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第二章
第六十七話 アビス攻略後の変化
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アビスのボスを倒してからは大変だった。
何故ならば、アビスにはダンジョン攻略時のような内部にいる人間達を外へと排出する機能がないからだ。
ダンジョン攻略時のように待っていても外へと自動的に転移されず、消滅するアビスと運命を共にすることになる。
そのため、ボスのオグリティカスを倒してすぐに出現したアーティファクトとオグリティカスの死体を回収。
死傷者を連れてすぐにボス部屋を後にすると、ボス部屋の前で待機していた居残り組と合流してからアビスを脱出した。
この脱出をスムーズに行うという意味でも、ボス戦前の通常モンスターの掃討は必要だったわけだ。
そうして、崩壊が始まったアビス内を駆け抜け、現実世界へと帰還してから3日が経った。
今日は報酬のモンスターの死体を受け取るためにガーベラギルドに来ていた。
「3日も経ったのに凄い人集りだな」
「テレビでもまだ取り上げられてますからね。熱はまだ冷めないでしょう」
「確かにな。世間の話題が俺達からコッチに移ったのは良いんだが……ここで降りるか」
ガーベラギルドのオフィス前で待ち受ける多数の記者達の姿が遠目に見る。
リリアと共にタクシーでガーベラギルドに向かっていたのだが、オフィス前の人集りが見えたタイミングで車を停めてもらった。
このまま目の前で降りたらスクープを求めている記者達に捕まりかねないからだ。
ここまでの金を支払ってからタクシーを降りると、そのまま近くにあった有名アパレルブランドの店に入る。
一部の記者がタクシーから降りる俺達に気付いてこちらを見ていたからだ。
記者達のスクープを求める嗅覚に戦慄しつつ、ガーベラギルドに用は無いですよー、ということを示すべく、リリアに協力を求めた。
「記者がこっち見てるから誤魔化すぞ。悪いけど、もっとくっついてきてくれ」
「くっつく?」
「カップルのフリをしてくれってことだ」
「ふぁっ!?」
「なんだ、その声は?」
驚きからか奇声を上げるリリアに腕を軽く差し出して促すと、恐る恐る腕を組んできた。
その様子は付き合い始めて日が浅いことを感じさせる初々しいで、こちらを向いていた一部の記者達は一度舌打ちをしてから視線をガーベラギルドのオフィスへと戻した。
「ふぅ、どうにか誤魔化せたな。すぐに出ると怪しまれるし、暫く店内を見て回るか。もう手を離していいぞ?」
店内に入っても俺の腕を掴んだままのリリアにそう告げたところ、頭を横に振って拒否された。
「こ、ここにもマスメディア関係者がいるかもしれません。油断しては駄目です!」
「いくらなんでも此処にはいないと思うが……まぁいいや。あと、顔真っ赤だぞ」
「暑いからですね!」
「確かに今日は暑いな。此処は涼しいけど」
上級覚醒者の身でも今日の天気は暑く感じられる。
ダンジョン資源や関連技術による地球温暖化対策は各方面で研究されているが、まだ成果は出しておらず、夏前なのに真夏のような暑さだった。
ちょうど良いから夏物の服でも買うとしよう。
涼しい店内でなければ思わず振り解きたくなるぐらいにくっつくリリアを連れて、暫く夏服を見て回った。
買い物を終えて店を出ると、ギルドオフィスの前は未だに記者達で埋まっていた。
このままでは埒が明かないので電話でレイカ先輩に許可を取ってから、人目の無い場所に移動して第7層能力【座標変換】を使用した。
「いらっしゃい。大変だったわね……っと思ったけど、楽しんできたみたいね?」
転移先のオフィスの一角にて同情するかのような表情でレイカ先輩が出迎えてくれた。
だが、その視線が買った服が入った袋と、変わらず腕を組んだままのリリアの視線が冷たくなっていく。
「ああ、これはオフィス前の記者達に捕まりそうになったので、ガーベラギルドとは無関係のカップルですよと誤魔化すための偽装です」
「違うのに捕まっているみたいだけど? もうオフィス内だから必要ないんじゃない?」
「それもそうですね。リリア……リリア?」
「なんでしょうか?」
「もうフリは必要ないから、そろそろ離してくれ」
「……分かりました」
不承不承といった態度を隠す気のないリリアが漸く手を離した。
我ながら美女と腕を組むのは緊張していたようで、組んでいた腕が凄く強張っていた。
解放された腕の強張りを解すために軽く回していると、レイカ先輩と共に俺達を出迎えてくれたマキナが近寄ってきた。
一体何だろうと思っていると、俺の腕をマッサージし始めた。
「えっと、マキナさん、一体何を?」
「見ての通りマッサージでございます」
「それはまぁ、そうなんでしょうけど……」
顔見知りの異性がいきなりそんなことをしてきたら、どう反応していいか分からなくて困るな。
しかも普通に上手いから止めさせるのも勿体なく、そのままされるがままになっていた。
レイカ先輩とリリアはストレスでも溜まってるのか、2人揃って目元がヒクついている。
マッサージが必要なのは彼女達の方な気がしてきたな。
マキナによるマッサージが腕から手のひらにまで移ったタイミングで、レイカ先輩が咳払いをした。
「コホン。そろそろ移動してもいいかしら?」
「あ、はい。それは勿論……何か怒ってます?」
「そんなことはないわ。こっちよ、ついて来て。マキナも早く戻ってきなさい」
「嫉妬するお嬢様も可愛いですね」
「うるさい」
2人のやり取りから相変わらず仲が良いなと思っていると、リリアから声を掛けられた。
「……クロヤさん」
「なんだ?」
「実は私もマッサージが上手いんですよ。だから今度、私もマッサージをしてあげますね?」
「お、おう。ありが、とう?」
目にハイライトが無いように見えるリリアから謎の圧力を感じつつ疑問系で頷くと、彼女と一緒にレイカ先輩達の後をついて行った。
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