新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵

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第二十七話 未知の機能

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※明けましておめでとうございます。
 今年も本作をよろしくお願い致します。


 ◆◇◆◇◆◇


「──ふぅ。無事にコロニーに入れたな」

「ベリエル様と前マスターの遺産のおかげですね」

「そうだな」


 遺産のおかげというか、前マスターがかつて所属していた組織からの盗品のおかげだけどな。
 門番部隊の中には探知系スキル持ち特有の挙動を見せる軍人がいたが、遺産のマジックアイテムのおかげで光学迷彩で隠れてついて来るイヴが見つかることはなかった。
 門を潜ってすぐイヴには人気の無い路地裏で光学迷彩装備を外させた。
 そのため、今のイヴは簡素なボディスーツのみという薄着姿に戻っている。


「……視線が痛いから服を買うか」


 下層民区である3等エリアは治安が良くないので、絶世の美貌と言っても過言ではないイヴの容姿は余計なトラブルを招き寄せるのは間違いない。
 前もって変装アイテム〈無垢の白面ホワイトフェイス〉で顔を変えさせていたので顔に関しては問題ないが、格好だけはどうしようもなかった。
 女物の衣服は流石に持ってないからな……。


「前のマスターが普通の衣服も用意していてくれたらよかったんだが……」

「時代によって流行は変わるそうなので仕方ないことです」

「まぁな。取り敢えず上に羽織る物だけでも買うか」


 露店で売っていた適当なケープを買ってからイヴに着せる。
 もっとちゃんとした衣服は2等エリアで買うとして、今はこれだけで着れば充分だろう。


「ここが探索者協会ですか」

「本部は2等エリアにあるオフィスだから、ここは支部の1つだな。ここで身分証を作ってから2等エリアにいく」


 エリア間を隔てる各門を通行する際には探索者IDなどの身分証を提示する必要があるのだが、探索者協会以外の組織で登録と発行をすると面倒な手続きが多い上に時間がかかる。
 その点、探索者協会はスラム街の孤児でも登録できるほどに審査が緩く、特に試験も無しで登録できるので、イヴの身分証も探索者協会で作ることにした。

 戸籍管理がしっかりとしている1等2等エリアと違い、3等エリアの戸籍管理は結構杜撰だ。
 色々制限があるスラム街の探索者協会の出張所──支部よりも下位の扱い──で登録するなら戸籍は気にする必要はないが、支部のオフィスで登録する際はエリアサーバーに戸籍を照会される。
 登録カウンターに並ぶ前にメタトロンの【強化】と【支配】で登録用機器をハッキングし、そこからエリアサーバーにイヴの偽りの戸籍を作っておいた。
 ちなみに、探索者登録は素顔で行うので支部では変装アイテムは外している。
 サーバー内の戸籍にもイヴの素顔を登録しておいた。

 以前の未発見遺跡でのハッキング経験もあって、思ったよりも簡単にサーバー内にイヴの戸籍を作ることができた。
 これでイヴが2等エリアに住む際の処理もスムーズに行えるだろう。


「これが探索者IDですか。随分と簡素な造りのカードですね」

「新人探索者のIDは登録地に隣接するエリアへ通じる門を通行するための本人確認の機能しかないからな。ランクが上がれば頑丈になるし機能も増えるぞ」


 探索者ID発行の際に職員から受けた説明を補足するようにイヴにID関連の話をしていく。
 やがて話の内容がコロニー絡みの雑談に変わってから暫くして、2等エリアの門に到着した。


「……行きの時は1人だったようだが、同行者が増えているな。新人の探索者のようだが、どういう関係だ?」


 IDに紐付けられた門の通行記録から、往路から同行者が増えていることを門番部隊に怪しまれた。
 荒野からコロニーに入る時とは違い、イヴの移動記録を残しておく必要があるため姿を隠さずに行動したのだが、運悪く余計なことに気付くタイプの軍人に当たってしまったようだ。
 新人探索者とベテラン探索者の組み合わせで少し苦しいが、仲間と言い切って突破するしかない。


「それは勿論」

「勿論、こういう関係です」


 そう言い放ちながら、イヴが恋人のように腕を組んできた。
 突然のことに思考がフリーズしている間にも、イヴの虚言は続く。


「やっと一緒に生活ができるだけの生活基盤が整ったと聞き、少しでも早く一緒に暮らしたくて探索者協会でIDを作ったのです。他の方法では時間がかかるのは、軍人さんもお解りでしょう?」

「……そうだな。確かに、早く一緒に暮らすなら、探索者になるのがいいだろう。通って良し」

「ありがとうございます。さぁ、参りましょう」

「あ、ああ」


 通行許可が出たので、門を潜り2等エリアへと入る。
 俺の自宅へと向かいながら、先ほど感じた違和感についてイヴを問い質した。


「さっきの軍人との問答だが、あの軍人に何かしたよな?」

「【思考誘導】を用いさせていただきました」

「うん?」

「【思考誘導】を用いさせていただきました」

「いや、そこはちゃんと聞こえてるんだが、言い方からすると思考誘導ってのはスキルが何かか?」

「その通りです。必要と判断し、急遽取得致しました。私の雛型であるP2ガラテアには無い機能だから驚かれるのは当然です。詳しくはベリエル様の家に到着してからお話しします」

「お、おう。頼むよ」


 状況的にスキルを任意で取得できる機能だろうか?
 遺跡から回収した資料にそんな内容は無かったと思うが、素人には意味が理解できない専門用語で記されていた可能性もあるので断定は出来ないな。
 まぁ、詳細はイヴ自身が語ってくれるようだから大人しく待つとしよう。


 
 
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