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第二章
第七十八話 堕天の回廊
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〈堕天の回廊〉と名付けられたダンジョンは、高難易度ダンジョンに分類されており、この高難易度ダンジョンには〈摩天楼ダンジョン〉という俗称が付けられている。
世界各地に存在するダンジョンは全て黒い塔型の建造物だ。
この塔の高さはダンジョンによって異なっており、その中でも際立って高いダンジョンの全てが高難易度ダンジョンであることが判明している。
それ故に、挑戦するのが困難であり、塔の高さと同じく難易度も高みにあるという意味も込めて、高難易度ダンジョンは〈摩天楼ダンジョン〉と呼称されていた。
この〈摩天楼ダンジョン〉には一般的なダンジョンとは異なる点が幾つか存在するのだが、まぁ軽く挑戦する今日はきにしなくてもいいか。
「摩天楼ダンジョンを真下から見たのは初めてですけど、本当に高いですね」
「ああ。摩天楼の名を裏切らない高さだな」
ゲート近くに併設された入場受付で手続きを行う。
他に仲間はおらず、2人だけで挑むと聞いた探索者協会の職員に止められたが、今日は浅いところを軽く潜るだけと伝えたら渋々手続きを行なってくれた。
「お二人だけでダンジョンを攻略なされたことがあるのは存じております。ですが、ここのダンジョンは通常のダンジョンよりも厳しい環境が広がっています。とても強力なモンスターも多数出現しますので、無理をせず慎重に挑んでくださいね」
「ありがとうございます。気を付けて進みます」
「ありがとうございます」
心配してくれた職員にリリアと共に礼を言ってから、返された探索者IDを受け取りゲートへと向かった。
◆◇◆◇◆◇
「これは……凄い空間ですね」
「ああ。天国みたいな場所だが、高所恐怖症の奴にとっては地獄の場所だろうな」
ゲートを潜った先にはどこまでも続くような大空が広がっていた。
ゲートがある浮島や、そういった浮島同士を繋ぐ橋を除けば、地面が一切ない吹き抜けの空間。
上も下も、その果てには白い雲しかなく、少なくとも視覚では何も情報は得られないだろう。
このように、〈天空〉と呼称される特殊なフィールドが広がっているのが、この〈堕天の回廊〉の最大の特徴だった。
浮島の下に落ちた物がどうなるかは分かっていない。
白い雲の中に満ちた魔力などの所為でドローンやカメラはすぐに壊れてしまうからだ。
人を使った調査は流石に行われておらず、誤って落下してしまった者の行方も不明のままなので、落ちたら死ぬと考えた方がいいだろう。
「リリアは『飛翔』の魔法は使えるよな?」
「はい。【風塵魔法】スキルがありますので、風属性魔法の『飛翔』は使えますよ。流石に空を飛ぶ手段がなかったら、ここのダンジョンは挑みたくありませんね……」
「無属性魔法の『浮遊板』でも代用出来なくはないけど、まぁ透明な板の足場とか不安定すぎて嫌だよな」
「そうですね……」
そう考えると、リリアが〈魔女〉のクラス取得時に【時間魔法】だけでなく【風塵魔法】も獲得したのはラッキーだったな。
俺も【風塵魔法】を持つから『飛翔』が使えるし、空中を歩けるスキルである【天脚】もあるので天空フィールドでも問題なく活動ができる。
加えて、異能【万物変換】の第7層能力【座標変換】で転移することも可能だ。
この転移があるので、仮に飛行手段を持たない者が落下した場合でも、俺なら転移を駆使して救出することもできるだろう。
だが、戦闘中の落下ともなると、いつでも助ける余裕があるとは限らないため、各自で飛行手段を用意しておいた方が確実だ。
このような落下対策についても考える必要があるのも、〈堕天の回廊〉の難易度が高い理由の1つだった。
「さて、そろそろ移動するか」
〈堕天の回廊〉のスタート地点である浮島を見渡す。
ゲートがある浮島から伸びる橋は複数あり、それぞれの橋の先にはまた別の浮島が浮かんでいる。
今日は時間が無いので、〈堕天の回廊〉での戦いを体験すべくモンスターと軽く戦うだけにするつもりだ。
事前に調べた情報と回帰前の知識を元に、1番モンスターの数が多い浮島へと繋がる橋を選んでから先に進む。
3車線道路ほどの横幅の橋は大理石のような材質で作られており、落下防止の柵はない。
先に進むにつれて橋を渡っている時に突風が吹く頻度が増えていくため、移動中であっても油断はできない。
今いるのはゲートがある浮島と繋がる橋の上なので、偶に吹く風も微風レベルだ。
少なくともこの風が原因で落下することはないだろう。
高難易度ダンジョンであっても浅い場所の難易度はそこまで高くはないのだ。
「まぁ、低くもないんだけど」
橋を渡った先の浮島には草原が広がっており、その草原には背中に白い翼を生やした様々な魔獣タイプのモンスター達が生息していた。
直径1キロほどの広さの浮島にいる全てのモンスター達が、侵入者である俺達の気配を感知したらしく、一斉に此方を向いてきた。
「来るぞ。まずはリリアの異能が通じるかを確認しよう」
「分かりました。いきます!」
そう宣言したリリアが、此方へ駆けてくるモンスターに向かって運命属性魔力を解き放つ。
3割ほどのモンスター達が〈魅了〉され、それ以外は特に影響を受けた様子もなく殺意剥き出しで変わらず向かってくるのが見えた。
そんなモンスター達へ両手に持った2挺の魔銃の銃口を合わせると、それぞれの引き金を引いて迎え撃った。
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