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第二章
第五十七話 模擬戦の対戦相手
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「──ご挨拶が遅れました。わたくし、レイカ様の側仕えをしております芹沢マキナと申します。今回はよろしくお願い致します」
「初めまして、外神クロヤです。こちらこそよろしくお願いします」
レイカ先輩に案内されたトレーニングルームでは俺の模擬戦の対戦相手が待っていた。
ガーベラギルドのNo.3とは聞いていたが、まさか此処まで俺達を乗せてきた車の運転手とは思わなかった。
そして、レイカ先輩の側仕えという情報には更に驚いた。
運転席にいた時と同じスーツ姿だが、その上から更に簡易な革鎧を装着している。
腰のベルトには模擬用の剣が納められた鞘が二つ装着されていた。
水色の長髪を編み込んだ髪型で、無表情であっても一目で美人だと分かる容姿をしている。
正面から見たのは初めてなんだが、何故か初めて会った気がしない。
やっぱり天城コーポレーションで見かけたのかな?
「先輩って本当にお嬢様だったんですね」
「……クロヤ君。君が契約している天城コーポレーションと私がどういう関係か知っていての発言よね?」
「無論ですとも、天城レイカ先輩。お付きの人がいる人といない人だったら、先輩は一目見て一体どちらの方がお嬢様だと思います?」
「まぁ、それは、前者でしょうね」
「そうですよね。つまり、そういうことですよ」
「くっ」
論破?した俺と悔しそうにしているレイカ先輩の様子をマキナは興味深そうに見ていた。
「レイカお嬢様が男性と楽しそうに話してる姿は新鮮ですね」
「普通に他の人とも話してるじゃない」
「はい、普通にはそうですね。普通には」
「ふ、深い意味はないわよ」
「なら浅い意味はあるんですか?」
マキナの顔を寄せて来てからの詰問にレイカ先輩が押されているのをスルーして、模擬戦で使う武器を選びに向かう。
トレーニングルームの片隅に置かれている模擬戦用の武器を見て回ると、一振りの模擬刀を手に取った。
「剣じゃなくて刀を選ぶんですか?」
俺の後をついて来たリリアが俺が選んだ武器を見て頭を傾げてきた。
「ああ。アビス攻略では剣のオルトレールよりも刀のサイラの方を使うことになるだろうから、模擬戦でもこちらを使おうと思ってな。まぁ、そこまで深い意味は無いよ」
「なるほど」
模擬刀の重さや長さに問題がないことを確認すると、元いた場所へと戻る。
「お待たせしました」
「ええ……準備は大丈夫?」
「大丈夫です」
疲れた表情を浮かべているレイカ先輩にそう答えてからマキナの方に顔を向けると、彼女は満足そうに笑みを浮かべていた。
その艶々とした表情と彼女の言動から、彼女の性格が何となく分かった。
「お二人は仲が良いのですね」
「はい、それはもう。レイカお嬢様が幼い頃からお世話させていただいておりますので」
口ぶりからして俺達よりも年上みたいだが、外見上はレイカ先輩や俺と同じ20代ぐらいに見える。
幼い頃から側仕えだったようだが……まぁ、学生の時から側仕えをしていたとすればおかしくはないか。
「ですから、私個人としましても、レイカお嬢様と親しいアナタの実力にはとても興味があります」
「……穏やかではありませんね」
殺気こそ含まれてはいないが、仄かな敵意は含まれている気配がマキナの全身から放たれてきた。
このトレーニングルームには俺とマキナによる模擬戦を観戦しに来たのか、他のガーベラギルドの者達もいた。
彼らの半数以上がマキナが発する気配に呑まれており、身体をガクガクと震わせていた。
無事なのは上級覚醒者ぐらい……いや、先ほど俺に絡んできた長谷部ナントカも同じように震えているのが見えた。
上級覚醒者で彼だけが震えている理由は別のところにある気がする。
他の者達とは違って、単純にマキナに怯えているような……まぁ、どうでもいいか。
「リリアは大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。頑張ってくださいね」
「ああ、行ってくる」
トレーニングルーム内にある模擬戦用のスペースに歩いていると、目の前に〈システム〉のウィンドウが出現した。
○クエスト『己が力を魅せつけよ』
強者との模擬戦が始まります。
強者との模擬戦を通して多くの者達に貴方の力を証明してください。
模擬戦の勝敗に応じて報酬が変わります。
⚫︎勝利
→対戦相手に関連するモノを獲得できます。
・対戦相手:芹沢マキナからの好感度上昇(中)
・スキル【直感】
・スキル【双剣術】
・スキル【???】
⚫︎惜敗
・対戦相手:芹沢マキナからの好感度上昇(小)
・スキル【直感】
⚫︎惨敗
・スキル【直感】
えっと、なんかキャラゲーみたいな報酬だな?
マキナは攻略キャラだったのか……と、自動発動した【思考乖離】による思考加速状態で現実逃避しつつ、改めてクエスト報酬を確認する。
ううむ、やっぱり今後のことを考えると、色んな意味で勝利報酬を狙うべきだろう。
【直感】は共通報酬だから除くとしても、【双剣術】があれば双剣を振るう際にスキルによる恩恵が得られる。
両手それぞれに剣を握っていなければ無意味になるスキルではあるが、俺は主に刀剣を扱う──このスキルは刀も効果対象に含まれている──ので無駄にはならないはずだ。
マキナからの好感度上昇とやらだが、〈システム〉の性質からすると他者の精神を変化させることは出来ないはずなので、おそらくは勝敗の結果によってマキナの俺に対する心情がこんな風に変化するという予測だと思われる。
もしかすると、俺にやる気を出させる目的で明文化されているのかもしれない。
「審判は私が務めるわ。模擬戦のルールは簡単に説明します。まず、攻撃魔法は下級までなら許可します。それ以外の攻撃性スキル事象に関しては、相手に致命傷を負わせない程度なら許可します。実力を見るための模擬戦ではあるけど、本番のアビス攻略に影響が出るような怪我を相手に負わせないようにしてちょうだい。2人共いいわね?」
「分かりました」
「承知しました」
「それじゃあ、この氷が地面に落ちたら試合開始よ」
レイカ先輩が自らの力を使って手元に生み出した小さな氷を俺達の中間地点に向けて放る。
俺とマキナの視界の中で落下していった氷が模擬戦用スペースの床に触れた瞬間、俺達は同時に動き出した。
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