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02 私、魔王になりました。
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世界が静止していた。
魔王の一撃による風圧で巻きあがった床等の破片は空中で動きを止めていた。巻き込まれまいと飛び上がったガゼルも、瑠娜を庇おうとするも敵わず空しく手を伸ばす勇者も、外野で騒ぎ立てる化物たちも、もちろん振り下ろした拳により今にも邪魔な兎を押し潰さんとしている魔王でさえも、時間という概念が一時的に取っ払われすべてが静止していた。
その中で、瑠娜だけがこの瞬間を観測できていた。しっかりとした意識を保ったまま認識していた。かといって、自由に動けるという訳ではない。瑠娜の体もまた、時間を失っていたのだ。『死』がすぐ目前まで迫っているというのに、避けることはおろか視線をずらすことも、瞼を閉じることもできない。
《極限値の恐怖を観測しました。ユニークスキル『草食動物の生存本能』の発動条件を満たしています。いかがしますか?》
淡々とした口調でナビゲーションが始まる。
――沈黙。
《失礼しました。時を刻まないこの空間では瑠娜様であっても回答するのは困難でしたね。うっかりしておりました。おそらく瑠娜様が疑問に思われているであろうことを、簡潔に説明させていただきます。もしスキルを発動した場合、現状を打開できるかもしれません。保証はできませんが。もちろん代償はあります。代償は、今後攻撃系のスキル及び魔法の一切を習得することが不可能になります。》
『可能性がある』瑠娜にはその言葉が引っ掛かった。
絶対に助かる訳ではないという事が推測できたからだ。しかも、発動には代償が付くとのことだ。この世界のことを詳しくは知らない瑠娜にとって、それが今後の異世界生活においてどれほど支障をきたすのかは想像もつかなかった。慎重に選択しなければ、後で後悔することになるかもしれない。この一時的な休息がいつまで続くか分からないため、瑠娜は必死で思慮をめぐらした。
だが、ナビゲーターが放った次の言葉により、即決することとなった。
《もしスキルを発動しなかった場合は、死にます》
(じゃあ、前者しか選びようがないじゃないですか!)
と心の中で激しくツッコミを入れる。
《発動には瑠娜様の許可が必要です。合図をしたら、時が刻み始めますので、手遅れになる前に回答をお願いします・・・はい》
そして、止まった際と同様に突然世界は動き始めた。
「許可許可許可許可許可ぁーーー!」
口が動かせるようになるや否や、瑠娜は腹の底から叫んだ。時間を取り戻した魔王の拳が瑠娜の鼻先に到達する。
「ひぃぃ」
その一瞬の間に、とんでもない量の情報が瑠娜の頭を駆け巡った。
《スキルマスターの承認を確認しました。ユニークスキル『草食動物の生存本能』を発動。今後の攻撃系スキル及び魔法の習得を制限します。また、習得済みの攻撃系スキル及び魔法をすべて破棄します・・・・完了しました。スキルの効果により恐怖を数値化。計算中・・・・完了しました。恐怖値を全てスキルポイントに振り替えます・・・・完了しました。スキルポイントの累計が五億七千六百六十一万三千八百二十四になりました。これらを現在の保有スキルの内、優先度が高いと考えられる順に振り分けます。『回避性能壱 レベル壱』が『回避性能壱 レベル拾』に変化しました。レベル上限に達したので『回避性能弐 レベル壱』に進化します。『回避性能弐 レベル壱』が『回避性能弐 レベル拾』に変化しました。レベル上限に・・・・・・》
おびただしい程の文字列が次々と叩き込まれていく。
《・・・・・・『激運 レベル拾』に変化しました。なお、『穴掘り名人 レベル壱』、『発情期 レベル壱』、『寂しがり屋 レベル壱』、『抜け毛 レベル壱』については緊急性が低いためスキルポイントの振り分けは行いません。現在、スキルポイントの累計は五億七千二百十三万四百五十一です。残りのスキルポイントを全て使用し、ユニークスキルを作成します。作成中・・・・完了しました。おめでとうございます。ユニークスキル『脱兎』を習得しました。それに伴い『回避性能強化参』、『異常聴覚』、『跳躍距離補正』、『危機探知能力向上』の全てを破棄します。さらに、残りのスキルポイントでユニークスキルを作成します。作成中・・・・完了しました。申し訳ありません。予定していたユニークスキル『超激運』の作成に失敗しました。代わりにユニークスキル『死神王の太鼓判』を習得しました。それに伴い『激運』を破棄します。現在のスキルポイントの累計は八です。以上でユニークスキル『草食動物の生存本能』の発動を解除します。最後に、ユニークスキル『草食動物の生存本能』を破棄します》
どごぉぉん。
ナビゲーターのアナウンスの終了と同時に魔王の拳が振り下ろされた。
――――――――
「なゼだ。なぜナんだぁ!」
「ひぃぃぃ! 誰か助けて下さ~い!」
「うぉぉ。どうなっているんだ。魔王様の攻撃が全て見切られているだと」
「初めて見た時から、ただの兎じゃあないと思っていたんだ」
「あいつ、魔王様を手玉に取ってやがる。おっかねぇ」
魔王の八本の腕に追われ、瑠娜は小一時間大量の涙を流しながら逃げ回っていた。
ユニークスキル『脱兎』は、回避時のみという限定的な場面において極限値までその性能を向上させるという特殊な効果を持っていた。その驚異的な瞬発回避力によりあの危機的状況からするりと魔王の一撃を避けることに成功したのだが、それが魔王の逆鱗に触れてしまったようであった。
プライドを傷つけられた魔王は何としてでも瑠娜を叩き潰そうと執拗に猛攻を加えていた。しかし、『脱兎』の効果はすさまじく、八本全ての腕を持ってしても一向に当たる気配すらしない。どんな体勢からでも、たとえ空中であったとしても、見事なまでにあらゆる攻撃を避けてしまうのだ。
その光景を見た魔王の手下たちは口々に瑠娜を讃えるのだが、それが更に魔王の自尊心を抉った。
当の瑠娜はと言うと、
「ひぎゃぁぁ。かすった! 今かすりましたよね! ひぃぃ! 助けて!」
と、ご覧の有様であった。余裕のよの字もないようではあるが、そんな本人の心境など露知らず、周りはひたすらに感心するばかりだ。
「もウ、ヤメだ。はぁ。ハぁ。ゼンぶ、ケチらス。はァ」
いつぞやのガゼルの様に、息を荒げ大粒の汗を流す魔王。ちなみに、ガゼルはというと魔王の拳の直撃を受け勇者のはるか後方で伸びてしまっていた。原型を留めているところは、さすが魔人というべきか。かなり丈夫な体を持っているようだ。
「はァぁぁァァぁァ」と、魔王が力を溜め始める。周囲の空気が振動し強力な闇の魔力が魔王の元へと集約していった。
「やばいぞ。魔王様の究極魔法だ!」
「城が壊れちまうよ」
「巻き込まれたら死ぬぞぉ」
魔王の手下たちが揃って慌てだす。中には、両手を組んで天を仰ぎながら神頼みするものまでいた。その様子から魔王が唱えようとしている魔法がどれほど強力なものなのかが伺えた。勇者もごくりと生唾を飲み込む。
魔王は、八本の腕を自らの胸の前に移動させ手の付け根を合わせるような形で開く。その中心部にみるみるうちに巨大な闇の塊が形成されていった。その塊はどんどん大きさを増していく。しかも、その軌道上には瑠娜だけでなく勇者とその仲間、おまけにガゼルも含まれているようであった。最悪、瑠娜だけなら避けることができるのだろうが、満身創痍の彼らには難しいだろう。
「えっと、一体どうすれば・・・」
「兎のお方。恥を忍んでお願いがございます」
あたふたとする瑠娜の背後から、勇者が声をかけた。
「ほぇ、は、はい。何でしょうか?」
「私には、もう魔王を倒すだけの力が残っておりません。拝見させていただいたところ、貴方のそのスピードは魔王をも凌ぐ。私の代わりに、この伝説の聖剣で魔王を倒しては頂けませんか?」
「わ、私がですか!! そんな大役。私なんかでは到底・・・」
「いいえ。貴方しかいないのです。この状況下において、混沌の世界を救えるのは、貴方だけなのです」
「うっ」
勇者の熱い眼差しを受けてたじろぐ。元々、人の頼みを断れない性格の瑠娜は少し迷ったようではあったがすぐに一大決心をした。
「はい。できるかどうかは分かりませんが、やってみます!」
ガッツポーズをする瑠娜。
「おぉ。なんとも頼もしい。時間がありません。まずはこの剣をお持ちください。聖剣に選ばれし者の名で命ずる。一時的に聖剣の所有者を彼の者に委任する」
そう唱えて、薄く光る剣の柄を瑠娜に差し出した。瑠娜は、「わ、分かりました」と勇者から剣を受け取る。勇者と瑠娜は視線を合わせてから無言で頷きあった。
――後は任せました。
勇者の表情には瑠娜への信頼と期待が込められていた。瑠娜が剣をしっかりと握ったことを確認してから、勇者はそっと手を離した。が、
がつんっ
「え?」
「お、重すぎますぅ」
勢いよく剣の切っ先を地面に落下させる瑠娜。それでも柄を離さなかったのはせめてもの根性なのか。勇者は一瞬面くらったようであったが、すかさず瑠娜のフォローに回った。剣を跨ぐようにして瑠娜のぷるぷると震える手を握る。
「すみません。レディにこのような重いものを持たせてしまって。振った際の威力は落ちてしまいますが、致し方ありませんね。聖剣に選ばれし者の名で命ずる。彼の者が自由に扱える程度の質量となれ」
「あっ」
ふわっと腕にかかる重さが軽減されたのを感じた。勇者は優しく微笑み、ぽんぽんと瑠娜の手を叩く。
「これで、大丈夫です」
瑠娜もにこりと笑顔を返す。
「本当ですね。これなら、私でもっ」
瑠娜は、軽くなった聖剣を持ち上げた。勇者がそれを跨いでいることも忘れて・・・
ごずんっという鈍い音と共に、勇者の『子供勇者』に思いっきり聖剣が突き立てられた。
「あ・・・」
やってしまったと瑠娜の顔が青ざめる。しかし、もっと青ざめているのは勇者の方であった。
数秒の空白の後、「いっでぇぇぇえぇぇ」と、甘いマスクをぐちゃぐちゃにしながら悶絶する。ぴょんぴょんとその場で飛び跳ね、痛みを和らげようと必死であった。
「おぉ、あの兎。勇者に攻撃しやがった。一体どちらの味方なんだ。狂ってやがるぜ」
瑠娜の不注意は、周囲に混乱を波及させた。
「くぅぅぅ。いっつぅぅぅ。あれ?」
脂汗をにじませ股間を抑えて跳ね回っていた勇者だが、体力的な限界もあったのだろう。着地のタイミングで両足を同時にぐねってしまった。そして、踏ん張ることもできずにそのままの体勢で後頭部から転倒する。
ごちんっという衝突音。
勇者がこけた先にたまたま、気を失う仲間が腰に差している短剣の柄があったのだ。勇者は「うっ」と短いうめき声をあげて動かなくなった。
「勇者を、倒しやがった、だと・・・」
魔王の手下の内の一体が驚嘆の声をあげた。
しかし、この偶然の連鎖は終わらなかった。勇者の後頭部が仲間の短剣の柄に激突した際の衝撃がきっかけで、その短剣に込められた風魔法が発動する。ぽんっという破裂音が響き短剣の先端で空気が弾けた。それによりその仲間が腰から下げていた道具袋から丸い球体が真上に飛び出す。
同時に、力を溜め終わった魔王が「こレで、おワリだ」と叫んだ。直径五メートル近くにまで膨れ上がった闇が波打つ。
「ファイナルデスビーム」
魔王が詠唱するのとほぼ同時に、道具袋から飛び出した球体が弾け、眩い光を放った。
「な、閃光玉だと!」
強烈な光に視界を奪われ究極魔法の標準がずれる。闇の塊から放出された超破壊光線は当初の軌道を外れ瑠娜の耳のすぐ上部を通過した。
「あ、聖剣が!」
その際に、瑠娜が持ち上げていた剣の先端をかすめ、あまりの衝撃にそれを手放してしまう。カーン、カーン、カーンと、聖剣が部屋中の壁やら柱やらにぶつかりながら飛んでいく音が聞こえたが、視界を焼き尽くす閃光を前に誰もその行方を追うことはできなかった。
そして、
「ギャぁぁぁぁぁァァァあぁぁぁァぁアぁ!!」
けたたましい声量で、魔王の悲鳴がこだました。
―――
「嘘だろ。魔王様。そんなばかな・・・」
「一体、何が起きたんだ?」
瑠娜が眩しさから解放された時、そこには気を失う伝説の勇者一行と左胸に聖剣が突き刺さり絶命している魔王の姿があった。
瑠娜が手放してしまった聖剣は究極魔法の衝撃で加速し壁や柱に跳ね返され、最終的には魔王の心臓に辿り着いたらしい。魔王の手下は皆、ぽかんと口を開けて唖然としており誰一人として現実を受け止めきれずにいた。あの、最強災厄の魔王が殺られた。あり得ないことであった。
「過去数百万年にも及ぶ魔族の歴史の中でも歴代魔王中一番強いと言われていたあのお方が・・・」
「俺たちは一体どうすれば」
途方に暮れる化物たち。
「私も一体どうすればいいのでしょう・・・」
と、同様に瑠娜も呆然と立ち尽くしていた。
魔王と勇者を交互に見つめ、はぁっとため息をつく。通常の物語であれば、勇者の活躍で魔王が倒され世界は平和になりました。めでたしめでたしという幕引きになるのだろうが、当の勇者は白目を剥いて気絶している。瑠娜はとりあえず、勇者を起こそうとつんつんとおでこを突いてみた。
「あのぅ、終わったみたいなんですが。大丈夫ですかぁ?」
だが、勇者が目を覚ます様子はなかった。すると、
「ドロップ ウォーターマス」
突如として、勇者たちに向かって大量の水塊がどぼどぼと降り注いだ。
「ひゃあ! つべたい!」
瑠娜は、咄嗟に飛び跳ねて直撃を回避するが、跳ね返った水滴に悲鳴をあげた。一同は、揃って詠唱主の方に顔を向ける。そこには、眉間に皺を寄せた捻じれ角の魔人、ガゼルが腕を組んで立っていた。魔王に殴打された際の衝撃によるものだろうか、右側の角の先端が折れてしまっている。
「うぅ」
「あれ?生きてる?」
「私は、魔王にやられたはずでは?」
「んぁ?」
びしょびしょに濡れた勇者一行が、ガゼルの水魔法により覚醒する。四人で支え合って何とか立ち上がり、目の前の光景を見て驚愕した。
「魔王が死んでいる」
「信じられん」
「勝ったのか?」
「兎のお方。貴方が成し遂げてくださったのですね」
勇者は、仲間に肩を支えられた状態で瑠娜に右腕を伸ばした。広げた手の平は、間違いなく握手を求めるものだった。
「本当にありがとうございました。貴方は英雄です。貴方のおかげで、この長く苦しい魔族との戦争を終わらせることが出来ました。是非、その功績を我らの王に伝えさせてください」
そう言って、にこりと笑う。その顔には、戦いを終えた戦士の安堵が浮かんでいた。
「え? あ、は、はい」
瑠娜は、全部ただの偶然なんだけどと、内心思いながらも、せっかくの雰囲気をぶち壊すのも癪だと思いぎこちない笑顔で返した。
そこで、瑠娜はようやく気付く。自分がこの異世界に転生した理由を。そうか、私は英雄になるためにこの世界に召喚されたのか。魔王を倒した者として、皆からちやほやされながら、王宮で贅沢な暮らしを満喫する運命だったのだ。そうか、それで合点がいった。
――と。
瑠奈は、差し出された勇者の手を握り返そうと右腕をあげた。しかし、運命はそんなに優しいものではなかった。
「何が終わるって?」
瑠娜の右腕が輝かしい未来の種に辿り着く前に、ガゼルの両手にしっかりと包み込まれてしまった。
「はれ?」
「勘違いしないでもらいたい。何も終わってなどいない。むしろここから始まるのだ」
ガゼルは、蔑むように勇者の顔を横目で見下ろす。
「何が、始まるというのだ! 魔王は死んだ。これ以上争う必要はっ」
「貴様は阿保なのか。魔界規定第九千二百六条第四項『魔王と闘いこれに勝利した者は、新たな魔王となる。ただし、勇者を除く』。つまりは、貴様らの目の前におわすこの御方こそが、新たな魔王様である。始まるのだよ。前魔王を遥かに凌ぐ力を持った新魔王による侵略がな!」
「なっ!!」
勇者と瑠娜が同時に目を見開いた。
そして、ガゼルは瑠娜の目前で跪き、頭を下げた。
「おぉ。偉大なる新魔王よ。上級魔人ガゼル。貴方に忠誠を誓います」
その姿を見て次々と膝まずく化物たち。
「おぉ、崇高なる主よ。我らも忠誠を誓います」
口々に勝手な誓約が立てられていく。その姿をあんぐりと口を開けて眺める瑠娜。
ガゼルは、にやりと口の端を吊り上げると顔をあげた。
「貴方の名をお聞かせください」
瑠娜は混乱しながらも、とりあえず返答した。
「る、瑠娜でしゅ」
盛大に噛み散らかすが、ガゼルは気にしない。ばっと立ち上がると、右手だけ離してそのまま身を翻す。
そして、高らかに叫んだ。
「魔王様の命令だ! 勇者どもを摘み出せ! しかし、絶対に傷つけるなよ。必ず生きたまま王国へ送還するのだ! 我らの新たな主人の誕生を知らしめる生き証人として、一役買ってもらおうではないか!」
「はい! 承知しましたぁ!」
ガゼルの号令により、数体のバキバキに切れた筋肉を持つ黒光りするマッチョの魔物が現れ勇者たちを持ち上げた。そしてそのまま部屋の入口へと運んでいく。瑠娜は、「あ、私の未来が・・・」と、涙目になりながらその姿を目で追うが、もうどうすることもできなかった。
――さらば、私の希望。さらば、私の夢。さらば、私の英雄伝説。
「わっしょいわっしょい」と、暴れる勇者たちをお祭り気分で部屋から排除する化物。その姿が完全に見えなくなったところで、瑠娜は潔く諦めた。
ガゼルは、左手で握ったままの瑠娜の腕を高々と持ちあげて叫んだ。
「魔王ルナ様の誕生だぁ! 万歳!」
「万歳!!」
「万歳!!」
「万歳!!」
最大級の熱気に包まれる魔王城。興奮は最高潮であった。ただ一人、がっくしと肩を落とす瑠娜を除いて。
(天国のパパ。現世のママ。私、高校を卒業する前に就職が決まりました。勤務地は異世界です。役職は、『魔王』だそうです)
ピロピロピーン
《ステータスの変更を確認しました。貴方は、檜渡 瑠娜様、改め、ルナ様になりました。職業は『魔王』です》
感情が微塵も感じられない冷徹な口調で、恒例となりつつあるアナウンスが流れた。
魔王の一撃による風圧で巻きあがった床等の破片は空中で動きを止めていた。巻き込まれまいと飛び上がったガゼルも、瑠娜を庇おうとするも敵わず空しく手を伸ばす勇者も、外野で騒ぎ立てる化物たちも、もちろん振り下ろした拳により今にも邪魔な兎を押し潰さんとしている魔王でさえも、時間という概念が一時的に取っ払われすべてが静止していた。
その中で、瑠娜だけがこの瞬間を観測できていた。しっかりとした意識を保ったまま認識していた。かといって、自由に動けるという訳ではない。瑠娜の体もまた、時間を失っていたのだ。『死』がすぐ目前まで迫っているというのに、避けることはおろか視線をずらすことも、瞼を閉じることもできない。
《極限値の恐怖を観測しました。ユニークスキル『草食動物の生存本能』の発動条件を満たしています。いかがしますか?》
淡々とした口調でナビゲーションが始まる。
――沈黙。
《失礼しました。時を刻まないこの空間では瑠娜様であっても回答するのは困難でしたね。うっかりしておりました。おそらく瑠娜様が疑問に思われているであろうことを、簡潔に説明させていただきます。もしスキルを発動した場合、現状を打開できるかもしれません。保証はできませんが。もちろん代償はあります。代償は、今後攻撃系のスキル及び魔法の一切を習得することが不可能になります。》
『可能性がある』瑠娜にはその言葉が引っ掛かった。
絶対に助かる訳ではないという事が推測できたからだ。しかも、発動には代償が付くとのことだ。この世界のことを詳しくは知らない瑠娜にとって、それが今後の異世界生活においてどれほど支障をきたすのかは想像もつかなかった。慎重に選択しなければ、後で後悔することになるかもしれない。この一時的な休息がいつまで続くか分からないため、瑠娜は必死で思慮をめぐらした。
だが、ナビゲーターが放った次の言葉により、即決することとなった。
《もしスキルを発動しなかった場合は、死にます》
(じゃあ、前者しか選びようがないじゃないですか!)
と心の中で激しくツッコミを入れる。
《発動には瑠娜様の許可が必要です。合図をしたら、時が刻み始めますので、手遅れになる前に回答をお願いします・・・はい》
そして、止まった際と同様に突然世界は動き始めた。
「許可許可許可許可許可ぁーーー!」
口が動かせるようになるや否や、瑠娜は腹の底から叫んだ。時間を取り戻した魔王の拳が瑠娜の鼻先に到達する。
「ひぃぃ」
その一瞬の間に、とんでもない量の情報が瑠娜の頭を駆け巡った。
《スキルマスターの承認を確認しました。ユニークスキル『草食動物の生存本能』を発動。今後の攻撃系スキル及び魔法の習得を制限します。また、習得済みの攻撃系スキル及び魔法をすべて破棄します・・・・完了しました。スキルの効果により恐怖を数値化。計算中・・・・完了しました。恐怖値を全てスキルポイントに振り替えます・・・・完了しました。スキルポイントの累計が五億七千六百六十一万三千八百二十四になりました。これらを現在の保有スキルの内、優先度が高いと考えられる順に振り分けます。『回避性能壱 レベル壱』が『回避性能壱 レベル拾』に変化しました。レベル上限に達したので『回避性能弐 レベル壱』に進化します。『回避性能弐 レベル壱』が『回避性能弐 レベル拾』に変化しました。レベル上限に・・・・・・》
おびただしい程の文字列が次々と叩き込まれていく。
《・・・・・・『激運 レベル拾』に変化しました。なお、『穴掘り名人 レベル壱』、『発情期 レベル壱』、『寂しがり屋 レベル壱』、『抜け毛 レベル壱』については緊急性が低いためスキルポイントの振り分けは行いません。現在、スキルポイントの累計は五億七千二百十三万四百五十一です。残りのスキルポイントを全て使用し、ユニークスキルを作成します。作成中・・・・完了しました。おめでとうございます。ユニークスキル『脱兎』を習得しました。それに伴い『回避性能強化参』、『異常聴覚』、『跳躍距離補正』、『危機探知能力向上』の全てを破棄します。さらに、残りのスキルポイントでユニークスキルを作成します。作成中・・・・完了しました。申し訳ありません。予定していたユニークスキル『超激運』の作成に失敗しました。代わりにユニークスキル『死神王の太鼓判』を習得しました。それに伴い『激運』を破棄します。現在のスキルポイントの累計は八です。以上でユニークスキル『草食動物の生存本能』の発動を解除します。最後に、ユニークスキル『草食動物の生存本能』を破棄します》
どごぉぉん。
ナビゲーターのアナウンスの終了と同時に魔王の拳が振り下ろされた。
――――――――
「なゼだ。なぜナんだぁ!」
「ひぃぃぃ! 誰か助けて下さ~い!」
「うぉぉ。どうなっているんだ。魔王様の攻撃が全て見切られているだと」
「初めて見た時から、ただの兎じゃあないと思っていたんだ」
「あいつ、魔王様を手玉に取ってやがる。おっかねぇ」
魔王の八本の腕に追われ、瑠娜は小一時間大量の涙を流しながら逃げ回っていた。
ユニークスキル『脱兎』は、回避時のみという限定的な場面において極限値までその性能を向上させるという特殊な効果を持っていた。その驚異的な瞬発回避力によりあの危機的状況からするりと魔王の一撃を避けることに成功したのだが、それが魔王の逆鱗に触れてしまったようであった。
プライドを傷つけられた魔王は何としてでも瑠娜を叩き潰そうと執拗に猛攻を加えていた。しかし、『脱兎』の効果はすさまじく、八本全ての腕を持ってしても一向に当たる気配すらしない。どんな体勢からでも、たとえ空中であったとしても、見事なまでにあらゆる攻撃を避けてしまうのだ。
その光景を見た魔王の手下たちは口々に瑠娜を讃えるのだが、それが更に魔王の自尊心を抉った。
当の瑠娜はと言うと、
「ひぎゃぁぁ。かすった! 今かすりましたよね! ひぃぃ! 助けて!」
と、ご覧の有様であった。余裕のよの字もないようではあるが、そんな本人の心境など露知らず、周りはひたすらに感心するばかりだ。
「もウ、ヤメだ。はぁ。ハぁ。ゼンぶ、ケチらス。はァ」
いつぞやのガゼルの様に、息を荒げ大粒の汗を流す魔王。ちなみに、ガゼルはというと魔王の拳の直撃を受け勇者のはるか後方で伸びてしまっていた。原型を留めているところは、さすが魔人というべきか。かなり丈夫な体を持っているようだ。
「はァぁぁァァぁァ」と、魔王が力を溜め始める。周囲の空気が振動し強力な闇の魔力が魔王の元へと集約していった。
「やばいぞ。魔王様の究極魔法だ!」
「城が壊れちまうよ」
「巻き込まれたら死ぬぞぉ」
魔王の手下たちが揃って慌てだす。中には、両手を組んで天を仰ぎながら神頼みするものまでいた。その様子から魔王が唱えようとしている魔法がどれほど強力なものなのかが伺えた。勇者もごくりと生唾を飲み込む。
魔王は、八本の腕を自らの胸の前に移動させ手の付け根を合わせるような形で開く。その中心部にみるみるうちに巨大な闇の塊が形成されていった。その塊はどんどん大きさを増していく。しかも、その軌道上には瑠娜だけでなく勇者とその仲間、おまけにガゼルも含まれているようであった。最悪、瑠娜だけなら避けることができるのだろうが、満身創痍の彼らには難しいだろう。
「えっと、一体どうすれば・・・」
「兎のお方。恥を忍んでお願いがございます」
あたふたとする瑠娜の背後から、勇者が声をかけた。
「ほぇ、は、はい。何でしょうか?」
「私には、もう魔王を倒すだけの力が残っておりません。拝見させていただいたところ、貴方のそのスピードは魔王をも凌ぐ。私の代わりに、この伝説の聖剣で魔王を倒しては頂けませんか?」
「わ、私がですか!! そんな大役。私なんかでは到底・・・」
「いいえ。貴方しかいないのです。この状況下において、混沌の世界を救えるのは、貴方だけなのです」
「うっ」
勇者の熱い眼差しを受けてたじろぐ。元々、人の頼みを断れない性格の瑠娜は少し迷ったようではあったがすぐに一大決心をした。
「はい。できるかどうかは分かりませんが、やってみます!」
ガッツポーズをする瑠娜。
「おぉ。なんとも頼もしい。時間がありません。まずはこの剣をお持ちください。聖剣に選ばれし者の名で命ずる。一時的に聖剣の所有者を彼の者に委任する」
そう唱えて、薄く光る剣の柄を瑠娜に差し出した。瑠娜は、「わ、分かりました」と勇者から剣を受け取る。勇者と瑠娜は視線を合わせてから無言で頷きあった。
――後は任せました。
勇者の表情には瑠娜への信頼と期待が込められていた。瑠娜が剣をしっかりと握ったことを確認してから、勇者はそっと手を離した。が、
がつんっ
「え?」
「お、重すぎますぅ」
勢いよく剣の切っ先を地面に落下させる瑠娜。それでも柄を離さなかったのはせめてもの根性なのか。勇者は一瞬面くらったようであったが、すかさず瑠娜のフォローに回った。剣を跨ぐようにして瑠娜のぷるぷると震える手を握る。
「すみません。レディにこのような重いものを持たせてしまって。振った際の威力は落ちてしまいますが、致し方ありませんね。聖剣に選ばれし者の名で命ずる。彼の者が自由に扱える程度の質量となれ」
「あっ」
ふわっと腕にかかる重さが軽減されたのを感じた。勇者は優しく微笑み、ぽんぽんと瑠娜の手を叩く。
「これで、大丈夫です」
瑠娜もにこりと笑顔を返す。
「本当ですね。これなら、私でもっ」
瑠娜は、軽くなった聖剣を持ち上げた。勇者がそれを跨いでいることも忘れて・・・
ごずんっという鈍い音と共に、勇者の『子供勇者』に思いっきり聖剣が突き立てられた。
「あ・・・」
やってしまったと瑠娜の顔が青ざめる。しかし、もっと青ざめているのは勇者の方であった。
数秒の空白の後、「いっでぇぇぇえぇぇ」と、甘いマスクをぐちゃぐちゃにしながら悶絶する。ぴょんぴょんとその場で飛び跳ね、痛みを和らげようと必死であった。
「おぉ、あの兎。勇者に攻撃しやがった。一体どちらの味方なんだ。狂ってやがるぜ」
瑠娜の不注意は、周囲に混乱を波及させた。
「くぅぅぅ。いっつぅぅぅ。あれ?」
脂汗をにじませ股間を抑えて跳ね回っていた勇者だが、体力的な限界もあったのだろう。着地のタイミングで両足を同時にぐねってしまった。そして、踏ん張ることもできずにそのままの体勢で後頭部から転倒する。
ごちんっという衝突音。
勇者がこけた先にたまたま、気を失う仲間が腰に差している短剣の柄があったのだ。勇者は「うっ」と短いうめき声をあげて動かなくなった。
「勇者を、倒しやがった、だと・・・」
魔王の手下の内の一体が驚嘆の声をあげた。
しかし、この偶然の連鎖は終わらなかった。勇者の後頭部が仲間の短剣の柄に激突した際の衝撃がきっかけで、その短剣に込められた風魔法が発動する。ぽんっという破裂音が響き短剣の先端で空気が弾けた。それによりその仲間が腰から下げていた道具袋から丸い球体が真上に飛び出す。
同時に、力を溜め終わった魔王が「こレで、おワリだ」と叫んだ。直径五メートル近くにまで膨れ上がった闇が波打つ。
「ファイナルデスビーム」
魔王が詠唱するのとほぼ同時に、道具袋から飛び出した球体が弾け、眩い光を放った。
「な、閃光玉だと!」
強烈な光に視界を奪われ究極魔法の標準がずれる。闇の塊から放出された超破壊光線は当初の軌道を外れ瑠娜の耳のすぐ上部を通過した。
「あ、聖剣が!」
その際に、瑠娜が持ち上げていた剣の先端をかすめ、あまりの衝撃にそれを手放してしまう。カーン、カーン、カーンと、聖剣が部屋中の壁やら柱やらにぶつかりながら飛んでいく音が聞こえたが、視界を焼き尽くす閃光を前に誰もその行方を追うことはできなかった。
そして、
「ギャぁぁぁぁぁァァァあぁぁぁァぁアぁ!!」
けたたましい声量で、魔王の悲鳴がこだました。
―――
「嘘だろ。魔王様。そんなばかな・・・」
「一体、何が起きたんだ?」
瑠娜が眩しさから解放された時、そこには気を失う伝説の勇者一行と左胸に聖剣が突き刺さり絶命している魔王の姿があった。
瑠娜が手放してしまった聖剣は究極魔法の衝撃で加速し壁や柱に跳ね返され、最終的には魔王の心臓に辿り着いたらしい。魔王の手下は皆、ぽかんと口を開けて唖然としており誰一人として現実を受け止めきれずにいた。あの、最強災厄の魔王が殺られた。あり得ないことであった。
「過去数百万年にも及ぶ魔族の歴史の中でも歴代魔王中一番強いと言われていたあのお方が・・・」
「俺たちは一体どうすれば」
途方に暮れる化物たち。
「私も一体どうすればいいのでしょう・・・」
と、同様に瑠娜も呆然と立ち尽くしていた。
魔王と勇者を交互に見つめ、はぁっとため息をつく。通常の物語であれば、勇者の活躍で魔王が倒され世界は平和になりました。めでたしめでたしという幕引きになるのだろうが、当の勇者は白目を剥いて気絶している。瑠娜はとりあえず、勇者を起こそうとつんつんとおでこを突いてみた。
「あのぅ、終わったみたいなんですが。大丈夫ですかぁ?」
だが、勇者が目を覚ます様子はなかった。すると、
「ドロップ ウォーターマス」
突如として、勇者たちに向かって大量の水塊がどぼどぼと降り注いだ。
「ひゃあ! つべたい!」
瑠娜は、咄嗟に飛び跳ねて直撃を回避するが、跳ね返った水滴に悲鳴をあげた。一同は、揃って詠唱主の方に顔を向ける。そこには、眉間に皺を寄せた捻じれ角の魔人、ガゼルが腕を組んで立っていた。魔王に殴打された際の衝撃によるものだろうか、右側の角の先端が折れてしまっている。
「うぅ」
「あれ?生きてる?」
「私は、魔王にやられたはずでは?」
「んぁ?」
びしょびしょに濡れた勇者一行が、ガゼルの水魔法により覚醒する。四人で支え合って何とか立ち上がり、目の前の光景を見て驚愕した。
「魔王が死んでいる」
「信じられん」
「勝ったのか?」
「兎のお方。貴方が成し遂げてくださったのですね」
勇者は、仲間に肩を支えられた状態で瑠娜に右腕を伸ばした。広げた手の平は、間違いなく握手を求めるものだった。
「本当にありがとうございました。貴方は英雄です。貴方のおかげで、この長く苦しい魔族との戦争を終わらせることが出来ました。是非、その功績を我らの王に伝えさせてください」
そう言って、にこりと笑う。その顔には、戦いを終えた戦士の安堵が浮かんでいた。
「え? あ、は、はい」
瑠娜は、全部ただの偶然なんだけどと、内心思いながらも、せっかくの雰囲気をぶち壊すのも癪だと思いぎこちない笑顔で返した。
そこで、瑠娜はようやく気付く。自分がこの異世界に転生した理由を。そうか、私は英雄になるためにこの世界に召喚されたのか。魔王を倒した者として、皆からちやほやされながら、王宮で贅沢な暮らしを満喫する運命だったのだ。そうか、それで合点がいった。
――と。
瑠奈は、差し出された勇者の手を握り返そうと右腕をあげた。しかし、運命はそんなに優しいものではなかった。
「何が終わるって?」
瑠娜の右腕が輝かしい未来の種に辿り着く前に、ガゼルの両手にしっかりと包み込まれてしまった。
「はれ?」
「勘違いしないでもらいたい。何も終わってなどいない。むしろここから始まるのだ」
ガゼルは、蔑むように勇者の顔を横目で見下ろす。
「何が、始まるというのだ! 魔王は死んだ。これ以上争う必要はっ」
「貴様は阿保なのか。魔界規定第九千二百六条第四項『魔王と闘いこれに勝利した者は、新たな魔王となる。ただし、勇者を除く』。つまりは、貴様らの目の前におわすこの御方こそが、新たな魔王様である。始まるのだよ。前魔王を遥かに凌ぐ力を持った新魔王による侵略がな!」
「なっ!!」
勇者と瑠娜が同時に目を見開いた。
そして、ガゼルは瑠娜の目前で跪き、頭を下げた。
「おぉ。偉大なる新魔王よ。上級魔人ガゼル。貴方に忠誠を誓います」
その姿を見て次々と膝まずく化物たち。
「おぉ、崇高なる主よ。我らも忠誠を誓います」
口々に勝手な誓約が立てられていく。その姿をあんぐりと口を開けて眺める瑠娜。
ガゼルは、にやりと口の端を吊り上げると顔をあげた。
「貴方の名をお聞かせください」
瑠娜は混乱しながらも、とりあえず返答した。
「る、瑠娜でしゅ」
盛大に噛み散らかすが、ガゼルは気にしない。ばっと立ち上がると、右手だけ離してそのまま身を翻す。
そして、高らかに叫んだ。
「魔王様の命令だ! 勇者どもを摘み出せ! しかし、絶対に傷つけるなよ。必ず生きたまま王国へ送還するのだ! 我らの新たな主人の誕生を知らしめる生き証人として、一役買ってもらおうではないか!」
「はい! 承知しましたぁ!」
ガゼルの号令により、数体のバキバキに切れた筋肉を持つ黒光りするマッチョの魔物が現れ勇者たちを持ち上げた。そしてそのまま部屋の入口へと運んでいく。瑠娜は、「あ、私の未来が・・・」と、涙目になりながらその姿を目で追うが、もうどうすることもできなかった。
――さらば、私の希望。さらば、私の夢。さらば、私の英雄伝説。
「わっしょいわっしょい」と、暴れる勇者たちをお祭り気分で部屋から排除する化物。その姿が完全に見えなくなったところで、瑠娜は潔く諦めた。
ガゼルは、左手で握ったままの瑠娜の腕を高々と持ちあげて叫んだ。
「魔王ルナ様の誕生だぁ! 万歳!」
「万歳!!」
「万歳!!」
「万歳!!」
最大級の熱気に包まれる魔王城。興奮は最高潮であった。ただ一人、がっくしと肩を落とす瑠娜を除いて。
(天国のパパ。現世のママ。私、高校を卒業する前に就職が決まりました。勤務地は異世界です。役職は、『魔王』だそうです)
ピロピロピーン
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