新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵

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第五話 旧文明時代の遺物

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 ◆◇◆◇◆◇


「──ッと、死ぬかと思った!!」


 上に覆い被さっていた瓦礫を撥ね飛ばしてから周囲を確認する。
 どうやら薬物プラントの地下のようだが、まさかこんな開けた空間があるとは思わなかった。
 十数メートル上に先ほどまでいたエネルギー炉の部屋があるのが見える。
 身体の動きに問題はないようで、自力で登って脱出することができそうだ。


「敵のリーダーは、死んだか」


 少し離れたところに瓦礫に頭部を潰されたリーダーの死体があった。
 落下しながら自分の上に落ちてくる瓦礫を破壊出来た俺とは違い、リーダーは瓦礫をそのまま身に受けたようだ。
 何はともあれ、これで依頼の半分は達成だな。
 あとは帰り際に薬物プラントの動力炉に爆弾を仕掛けて作動させれば完了だ。

 リーダーの死体の腕から風月を引き抜いて状態を確かめる。
 問題なく使えるみたいだが、念のため整備に出した方がいいだろう。
 自分でも出来なくはないが、こういった精密機器はプロに任せるに限る。
 今回の稼ぎならば、この程度の出費は大して痛くはないしな。


「ん? なんだ、アレは?」


 地下空間の壁に入った亀裂から仄かな光が漏れている。
 位置的にはエネルギー炉に近いから、エネルギー炉の配線か何かか?


「……見てみるか」


 路地裏の孤児時代から俺を支えている直感が囁いている。
 中を確認するべきだ、と。
 その直感に従って光が漏れる亀裂の辺りを手にしている風月で斬り裂いた。
 壁材が崩れ、そこにあった物が露出する。
 壁の中に隠されていたのは、直径3メートル高さ9メートルほどの巨大な円柱型の透明の容器だった。


「……カプセル、だけど何も入っていないな」


 この透明のカプセルが光を発していたようだが、内部には何も入っていなかった。
 液体は入っているから何も無いわけではないが、アイテムとか生物とかではないので何も無いのと一緒だろう。


「んー、何か凄い物があると思ったが気のせいだったか? まぁ、あくまでも直感だから外れてても仕方ないか。それにしても、本当にデカいな」


 カプセルの正面に移動して見上げる。
 ここまで近付いたことで気付いたが、カプセルの上部に何か書かれている。
 カプセルが放つ光の所為で見えなかったみたいだ。


「えっと、め、メタ、メタトロン?」


 カプセルの名前らしき名を告げた途端、カプセルのガラス面に亀裂が入り、驚く間もなくガラス面が決壊した。
 中の液体が勢いよく流れ出てきて、目の前にいる俺を呑み込んで────。


 ◆◇◆◇◆◇


[地球人類ユーザーを確認しました]
[機使掌握型天機使七號〈代行者メタトロン〉によるユーザーへの強制同化ダウンロードを開始します]
[適合処理実行中……]
[適合率7%……]
[適合率13%……]
[適合率21%……]
[適合率44%……]
[適合率72%……]
[適合率89%……]
[適合率99%……]
[適合率99.9%……]
[適合率100%]
[対象:ベリエル・アウターへの〈代行者メタトロン〉の適合が完了しました]
[適合者に〈代行者メタトロン〉の基本情報が入力インプットされます]
[〈代行者メタトロン〉の適合率は100%です]
[対象:ベリエル・アウターは〈代行者メタトロン〉の全機能が使用可能です]
[完全適合に伴い、〈代行者メタトロン〉が保有する全ての情報が入力インプットされました]


 ◆◇◆◇◆◇


 ふと、意識が覚醒した。
 どうやら気を失っていたようだが、今まで眠っていたとは思えないほどに頭が冴え渡っている。
 上体を起こすと、目の前には中から何か飛び出してきたかのようなカプセルがあった。
 俺の周りにガラスの破片が散乱しているが、肝心のカプセルの中身が、謎の液体が一滴も残っていなかった。


「……特殊ナノマシン〈機神粒子〉。御伽話の〈機神〉の正体って、そういうことかよ」


 俺の身体の中に入ってきた謎の液体である〈機神粒子〉とは、旧文明時代末期に開発された対モンスター用の決戦兵器〈機使〉に使用されている特殊ナノマシンだ。
 その機使の一種である〈天機使てんきしシリーズ〉の1つであるメタトロンによって脳内に植え付けられた情報は色々あるが、その中でも〈機神〉についての情報には思わず頭を抱えた。
 俺と一体化したメタトロンは、天機使シリーズの中でも最後に作られた作品であり、その情報の中には他の天機使には無い情報もあった。
 その1つが、〈機神〉の正体が他の天機使シリーズの適合者の成れの果てであるという情報だった。


「はぁ……これはまた厄介なモノを拾っちまったな。いや、拾ったというか寄生されたと言うべきか?」


 メタトロンの全ての情報がインプットされたことによって、メタトロン自身の使い方は完全に理解できている。
 勉強せずとも必要な知識を脳内に刷り込めるというのは、1等エリアの富裕層が使うという学習装置に似ているが、この知らない知識を強制的に植え付けられる感覚は非常に気持ち悪い。
 有用なはずの学習装置が不人気なのも納得だな。
 

「身体は好調、気分は不調。こういう時はさっさと家に帰るに限る。さっさと依頼を終わらせよう」


 亜空間ポーチから爆薬を1つ取り出して壊れたカプセルの基部にセットする。
 それから隠し部屋を出ると、壁を登攀して地上のエネルギー炉の部屋へと戻り、同じようにエネルギー炉にも爆薬をセットした。
 帰り道でもプラント内に残りの爆薬をセットしていく。
 この爆薬は探索者協会から今回の依頼用に支給された物なので俺の懐が痛むことはない。

 途中で物陰に置いておいた戦利品の山を背負って薬物プラントから離れる。
 嵩張る物は亜空間ポーチに入れ、魔導バイクに積める物は積み終えてから爆薬のスイッチを押した。
 数瞬後に地響きが起こり、薬物プラントが吹き飛んだ。
 大量の爆薬によって文字通り吹き飛んだ薬物プラントに背を向けると、魔導バイクに跨ってコロニーへの帰途についた。



 
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