26 / 28
第二十六話 メギンギョルズ
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
「──ところでベリエル様。此処はそのまま放置されるのでしょうか?」
今のイヴは、彼女が眠っていた部屋に保管されていた彼女用と思われる簡素な衣服を着ている。
目に毒だったイヴのほぼ全裸状態が解決し、一安心しているところに彼女がそんなことを尋ねてきた。
「利便性の悪い場所だからそうするつもりだけど、何かあるのか?」
「使われないのでしたら、この施設の動力源も持ち帰られるとよろしいかと思われます」
「動力源?」
「はい。創造主である前マスターが以前所属していた組織から盗み、もとい退職金代わりに戴いたものです。分類的にはマジックアイテムになるかと思われます」
今、盗みって言った気がするが、まぁいいか。
「マジックアイテムか。何処にあるんだ?」
「主に私を含めたこの部屋の維持管理に使われていましたので、此処の真下にあります」
下の丈の短い簡素なボディスーツを着たイヴがしゃがみ込んだので視線を逸らす。
この格好は格好で刺激が強いと思っていると、床の一部が動き出して地下への階段が露出した。
「こちらです」
先導するイヴの後をついて下りていった階段は短く、すぐに地下室に着いた。
地下室にはシリンダー型のカプセルが設置されており、カプセルに接続された大小様々なケーブルが上階へと伸びていた。
カプセルに近寄ってみると、中には漆黒のベルト型マジックアイテムが浮かんでいるのが見えた。
「〈メギンギョルズ〉というらしいです。これ自体がエネルギーを生み出すため動力源に使えるのですが、人が装着すると消費エネルギーを減らしてくれる効果があります」
「へぇ。それはいいな」
消費エネルギーを減らす効果か。
このベルトを装着したら、メタトロンの機神粒子製造に掛かるコストを減らせないだろうか?
機神粒子製造の際、食べた物の一部が機神粒子を構成する材料に使われ、残りは製造エネルギーに回されている。
機神粒子自体に使う材料は無理でも、製造エネルギーや稼働エネルギーの軽減には使えるかもしれない。
必要エネルギーが減れば、自然と食費も減るはずだし、俺にとっては必須の装備になりそうだ。
「俺が貰ってもいいんだよな?」
「私の新たなマスターであるベリエル様には権利がございます。動力源以外にも前マスターが盗み出したアイテムがありますので、此方も同様にお持ち帰りください」
「今はっきりと盗み出したって言ったよな?」
「気のせいです」
澄まし顔で発言を否定しながらイヴが壁の一部を押すと、壁の中に格納されていた棚がスライドして出てきた。
棚の中には様々なアイテムが保管されており、一目では使い道が分からないものもあった。
「私にインプットされた情報の中にある物もありますが、そうではない物もあるようです。それらは詳細を調べてから使用することを推奨します」
「その方がいいだろうな。じゃあ、有り難く戴くよ」
保管されていたアイテムを【亜空庫】に収納していると、その様子をイヴが興味深そうに見ていた。
「ベリエル様。そちらの亜空間はナノマシンによるものでしょうか?」
「そうだが、知ってるのか?」
「はい。私の雛型であるP2ガラテアの開発が行われていた時には既に亜空間技術が確立されていました。専用の亜空間を創造し管理する機能をナノマシンに実装する技術はP2ガラテアが中止された頃とほぼ同時期に開発されたそうです」
ということは、メタトロンをはじめとした天機使シリーズが開発されたのは、その後ぐらいか。
現代における亜空間収納は機械技術によるモノではなく、魔導技術で作られた収納系マジックアイテムのことを指す。
スキルの形で亜空間収納ができる新人類もいるが、基本的には亜空間ポーチなどの収納系マジックアイテムが主流だ。
機械式の亜空間収納は、その機能が備わった機械が旧文明遺跡で稀に見つかるレベルの希少性であるため、存在自体を知らない者も珍しくはない。
それ故に、そんな亜空間収納機能も使えるメタトロンの存在を隠す必要があった。
「そうなんだな。あ、俺が亜空間収納を使えるのは誰にも喋らないでくれよ」
「私が許可なくマスターの情報を口外することはありません。ご安心ください」
「それなら良かった。そういえば、イヴのステータスってどう表示されるんだろう?」
「ステータス、ですか?」
「ああ。現代の技術なんだが、対象の情報を表示することができるんだ。名前に年齢、性別、種族、能力とかの各種情報の総称をステータスと呼ぶんだ」
「そのようなものがあるのですね。確かに私の情報がどのように表示されるかが気掛かりですね」
「まぁ、機械に関しては俺の力で誤魔化せるから心配はいらないんだが、対人に関しては運任せになるな」
コロニーに入る時だけが面倒だが、イヴには戦利品の光学迷彩装備を使ってもらえばいい。
コロニーの門に備わっている各種センサーは光学迷彩などで隠れた対象を看破するので、メタトロンの【支配】で騙せるはずだ。
だが、探知や看破の力を持っている人間に対しての対策がない。
そこに関しては、そういう力を持つ軍人が門番部隊にいないことを祈るしかないな。
「それでしたら先ほどのアイテムの中に、このような場合に備えて前マスターが用意した物があります。人間に関しては、そちらを使えば解決できるかと」
「用意が良い人だったんだな。そういうことなら使わせてもらうとするか」
あっさりと問題が解決したことに胸を撫で下ろしつつ、最後に遺跡の動力源であるメギンギョルズを取り外した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
僕だけレベルダウンな件〜敵を倒せば倒すほど弱くなるので、目立たずスローライフを目指します〜
小林一咲
ファンタジー
まったく数奇な人生である。
僕の名前は橋本 善。
正真正銘の日本人だが、今は異世界にいる。
理由なんてわかるはずがない。
死んだのか、はたまた何かの召喚に巻き込まれたのか。
僕には固有スキルがあった。
それは、スキル【レベルダウン】。
魔物を倒し、経験値を得るほどレベルやステータスがさがるというものだ。
だから僕は戦わない。
安心安全のスローライフを目指すんだ!!
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる