力持ちが多かった。
 あまりにも魔力持ちが多い物件だと、建物の耐久性は大丈夫なのかと少し不安になる。
 どうせなら建物の強度もセキュリティも高い場所に引っ越したいのだが、そんな都合の良い場所はないよな……。
 そう考えながら次の引っ越し先候補の物件に向かうためにバスに乗って移動していると、最近見たばかりの名前を冠する分譲マンションが入居者募集中という内容の広告が車内にあった。

 その広告によると、このマンションは覚醒者の入居者を想定して作られているので、建物は頑丈な上にセキュリティレベルも高いらしい。
 非常に惹かれる内容だったのだが、今の予算をオーバーしているため普通ならば引っ越しを考えるのは夢のまた夢だ。
 だが幸いにも、俺にはこのマンションのオーナー一族とは繋がりがあった。
 交渉次第では引っ越せるかもしれないと思いながら、その一族であるレイカ先輩に連絡を取った。



 
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