求婚してくれたのは、最愛の人の弟でした~兄の執着、弟の純情~

かべうち右近

文字の大きさ
1 / 12

1.小屋の中の情事 ※

しおりを挟む
 空はオレンジ色に染まり、そろそろ日も暮れようかという頃合だ。森の仕事ならばもう帰り支度をとうに済ませていなければならないだろう。だが、森の作業小屋の中では物音が響き続けている。それは一人だけで奏でられる音ではない。

 ぎっぎっと規則正しく響く木の軋む音に合わせ、肉のぶつかりあう音がする。緑目に栗毛の女性と金髪碧眼の男性が情事を営んでいる最中だった。

 粗末な小屋に粗末なベッド。だが、そこに組み敷かれた女性の着る服は、上等な生地のドレスである。対する男もこれまた仕立てのよい服装だ。

 どう見てもお忍びの貴族の風情である。

 それもそのはずだろう。どう見てもこの若い二人は未婚だ。本来ならば未婚の、しかも貴族の婚約者がいない男女は異性を知らない清らかな身体であるべきなのだ。だというのに、彼女らはともに、ずいぶんと手慣れた様子で肌を合わせている。

「ん……あっ……ロメオ……も、う……」

「イきそう? いいよ、アンナ。何度でもイきなよ。ほら……僕ももうすぐだから」

「やっ……ああ……っ」

 栗毛の女性——アンナが、下半身だけをむき出しにして責め立てられていた。一方の責め立てている金髪の男——ロメオは余裕がありげだ。どちゅどちゅと腰を打ちつけては、快楽に喘ぐアンナをからかっている。

 若い男女が一時の気分の盛り上がりで、一線を越えたにしては二人とも快楽に慣れ過ぎている。人目を忍んでまぐわっているのは、もう彼女らが何度もこの行為を重ねている証拠だろう。

「今日は中に出そうかな?」

「……ッだめよ……んァ……っやっあんんっあかちゃ……んできちゃ……やっあああっ」

「いいよ、僕の子を孕んで? そうしたら、早く結婚できるかもよ?」

 どちゅんっと一際強く腰を押しつけた刹那、竿が震えた。強すぎる刺激に、蜜壺がうねり、痙攣を始める。どくどくと白濁が流しこまれて、それを受け入れるかのように、アンナは絶頂を迎えた。

「もう……どうし、て……」

 は、と浅く息を吐きながら抗議の声を漏らす。最奥で吐き出された子種は、多すぎて受け止めきれなかったらしい。ロメオが肉棒を抜いた途端にどろりと割れ目からあふれ出した。

「今日はなんで外に出してくれなかったの?」

「アンナと結婚したいからだよ。ね、ここに僕の子ができたらさ、アンナも嬉しいでしょう?」

「……そんなことをしなくても、結婚なんてできるじゃない……」

 すり、と下腹を撫でられて、アンナは唇を尖らせながらも、ほんのりと頬を染めた。

「もっと早く結婚したい、ってこと」

 目を細めたロメオがアンナに愛おしげに口づけを落とす。それをアンナは受け入れて、舌が入りこんでくるのに、しっかりと応える。

「ん……ぅ……」

「ああ、アンナ、可愛い。早く孕んで欲しいから、今からもう一回しようかな?」

「だ、だめよ……」

 口ではそう言いながらも、顔はだめだと言っていない。

「ふふ、かわい」

 ロメオがアンナの胸元に手を伸ばした、そのときである。

 ドンッと扉が荒々しく打ち鳴らされる。ノックというには激しい音だが、それくらいの音でなければ、彼女らに伝わらないと思ったのだろう。

「おい、いい加減にしろ。日が暮れるぞ」

「あ……っご、ごめんなさい。今、出るわ……!」

 顔を羞恥で赤らめて、アンナは慌ててロメオの下から逃げ出し、身支度を整え始める。その耳元に、ロメオが唇を寄せた。

「今日も声大きかったけど……また・・外にジェレミオがいるの忘れてた?」

「もうっ! 意地悪言わないで!」

 小さく囁かれた言葉に怒って、アンナは憤然とベッドから抜け出し、小屋を出た。その扉を出てすぐのところに、長身の男が立っている。ロメオと同じ、金髪碧眼の男だ。

「ごめんなさい、ジェレミオ。いつもありがとう……」

「いや、大したことじゃない」

 ぶっきらぼうに答えた彼は、ロメオの顔立ちによく似ている。だが、優しげな印象のロメオに対し、男——ジェレミオは、不機嫌そうでいかめしい雰囲気だ。

「今日も見張りご苦労様、ジェレミオ」

「いや……」

 これにもジェレミオは短く答える。そうして小屋から出て、三人は暗くなりゆく森の中を並んで歩き始めた。

「兄さん。それより、しばらくここにはこれなくなるだろう。その話はしたのか?」

「え、そうなの?」

 首を傾げたアンナは、ロメオの顔を窺った。

「うん。……求婚状の準備をしているからね」

「……えっ?」

「そういうことだ」

 驚いた声をあげたアンナに、ジェレミオが引き継いで頷く。

「そう、なの……?」

 ぽおっと顔を火照らせたアンナは、黙りこんでただ歩みを進める。股には、先ほど満たされたばかりの子種がとろとろと今もこぼれてきている。

(なら……こんなことする必要なかったのに……ロメオったら我慢できなかったのかしら……)

 心の中で文句を吐きながらも、アンナの足取りは軽い。その心の中は、先ほど告げられたばかりの求婚状のことで弾むのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?

初恋だったお兄様から好きだと言われ失恋した私の出会いがあるまでの日

クロユキ
恋愛
隣に住む私より一つ年上のお兄さんは、優しくて肩まで伸ばした金色の髪の毛を結ぶその姿は王子様のようで私には初恋の人でもあった。 いつも学園が休みの日には、お茶をしてお喋りをして…勉強を教えてくれるお兄さんから好きだと言われて信じられない私は泣きながら喜んだ…でもその好きは恋人の好きではなかった…… 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新が不定期ですが、よろしくお願いします。

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました! 「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる

ラム猫
恋愛
 王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています ※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...