マジカルテキスト

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マジカルテキスト15

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 沈黙が、いつまでも続いていた。

 倒れ伏すルシファードラゴン。
 未だ痙攣する大地。
 そして——誰も理解できない“結果”。

「……何が、起きた?」

 凪は、喉が張り付いたように声を絞り出した。

 あくあも、デスくんも、言葉を失っている。

「詠唱、聞こえなかったデス……」
「魔法陣も……」

 ありえない。
 特級どころか、人の魔法の領域ではない。

 凪たちは、自然と——
 学長とカツラギの間に入る形で、前へ出ていた。

「下がれ!」

 学長が制止する。

 だが、その声よりも早く——
 誰かの足音が聞こえた。

 焦げた大地を踏みしめる、乾いた音。

 煙の向こうから、
 一人の人物が現れる。

 ローブの色は、くすんだ紫。
 手には——異様な魔法書。

 表紙全体が、紫色に染まったテキスト。

 その瞬間、凪の胸が強く脈打った。

(……あれは)

 空気が、張り詰める。

 学長が、目を細めた。

「……お前」

 一拍。

「村雨か?」

 その名が、静かに落ちた。

 男は答えない。
 ただ、雷が落ちた空を見上げている。

 凪は、目を離せなかった。

 ——そのテキスト。

 見覚えが、ある。

 否。
 感じたことがある。

「……あのテキスト……」

 凪の声は、震えていた。

「もしかして……」

 言葉の先が、喉で詰まる。

 紫のテキストが、かすかに脈動した。

 それに呼応するように——
 凪の胸の奥で、
 かつて没収されたはずの“禁断”の感覚が、確かに疼いた。

 偶然ではない。
 気まぐれでもない。

 この出会いは——
 最初から、繋がっていた。

「……久しぶりだな、学長」

 低い声だった。
 だが、その一言だけで、空気が張り詰める。

「……あんた、生徒を見殺しにしようとしてたのか?」

 学長の眉がわずかに動く。

「何かが来るのは分かっていた……」
「しかし、生徒の安全が第一——」

 その言葉を、雷鳴のような声が叩き潰した。

「学校の安全より、生徒の安全だろ!」

 村雨の怒声が、森に響く。

「頭、腐ってんのか!」
「結界だの校舎だの、あそこはそんなに軟な建物かよ!」

 学長が何か言おうとする前に、さらに畳みかける。

「こんな事態に——」
「中級ティーチャーまで連れてきやがって!」

 その一言に、凪たちは息を呑んだ。

(……中級)

 自分たちのことだ。
 あくあの指が、凪の袖を強く掴む。

「……怒ってる、ってレベルじゃないデス……」

 デスくんですら声を潜める。

 村雨の怒りは、感情的でありながら、的確だった。
 誰も、反論できない。

 学長は、静かに杖を下ろした。

「……結果として、守られた」
「それは事実だ」

「結果論だ」

 村雨は吐き捨てる。

「一歩間違えりゃ、何人死んでたと思ってる」

 その視線が——
 ふと、動いた。

 凪を捉える。

 雷のような鋭さが、
 一瞬だけ、和らぐ。

「…………」

 紫のテキストを持つ手が、止まる。

 
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