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第二十五話 イヴ
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ピグマリオン計画。
旧文明時代末期に一部の旧人類達によって立てられた計画で、スキルを有する新人類に対抗できる真なる人類を人工的に造り出し、新人類を駆逐することを目的としている。
P2のコードネームで呼ばれた計画は順調に進んでいたが、この計画を危険視した新人類と共生派の旧人類達によって徹底的に破壊された。
研究所の壊滅や支持基盤の撤退によってピグマリオン計画は中止されたが、一部の残党は逃げ延びて秘密裏に計画を続行していた。
それが、今回見つけた個人研究所兼シェルターの遺跡であり、カプセルで眠っている美女がピグマリオン計画の成果らしい。
「なるほどね。ここまでいくと凄い執念だな」
遺跡内に保管されていた各種記録媒体からピグマリオン計画の詳細や、此処の主がこの計画に傾倒していた理由が分かった。
目の前の眠れる美女はピグマリオン計画の成果であり、異文明遺跡から得た技術も用いて此処の主によって独自に改良を加えられている。
大元のピグマリオン計画で設計されたガラテア型に改良が加えられ、型式名はイヴに変更されていた。
遺っていた日記によれば、イヴの開発者は病に侵されていたらしく、イヴの完成まで生きられないことが分かっていたようで、最終工程は自動化されていた。
状況的にも、このカプセルが最終工程を行う機器なんだろう。
いつ完成したかの記録はなかったが、カプセルの機能で休眠状態になっているようなので生きているようだ。
「生きてる……まぁ、人造生命体だから生きてると評していいよな」
ピグマリオン計画のガラテア型は、異文明の生命技術の結晶である人造生命体を雛型に、旧文明時代の地球の最新生命技術などを掛け合わせて作られている。
イヴはそこに更に改良が加えられているが、分類的には人造生命体のままになるようだ。
「えっと起動方法は、コレか……起動コードは分からないからメタトロンで解除っと」
メタトロンの【支配】でカプセルの横にある操作機器を操作していく。
操作機器の液晶画面に書かれている意味の分からない文字列が大量に表示されたが、俺の意思を反映してメタトロンが自動的に処理していってくれた。
勝手に利用規約に同意させられている気分だが、目覚めさせることを求めたのは俺なので反対するのもおかしな話か。
程なくして全ての起動シーケンスが終わり、カプセルの蓋が開いた。
カプセル内から白い冷気が流れ出て、イヴの全身が露わになっていく。
カプセルの外からも裸なのは分かっていたが、内部を満たす冷気によって細部までは分からなかった。
だが、今は遮っていた冷気が流れ出ているため、イヴの身体を隠すものは何もない。
想像していた以上に人間にしか見えないが……本当にホムンクルスなのか?
そんなことを考えていると、閉じられていたイヴの目が開かれた。
寝ていた体勢のまま目の動きだけで周囲を見渡した後、今度は上体を起こしてから頭も動かして周りの確認を行なっていた。
「……状況を把握。アナタが私を覚醒させたのですね?」
銀髪碧眼の絶世の美貌を裏切らない美声に感心しつつ、頷きを返す。
「そうだ。あー、先に言っておくが、俺が此処に来た時には、既にキミの創造主? になると思われる人物は亡くなっていたぞ」
「存じております。起動シーケンスの過程で施設内の情報などは全てインプット済みです。マスターは随分と前に病で亡くなっています。ですので、今のマスターは私を起こして下さったアナタになります。よろしくお願いします、マスター」
「あ、やっぱりそうなるんだ。こちらこそよろしく。名前はイヴで良いんだよな?」
「はい。設計段階からイヴで設定されておりますが、他の名前が良いのであれば、新しい名前を決めてください」
「いや、特に無いからイヴと呼ばせてもらうよ」
「かしこまりました。マスターのお名前もお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「あ、そうだったな。ベリエル・アウターだ。マスター呼びだと目立つから、ベリエルと呼んでくれ」
「かしこまりました、ベリエル様」
「ところで、此処に保管されていた記録を見させてもらったんだが、本当にあんなことができるのか?」
「勿論です。ちゃんと夜のお相手をさせていただきます。実践経験はありませんが、この完璧な身体とインプットされた知識があれば問題ありません」
「いや、そっちじゃなくて、戦闘能力の方なんだが……」
まぁ、性機能のことが気にならないと言ったら嘘になるけど、目覚めさせた目的はイヴに備わっている戦闘能力の方だ。
大元のピグマリオン計画が、スキルを有する新人類を駆逐することを目的としているだけあって、その改良型であるイヴも相応の力を持っていた。
基本的にソロで探索者活動を行なっていたが、ソロで出来ることは限られている。
これまでは依頼によっては他の探索者と臨時でチームを組んだりしていたが、今はメタトロンのことがあるので他の探索者と組むのはなるだけ避けた方がいい。
メタトロンの性能ならばソロでも十分活動できるだろうが、やはり人手がある方が選択肢は増える。
そういった理由から、俺のサポート要員になってくれるのを期待してイヴを目覚めさせたのだ。
「現代の戦闘能力の基準が分からないので断言はできませんが、私の雛型であるP2ガラテア自体が当時の敵対勢力の戦力を想定して設計されています。私はそこから更に改良されています。少なくとも新人類並みであることは保証致します」
「それなら十分かな。じゃあ、これからよろしく、イヴ」
「こちらこそ、よろしくお願いします、ベリエル様」
さて、いい加減イヴに服を着せるか。
絶景だが、このままだと戦闘機能ではない機能の確認からはじめることになってしまいそうなので、急いで服を探すとしよう。
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