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第二十八話 星遺物
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「──それじゃあ、その〈怠惰ノ断篇〉っていう星遺物があるおかげで、イヴはスキルを任意取得できるわけか」
「はい。私の心臓に星遺物が宿っているのですが、眠っている間にスキル取得用の特殊エネルギーが蓄積されます。そのエネルギーを消費することでスキルを取得できる仕組みです」
「スキル取得用の特殊エネルギーか」
「特殊エネルギーについては前マスターでも解析できなかったらしいです。〈怠惰ノ断篇〉は私の存在以上に機密性の高いアイテムなので、その研究記録は記録媒体には残さなかったようです」
「なるほどな。確かに、そんなアイテムの存在が知られたら面倒なことが起こりそうだな……それにしても星遺物か」
星遺物。
異界という別の星から流れ落ちてきた、マジックアイテムとも異なる常識外のアイテム。
旧時代の宗教に存在していたと言われる奇跡のアイテムである聖遺物に倣って、〈星遺物〉と呼称されるようになったらしい。
特徴として第一に挙げられるのは、やはり破壊不能である点だろう。
正確には同じ星遺物なら破壊できるそうだが、真偽は不明だ。
旧時代の遺産にある〈禁忌の炎〉と呼ばれる大量殺戮兵器の直撃を受けても全く破壊されなかったのは有名な話だ。
第二の特徴は、その常識外の力だ。
イヴに宿る〈怠惰ノ断篇〉のスキル取得などは、まさにその常識外の力の典型例だと言える。
現在までに存在を確認された星遺物の中で特に有名なのは3つ。
1つ目は、何処ぞのコロニーでエネルギー源として使われているという、無尽蔵の電力を生み出す宝珠型星遺物〈雷神ノ宝珠〉。
2つ目は、凡ゆるモンスターを支配することできる義眼型星遺物〈地神ノ義眼〉。
3つ目は、この世にある全てのスキルが記載され、それらのスキルを条件付きで取得できる本型星遺物〈強欲ノ断篇〉。
イヴの〈怠惰ノ断篇〉の力と名称からして、最後の〈強欲ノ断篇〉とは何らかの関連性があるのは間違いないだろう。
そんな星遺物の第三の特徴として、所有者が自らの意思で使用権を放棄しない限りは、その力は所有者に帰属するというものがある。
この帰属能力で星遺物が帰属した所有者が、星遺物の使用権を放棄せずに死んでしまった場合、その星遺物は使用できなくなってしまう。
そのため、星遺物の所有者の多くは、各勢力によって星遺物ごと重用される傾向にあり、星遺物を発見して帰属能力で星遺物の所有者になれば、以後は金銭面以外でも多大な恩恵を受けられるそうだ。
「ベリエル様はこの星遺物が欲しいですか?」
「欲しいか欲しくないかで言ったら勿論欲しいが、今の俺にとっては必要性が低いんだよな。俺が使うよりも、その力でサポートしてくれた方が正直助かる」
それに、スキル取得に必要な特殊エネルギーの蓄積方法は睡眠らしいが、その蓄積効率がどのくらいか不明なのも必要性が低い理由の一つだ。
似た星遺物の〈強欲ノ断篇〉もスキルを取得するのに厳しい条件があるそうだし、それは〈怠惰ノ断篇〉も同様のはず。
少なくとも、一晩寝た程度の睡眠時間でスキルを取得できるほど効率は良くないはずだ。
イヴがこれまでに眠っていた時間で蓄積した特殊エネルギーを引き継げるかも怪しいので、引き続き彼女に使ってもらった方が良いに違いない。
「それがベリエル様のお望みならば従いましょう。全力でサポートさせていただきます」
「よろしく……というか、今さらだが俺と行動せずに好きに生きるという道もあるんだが、いいのか?」
「ガーン!? 私を目覚めさせた責任を取ってくださらないのですか!?」
「ガーン、って、顔が無表情のまま言われてもな……。そもそも、前マスター的には新人類に変わる真なる人類を生み出す目的でイヴを作ったんだろ? そんな真人類のイヴが旧人類の俺に付き従っていいのか?」
荒野の僻地にある遺跡から人類の生活圏であるコロニーまでイヴを連れ帰ったことで、彼女を目覚めさせた責任は取ったと思う。
人工的に造り出された生命体とはいえ、こんな美女に傅かれるのは正直言って違和感がある。
「ピグマリオン計画のガラテアの開発コンセプトはその通りです。ですが、後継とも言える私の開発コンセプトは何度か変化しております」
「そうなのか?」
「はい。初期の開発コンセプトはガラテア同様に新人類に取って変わる真なる人類になることでした。ですが中期は旧人類の守護者になることを目指されました。この時に〈怠惰ノ断篇〉が使用されたようです。そして後期に旧人類に奉仕する存在となるように様々な知識をインプットされ、そして末期は……人類らしく自由に生きられるように思考面に調整が加えられ、今に至ります。これら全てのコンセプトを参照した上で、私自身の判断でベリエル様をマスターとして扱うと決めたのです。ですので、ご迷惑でなければ、お傍に置いていただきたく思います」
回収した記録媒体には、初期以降の開発コンセプトの変動について記録されていなかったが、イヴの開発者である前マスターの心情の変化が窺える。
その開発者が最終的に望み、何よりイヴ自身がそう望んでいるならば、これ以上とやかく言うのもおかしいか。
「……そうか。まぁ、イヴがそれでいいなら好きにしてくれ。俺はマスターとしてイヴの決定を尊重するよ。改めて、これからよろしくな」
「ありがとうございます。改めまして、よろしくお願いします、ベリエル様」
美女に無条件に従われているわけではないと分かり、胸中にあったモヤっとした気持ちの大部分が晴れた気がする。
残りは時間が解決してくれるだろうから、その時間を平穏に過ごすためにも、イヴと今後について色々話し合うとしよう。
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