新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵

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第二十六話 メギンギョルズ

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 ◆◇◆◇◆◇


「──ところでベリエル様。此処はそのまま放置されるのでしょうか?」


 今のイヴは、彼女が眠っていた部屋に保管されていた彼女用と思われる簡素な衣服を着ている。
 目に毒だったイヴのほぼ全裸状態が解決し、一安心しているところに彼女がそんなことを尋ねてきた。


「利便性の悪い場所だからそうするつもりだけど、何かあるのか?」

「使われないのでしたら、この施設の動力源も持ち帰られるとよろしいかと思われます」

「動力源?」

「はい。創造主である前マスターが以前所属していた組織から盗み、もとい退職金代わりに戴いたものです。分類的にはマジックアイテムになるかと思われます」


 今、盗みって言った気がするが、まぁいいか。


「マジックアイテムか。何処にあるんだ?」

「主に私を含めたこの部屋の維持管理に使われていましたので、此処の真下にあります」


 下の丈の短い簡素なボディスーツを着たイヴがしゃがみ込んだので視線を逸らす。
 この格好は格好で刺激が強いと思っていると、床の一部が動き出して地下への階段が露出した。


「こちらです」


 先導するイヴの後をついて下りていった階段は短く、すぐに地下室に着いた。
 地下室にはシリンダー型のカプセルが設置されており、カプセルに接続された大小様々なケーブルが上階へと伸びていた。
 カプセルに近寄ってみると、中には漆黒のベルト型マジックアイテムが浮かんでいるのが見えた。


「〈メギンギョルズ〉というらしいです。これ自体がエネルギーを生み出すため動力源に使えるのですが、人が装着すると消費エネルギーを減らしてくれる効果があります」

「へぇ。それはいいな」


 消費エネルギーを減らす効果か。
 このベルトを装着したら、メタトロンの機神粒子製造に掛かるコストを減らせないだろうか?
 機神粒子製造の際、食べた物の一部が機神粒子を構成する材料に使われ、残りは製造エネルギーに回されている。
 機神粒子自体に使う材料は無理でも、製造エネルギーや稼働エネルギーの軽減には使えるかもしれない。
 必要エネルギーが減れば、自然と食費も減るはずだし、俺にとっては必須の装備になりそうだ。


「俺が貰ってもいいんだよな?」

「私の新たなマスターであるベリエル様には権利がございます。動力源以外にも前マスターが盗み出したアイテムがありますので、此方も同様にお持ち帰りください」

「今はっきりと盗み出したって言ったよな?」

「気のせいです」


 澄まし顔で発言を否定しながらイヴが壁の一部を押すと、壁の中に格納されていた棚がスライドして出てきた。
 棚の中には様々なアイテムが保管されており、一目では使い道が分からないものもあった。


「私にインプットされた情報の中にある物もありますが、そうではない物もあるようです。それらは詳細を調べてから使用することを推奨します」

「その方がいいだろうな。じゃあ、有り難く戴くよ」


 保管されていたアイテムを【亜空庫】に収納していると、その様子をイヴが興味深そうに見ていた。


「ベリエル様。そちらの亜空間はナノマシンによるものでしょうか?」

「そうだが、知ってるのか?」

「はい。私の雛型であるP2ガラテアの開発が行われていた時には既に亜空間技術が確立されていました。専用の亜空間を創造し管理する機能をナノマシンに実装する技術はP2ガラテアが中止された頃とほぼ同時期に開発されたそうです」


 ということは、メタトロンをはじめとした天機使シリーズが開発されたのは、その後ぐらいか。
 現代における亜空間収納は機械技術によるモノではなく、魔導技術で作られた収納系マジックアイテムのことを指す。
 スキルの形で亜空間収納ができる新人類もいるが、基本的には亜空間ポーチなどの収納系マジックアイテムが主流だ。
 機械式の亜空間収納は、その機能が備わった機械が旧文明遺跡で稀に見つかるレベルの希少性であるため、存在自体を知らない者も珍しくはない。
 それ故に、そんな亜空間収納機能も使えるメタトロンの存在を隠す必要があった。


「そうなんだな。あ、俺が亜空間収納を使えるのは誰にも喋らないでくれよ」

「私が許可なくマスターの情報を口外することはありません。ご安心ください」

「それなら良かった。そういえば、イヴのステータスってどう表示されるんだろう?」

「ステータス、ですか?」

「ああ。現代の技術なんだが、対象の情報を表示することができるんだ。名前に年齢、性別、種族、能力とかの各種情報の総称をステータスと呼ぶんだ」

「そのようなものがあるのですね。確かに私の情報がどのように表示されるかが気掛かりですね」

「まぁ、機械に関しては俺の力で誤魔化せるから心配はいらないんだが、対人に関しては運任せになるな」


 コロニーに入る時だけが面倒だが、イヴには戦利品の光学迷彩装備を使ってもらえばいい。
 コロニーの門に備わっている各種センサーは光学迷彩などで隠れた対象を看破するので、メタトロンの【支配】で騙せるはずだ。
 だが、探知や看破の力を持っている人間に対しての対策がない。
 そこに関しては、そういう力を持つ軍人が門番部隊にいないことを祈るしかないな。


「それでしたら先ほどのアイテムの中に、このような場合に備えて前マスターが用意した物があります。人間に関しては、そちらを使えば解決できるかと」

「用意が良い人だったんだな。そういうことなら使わせてもらうとするか」


 あっさりと問題が解決したことに胸を撫で下ろしつつ、最後に遺跡の動力源であるメギンギョルズを取り外した。


 
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