万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第二章

第八十話 天使と獣

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 ◆◇◆◇◆◇


 摩天楼ダンジョンである〈堕天の回廊〉に出現する通常モンスターに共通する特徴として有翼が挙げられる。
 ゲートがある浮島から伸びる複数の橋の中から、先ほどまでいた浮島へと通じる橋を選んだのは、この道が表層で最も多くの有翼モンスターと戦えるルートだからだ。
 これらの有翼モンスターの素材価値は高く、ゲートの浮島を除いた最初の浮島で戦った獣系有翼モンスターの毛皮も結構な価格で売れる。
 オオカミ系、ウサギ系、キツネ系などと獣の種類ごとに質の良い毛皮を得ることができ、その使い道は多い。
 各種マジックアイテムは勿論、非マジックアイテムの高級衣類や高級家具にも使われるため、これらの〈堕天の回廊〉産の毛皮の需要は高いのだが、高難易度である摩天楼ダンジョンの危険度の高さもあって需要に対して供給が追いついていない。

 そんな需要の高い〈堕天の回廊〉のモンスター資源の中でも、獣系有翼モンスターの毛皮以上に需要のある素材が採れるモンスターがいる。
 そのモンスターにも翼があるのだが、見た目は獣系ではなく人間のような人型。
 このような人型有翼モンスターはダンジョン内に複数種類出現し、その見た目から人型有翼モンスターは〈天使〉という総称で呼ばれていた。


「分かってはいたが、凄い弾幕だな」


 【狩猟ノ闇獣王ケルヌンノス】の【闇影ノ支配者】で発動していた闇属性防御魔法『暗黒の防御幕ダークネスヴェール』へ無数の光弾が飛来し、一部の光弾は半透明の黒い防御幕を抜け、リリアが展開している魔法障壁に直撃してから消滅する。
 小さな浮島の上にいる俺達を取り囲むように、地面がある下方を除いた全方位に天使系モンスターが浮遊していた。
 目も鼻も口も無いのっぺりとした顔を持ち、身体にはトーガのような外衣を身に纏い、背中からは一対の白翼が生えている。

 鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉は、天城コーポレーションに鑑定宝玉開発のサンプルとして貸し出していて手元に無いが、回帰前の知識からこのモンスターのことは知っていた。
 種族名は〈射光の下位天使エンジェルシューター〉。
 〈堕天の回廊〉の天使系モンスターの中では最も出現数が多く、最も多く覚醒者達の命を奪ってきた種だった。
 左右に開かれた白翼からは絶え間なく光弾がばら撒かれており、俺達の周りの地面が次々と破砕されていく。

 全天に浮遊し俺達を包囲しているエンジェルシューターの数は24体。
 放たれる光弾1発1発の威力は、中級攻撃魔法に匹敵する。
 1発2発程度なら同格の中級防御魔法で防げるが、全方位から無数に放たれれば数秒と耐えられないだろう。
 純戦士系クラスの上級覚醒者ならば、その強靭な肉体性能で光弾の嵐を強引に切り抜けて討伐することも可能だが、天使系モンスターは基本的に空中を飛んでいるため距離を詰めるだけでも困難だ。


「〈堕天の回廊〉の主要モンスターだから数が多いですね」

「この威力で集団戦を仕掛けてくるとか反則だよな」


 獣系有翼モンスター以上の危険度と素材換金率を誇る天使系モンスターと遭遇できたのは良かったのだが、想定の倍ほど数が多い。
 ここまでの数が纏っているのは非常に珍しい。
 おそらくは俺達が邂逅する直前まで他の探索者達を追っていたのだろう。
 探索者が逃げ回るうちに追手の数が増えていき、この近くで力尽きたのだと思われる。
 たった2人で挑んでいることを考えれば、運が悪いの一言で片付けるには最悪すぎる状況だが、幸いにも俺達には対抗手段がある。
 無数の光弾を防ぐ手段がなければ、遭遇してすぐに【座標変換】で転移して逃げ帰っていたが、幸いにもそこまで切羽詰まってはいないため、防御魔法を使ってこの場に留まっていた。


「運命属性魔力の同士討ちも通じません。どうしましょう?」

「うーん。この数の光弾を前に突撃して生き残る自信はないな。魔法攻撃で数を減らせるか?」

「当たれば減らせそうですけど、『魔法の矢マジックアロー』」


 魔法障壁の外側に魔法陣が展開され、エンジェルシューター達に向かって魔法の矢が飛翔する。
 だが、魔法の矢は即座に光弾によって撃ち抜かれ破壊されてしまった。


「……やっぱり駄目ですね」

「駄目だったな。より上位の攻撃魔法でも結果は同じか」

「だと思いますよ。光弾を別の物に誘引できれば、その隙に倒せそうですけど、この光弾の雨の前ではすぐに溶けると思います」

「頑丈な盾か、素早い囮が必要というわけか。俺が逃げ回っている気を引いているうちにリリアに倒してもらうのが1番か?」

「現状の手だとそれぐらいでしょうか。あとは【時間魔法】もありますけど、効率が悪いですね」

「確かに、このダンジョンの雑魚ポジションのモンスターに時間系魔法は非効率だな。まぁ、最悪の場合は使うしかないか……」


 魔法障壁を叩く光弾と、耐久性が低下したため再展開される魔法障壁を見ながら他の方法について考える。
 他に思いつく方法だと、闇属性魔法の『影の従騎士シャドウサーヴァント』や『影の獣シャドウ・ビースト』で手駒を増やす方法だ。
 この2つの魔法ならば光弾の誘引先も増やせるし、攻撃の手数も増やすことができる。
 ただ、これらの魔法で生み出される影の騎士に影の獣には光属性攻撃が良く効くので、然程時間は稼げないだろう。
 闇の手駒が全てやられるまでにどれだけ敵の数を減らせるかで、その後の動きは変わってくる。
 一見すると博打に近い方法だが、少なくとも敵の数は減らせるので個人的には良案だと思う。

 この2つの魔法で生み出される手駒がもっと強ければ良かったのだが、残念ながらそんな魔法は……いや、待てよ?
 そういえば、魔法ではないが今日手に入れたばかりの【狩猟ノ闇獣王ケルヌンノス】のスキルにそんな能力を持つ内包スキルがあったな。


「【狩猟ノ牙獣】……眷属を作るには、魔力消費だけでなく獣系モンスターの死体も必要なのか」


 〈システム〉で確認できるスキルの詳細だけでは分からなかったが、実際に発動させようとすると必要な物が魔力以外にもあることが分かった。
 そういえば、ちょうど良質な獣の死体があったな。
 表層で倒した獣系有翼モンスターの死体では大した性能の猟獣は生み出せないだろうが、エリアボスの死体ならば期待できる。
 まぁ、後で獣系有翼モンスターの死体も一部は眷属化させるつもりだけど、今はいい。
 今欲しいのは強力な足の速い攻撃役アタッカーか、頑丈な壁役タンクタイプの眷属だ。
 良質な獣の死体を眷属化して、そのどちらかが手に入るか分からないが、元の素材の価値から考えると少なくとも無駄になることはないだろう。
 死体を変換することで眷属まで作れるとは、異能【万物変換コンバート】を持つ俺らしい力のスキルだな。


「魔法を発動しながらの作成は無理か。リリア。今から新しい戦力を作るから、その間は1人で障壁を張って俺を守ってくれ」

「えっ?」

「じゃ、そういうことだから、よろしく」

「ちょっ、クロヤさんッ!? 『守護要塞フォートレス』ッ!」


 俺が闇の防御幕の発動を解除すると、リリアも発動中の防御魔法を解除して、より高位の防御魔法を展開した。
 人型天使モンスターの光弾の弾幕が魔法壁を打つ音を聞きながら、〈宝納の指環〉の収納空間からダンジョン〈三獣領域〉のエリアボス〈殺刃走葬の魔狼王キルラナー・ウルフロードガラム〉の死体を取り出した。
 売却するかマジックアイテム化するかで使い道に悩んでいた死体を、眷属化という第3の選択肢に使用する。
 【狩猟ノ闇獣王ケルヌンノス】のスキル【狩猟ノ牙獣】を発動すると、ガラムの死体が闇に覆われていく。
 瞬く間に闇と化した死体は、そのまま俺の身体の中へと吸収されていった。
 無事に眷属化が済んだことが感覚的に理解できた。


「名前は……クロ、いや、〈狗狼クロウ〉にするか。出でよ、クロウ」


 生み出した眷属の名を呼ぶと、すぐ傍に深い闇が現出し、巨大な闇の獣クロウが具現化した。
 

 
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