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元騎士は旧友の甘い執着に堕ちて
20.元騎士は旧友の甘い執着に堕ちて ※
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深く唇を吸われる。今まで蹂躙してくるだけだった熱い舌を、ジェイミーは初めて自分から絡め合わせる。先ほど胸を弄られていたせいで、身体の奥にはもう熱が灯っていた。
(きもち、い……)
感情を認めてしまえば、クリフォードとの口づけはそれだけで気持ちがいい。ちゅくちゅくと鳴る水音でさえも、初夜はあんなにいやだったのに、それが二人の間を繋ぐものだと思えば、酷く高揚した。
「抱くぞ。いいな?」
ナイトウエアのリボンに手をかけながらの問いかけに、ジェイミーは笑う。
「いやだと言っても聞かないくせに」
未だ目尻が乾かないままのジェイミーが言えば、クリフォードは目を細めて笑む。
「お前から求められたいんだよ」
熱の籠った声に、ジェイミーは息を呑む。
(私がずっと、クリフォードを拒み続けていたから……)
クリフォードが騎士の時代に気持ちを封じ込めていたのだって、ジェイミーが恋愛を嫌がっていたからだ。初夜こそ無理やりだったがそれ以降抱いてこなかったのも、ジェイミーを思ってのことだ。申し訳なくなる一方で、それでもジェイミーは確認しないではいられなかった。
「……クリフォード。もし、私が嫉妬に狂ったら」
「そんな暇がないくらい、愛してやるよ」
不敵に宣言する琥珀の瞳に、もうジェイミーは降参せざるをえない。
「うん……なら、たくさん……抱いてくれ」
「はは、急に素直になったな」
クリフォードは機嫌よくリボンを解いて、ジェイミーの胸を曝け出させる。話が長引いたせいで柔らかくなっていた胸の先端は、クリフォードの指で簡単に硬度を取り戻した。
「ん……ぁ。あ……」
鼻がかった喘ぎ声が自分の口から漏れるのは、まだ慣れない。クリフォードの指は的確にジェイミーをよがらせてくるのに、女として抱かれることへの恐怖をジェイミーは克服できていなかった。
(そうだ)
「んっふ……ぅ、あ、ま、待って……!」
「お前が抱いてくれって言ったんだろうが」
「そうじゃな……あんんっやっくりふぉ、あ、あ、吸ったら、だめ……!」
かぷ、と乳房に口が寄せられて、舌で尖りをこねられ、まるで母乳を吸うかのように弄ばれる。
「どうした? 何が違う」
からかうように言いながら、クリフォードはわざと音をたてて胸をしゃぶる。じゅくじゅくと音が鳴るたびに、お腹の奥に響いて、ジェイミーは口から嬌声が漏れるのと止められない。とっさにクリフォードの頭をおさえたが、彼の愛撫はやむ気配がなかった。
「ン……っわ、私がやるから!」
「んん?」
ジェイミーの叫びに、クリフォードの手がやっと止まった。
「クリフォードが言ったんだろう。お、男だって、その、女に愛撫を……される、って……。それに、わ、私だって男、なんだから……お前にシたい」
皆まで言う前にジェイミーの顔は真っ赤だ。男の乳首に対する愛撫がずいぶんと濃い情事であることを、ジェイミーはまだ気づいていないらしい。本当に愛撫をしたいのかと言えば、そういうわけではないが、責め立てられて喘ぎ声を発し続けるよりもずいぶん難易度が低いように感じられた。
「わかった」
くつくつと笑いながら組み敷いていた身体を解放して、クリフォードはベッドにあぐらをかいて座りなおすとナイトガウンの前をくつろげた。そこには初夜のときにも見た立派な上半身と、屹立した男根が現れる。すでに中を貫くには充分なくらいに怒張していたが、妻が奉仕すると言っているのだ。クリフォードはあえて拒みはしないだろう。
「ほら、やってみろ」
両腕を拡げてクリフォードが促すのに、ジェイミーは恐る恐る手を伸ばして、まずぶ厚い筋肉のついた胸板に手を添える。すりすりと撫でるものの、それ以上どうしていいかわからなくなった。
(愛撫って……)
クリフォードがジェイミーにしたように、乳首を指先でこすってみたが、クリフォードは余裕たっぷりの表情で彼女を見ているままだ。触ってやればすぐに尖りはする。だが、彼がしたように指先でつまんでやろうにも、ハリのある筋肉に引っ張られていて平らに近いのでどうにも指でつまめそうになかった。
ぎゅうっと眉間に皺を寄せたジェイミーはおずおずと顔を胸元に寄せて、舐めてみる。ちろちろと舌を這わせ、クリフォードの真似をして舌を尖らせて、乳首を捏ねる。指でつまむよりは刺激になりそうだった。
「……ふっ」
(今のは気持ち良かった……?)
小さく漏れた息に、ジェイミーは期待でぱっと顔をあげる。しかし、彼はくすぐったそうに笑っているだけだった。
「本当に愛撫ってこれで合ってるのか?」
むうっとしたジェイミーに耐えきれなくなったクリフォードは吹き出す。だが、その顔はいつものからかう調子じゃなく、心底ジェイミーを愛おしげで、ジェイミーは怒るに怒れない。
「俺は胸じゃ感じなくてな。下を触ってもらえると助かる」
「下……」
言われて目線を下ろせば、先ほどと同様に屹立したままの男根が目に入って、ジェイミーは
「あっ」と声をあげる。
「だめか?」
「だ、だめじゃない」
言下に返して、ジェイミーは胸に触れさせていた手をそのままするすると下げていき、つん、とクリフォードの男根に触れる。
「あつい……」
指先が触れた瞬間の熱に驚いて、ジェイミーは一瞬手をひっこめかけたが、おずおずと屈んで手に握りこむ。だが彼の肉棒は太すぎて、ジェイミーの華奢な手の平ではとうてい片手で握りきれず、両手で触れた。
(こんなに……熱くて、硬いものなのか)
そう考えてしまうのは、ジェイミーが騎士時代に一度自慰をしたことがないせいだった。生理現象として朝目覚めたときに股のものが硬くなっていたこともあったが、ジェイミーはそれを自分で慰めることはせず、時間が経過して自然に治まるのに任せていた。自慰が禁じられているわけではないが、そもそも色に溺れるのを恐れていたから、快楽を求めることはしてこなかったのだ。
だから、怒張した男根を昂らせるのも生まれて初めてだ。そして恐らく、この男根は前世のジェイミーのものよりずいぶんと大きい。
「もっと強く握ってさすってくれ」
「こう、か?」
「っああ、うまいな」
両手で握りこんだまま、手を上下させてしごく。先ほどの胸への愛撫と違って、クリフォードは快感を得ているらしい。彼の股の間に屈んだままクリフォードを見上げれば、琥珀の瞳が余裕なさげにジェイミーを見つめていて、心なしか息も荒い。それだけで彼女の身体も昂るように感じる。
(初夜のときは私を弄ぶのが理解できなかったが……なるほど、これは……楽しいかもしれない)
ぴくぴくと脈打つ男根をしごいているうちに、先端から透明な液が溢れてきた。なぜか反射的にそれを舐めとったジェイミーは顔をしかめる。
(苦い)
「……っ」
口を離そうとしたジェイミーの耳に、クリフォードが息を呑んだのが聞こえて、試しにさらに舌で液をすくいとった。そうすれば先ほどから硬かった男根が、より硬度を増す。
(これは気持ちがいいのか)
舌を尖らせて、穴を攻めながら舐める。しごく手を止めないままに頬張るように先端を口に含んでやれば、苦い先走りは次々と溢れて、それと同時にクリフォードの息も荒くなるようだった。
「っジェイミー」
顔の角度を変えては舐めしゃぶるジェイミーの姿に、クリフォードが声をあげる。彼女はその反応が楽しくて、雄の香りを口いっぱいに吸い込みながら責め立てた。夢中になりすぎて、彼女の腰がクリフォードに見せつけるようにゆらゆらといやらしく揺れているのに、ジェイミーは気づいていない。その尻が、クリフォードの手に捉えられた。
「んぅ……っ?」
柔らかな丘を両手で撫でたかと思えば、クリフォードはジェイミーのガウンの裾をナイトウエアごとするするとたくし上げて、彼女の尻を直接揉み始める。
「クリフォード、今は私が……ぁんっ」
割れ目のあたりをこすり合わせるように肉を揉まれたせいで、ジェイミーの手が止まる。口づけの時点ですでに潤っていたそこは、クリフォードのものを舐めているうちに、より蜜を垂らしてほんの少し擦りあわされた程度で、直接触られているわけでもないのに、ぬちゅぬちゅと音をたてた。もどかしい刺激にも関わらず、ずっと触れてなかった場所に突然与えられたせいで、響く音のいやらしさもあいまってジェイミーは声を抑えるのに必死になった。
「ほら、手が止まってる。俺を愛撫するんだろう?」
にちっにちっと音をたてられて羞恥をさらに煽りたてられる。柔らかな花弁が手で揺らされるたびに、割れ目がこすれて、その間にある快楽の芽がわずかに刺激された。そのせいで奥からは新たな密がさらに溢れて滑りをよくし、こするたびに鳴る水音を大きくする。
「や、ぁ、あ……っ、そん、なこと……されたら……ぁっやめ……んっふぁ……っ!?」
男根を握りこんだ姿勢のまま嬌声をあげるジェイミーの蜜壺に、にゅるりと指が侵入する。ジェイミーの声とは裏腹に、難なくクリフォードの指を受け入れた割れ目は、彼が中を探ってかきまわすのを許した。
「だ、め……あっああっ」
もはや嬌声をあげるばかりで、与えられる快楽にしか集中できないジェイミーは、女としてよがることに対する抵抗感を強制的に捨てさせられている。
「や、やだ……あっなか、なか、触るなぁ……ふ、ぁああ……っ」
「弄られるのがいやなら、もう挿れるか?」
「あ……ぅ?」
ちゅぽっと音をたてて指を抜かれ、唐突に快楽から解放されたジェイミーは間抜けな声を出す。クリフォードの股の間でうずくまって浅く呼吸をするジェイミーは、一瞬クリフォードが何を言ってるのか理解できなかった。その隙に、彼女の身体がころん、と転がされて仰向けに倒される。
「二度目だから、もっと解したほうがいいとは思うんだがな」
前髪をかきあげながら、クリフォードがジェイミーを見下ろす。その顔に、彼女は胸が落ち着かない。
「お前が触ったおかげでもう我慢がきかん。……いいか?」
ジェイミーのナイトウエアをたくしあげてから、クリフォードは彼女の太ももをつかんで足を開かせる。行為をやめるつもりのないであろう彼は、ジェイミーのとろとろに潤った入り口に男根をあてがった。だが、まだ挿入はしない。初夜が無理やりだったぶんだけ、今日はできうる限りジェイミーの許しを得ようとしているのだろう。
先までしごいていた彼の男根は、ピクピクと脈に合わせて揺れながら、そそり立っている。今から蜜壺にそれが納まるのかと思うと、初夜のときの快楽に沈められたあの感覚が蘇って、きゅうんと奥が切なくなった。だが、それと同時にジェイミーは今のこの体勢が、過去に垣間見た母の姿に重なって震える。さっきも言葉で納得したのに、ふとした拍子にまた不安になるのは、それだけジェイミーのトラウマの根が深いせいだろう。身体はクリフォードを求めているのに、心は怯えている。
「……まだ、怖い」
「嫉妬の話か?」
ジェイミーが小さく頷いたのを見た彼は、少し考えるような顔になった。ジェイミーにかけるべき言葉を探していたクリフォードは、すぐに思い付いたようだった。
「俺が結婚式で言った宣誓を覚えているか?」
『クリフォード・ウィルズはジェイミー・レノンを妻とし、病めるときも健やかなるときも、死してなお永遠の愛を捧げ、生涯を共にするとここに誓う』
問われた瞬間にセリフが蘇って、ジェイミーは苦笑した。
「あんなの忘れられるわけがないだろう」
「ならずっと覚えておけ」
上半身を起こしたままだったクリフォードは、身体をかがめて軽く口づけ、おでこをくっつけて笑う。
「あのときはお前と両想いになれるなんて思ってなかったがな。それでも俺は、ずっとお前に一生を捧げるつもりで誓った」
それは報われなくても想いを捧げるという覚悟なのだろう。
「だから、俺は結婚してなかったんだしな」
そしてすでに、彼は二十年以上も忘れられない人のために、一途に操を立て続けていたのだ。もっと言えば、その忘れられない人とは、ジェイミーである。彼女はそれについてはすっかり忘れていた。
「……クリフォード」
「まだ嫉妬しそうで怖いか?」
穏やかに尋ねる彼に、ジェイミーは首を横に振る。この期に及んで尻込みするジェイミーの中に、肉棒をねじこんで快楽を得るのは簡単だ。入る場所を求めて揺れている男根はきっと苦しいだろう。すぐにでもジェイミーと繋がって腰を振りたいだろうに、クリフォードは辛抱強く待ってくれているのだ。
(こいつを信じなくてどうするんだ)
両手を伸ばして、ジェイミーはクリフォードの首に腕を回して抱き締める。
(今から、クリフォードに抱かれる……あの夜みたいに)
想いの全てをジェイミーに刻みつけるように抱かれ、愛されるのだ。
「……来てくれ」
「ああ」
満足げに頷いたクリフォードは、ゆっくりと腰を落としてきた。だが、彼の肉棒は簡単にはジェイミーの中には入ることができなかった。初回よりもほぐしの足りない蜜壺は、充分に愛液を零してはいるもののクリフォードの太いものの侵入を拒むように入り口が固い。
「んぁっ」
すぐさまの挿入を諦めたのか、クリフォードは腰の動きを変え、入り口に肉棒をこすりつけるように前後して、肉の花弁を割って割れ目を押し開くように刺激する。ずる、ずる、とくりかえし割れ目の筋に沿って前後させているだけで、敏感な豆が肉棒の穂先に引っかかって、ジェイミーは声をあげて新しい愛液を溢れさせる。そうしてとろとろの密にまみれた肉棒を、クリフォードは再び入り口にあてがいなおした。
「力を抜けよ」
短く声をかけると、クリフォードは再び腰を落としはじめる。
「ん……ふ、ぅ……っ」
「痛いか?」
ぐぐっと穂先が入り口を割る。強い抵抗のある入り口に反して、そこを進んでしまえばあとはぬるん、と男根は中ほどまで入り込んだ。
(大きい……)
痛いかと聞かれれば、その答えは否だ。気づかわれているというそのクリフォードの気持ちを思えば、ジェイミーの中はねだるようにひくりと蠢いた。
「だい、じょうぶ……」
「何かあればすぐに言え」
痛みを感じていないのは彼女の中がうねっているのでクリフォードにも伝わっているだろう。にもかかわらず彼は、いちいちジェイミーに確認してくれる。
股の間に、クリフォードのものが入っている。初めてのときは裏切られた気持ちと痛みでいっぱいいっぱいだったが、熱い欲の塊が、ジェイミーを貫いてぴくぴくと中で揺れている。腰を止めているからこそ、彼が腰を振るのを我慢しているのが伝わってきてしまう。思えば、初めてのときだって、貫くのは無理やりだったが、その前にはずいぶんと解されたし、抽送もジェイミーの身体を気づかうような動きだった。あれでクリフォードが満たされていたのかと思うと、きっとそうではないのだろう。
股の異物は慣れない。まだ肉を割られる違和感のほうが強いが、ジェイミーはクリフォードの首に回した腕に力をこめる。
(クリフォードに、応えたい)
早く気持ちよくなって欲しい。その気持ちは、再びの蜜壺のうねりで、彼にも伝わったかもしれない。
「も、動いて……いい」
「ああ」
唇を軽くついばんで、クリフォードはゆすゆすと腰を揺らし始める。
「あ……ん……んっ」
根本まで入り切っていないその揺らしは、穏やかにジェイミーの快感を高めていく。中をさほど弄られていない蜜壺は熱く熟れてはいるが、狭いせいで、その少しの揺らしでも奥が強く叩かれた。最初は抑えめだった嬌声が、やがて大きくなっていく。
「あ、あ、んんっあ……っくりふぉー、ど……あっ、きもち、い……」
「っそう、か」
「ひゃん……っ!」
急に強く奥を突かれてジェイミーは声をあげる。初夜のときにはついぞ口走らなかった快楽を訴えるセリフを無意識に伝え、それがクリフォードを煽りたてたのだとは思いもよらないのだろう。
「あっあっふぁっはげ、し……い……!」
「……いやか?」
尋ねながらもクリフォードは腰の動きを速めている。納まりきっていなかった肉棒は、いつの間にかジェイミーの最奥を貫いて根本までしっかり挿入されていた。それを引き抜いては捻じ込んで、どちゅどちゅと音をたてながら何度もジェイミーの奥を激しく揺らす。
「あっあっちが、きもちい、あんっは……んんっもっと……くり、ふぉーども……ふぁっは、ぁああんんっ」
甘ったるいおねだりの声を吐いた途端に、ジェイミーは絶頂に上り詰める。ギチギチとクリフォードの肉棒を締めつけたが、抽送をくりかえす彼の腰は止まらない。
「ひゃ、や……あっんぁああ……っだめ、あああ、きもち、よすぎる……!」
「何よりだ」
なんでも言え、と言った割には快楽が強すぎるというジェイミーの訴えにはとりあわないで、クリフォードは彼女を責め続ける。それというのも、ジェイミーが『もっと』とねだったせいなのだから、致し方あるまい。それがクリフォードももっと気持ち良くなって欲しい、という意味だとしても、同じことだ。
「や……っば、か……やろ……あぁっだ、めぇ……っ」
だめだと言いながらも、蜜壺をうねらせてぎゅうぎゅうと肉棒を締め付けているジェイミーは激しい突き上げに耐えながら、もうクリフォードにしがみつくしかない。揺すぶられるたびにたぷたぷと揺れる胸が痛むのも気にならないくらいに奥を穿たれて、彼女は連続で快楽の頂点にのぼり続ける。
「……もっと緩めろ、って言っても無理だろうな……一旦、出すぞ」
「あ……っ? あ、くりふぉーど……あっあつい……!」
ばちゅんっと強く打ち付けられた途端に、クリフォードが熱を放つ。連続で痙攣している中に合わせて、びゅくんびゅくんと勢いよく子種が注ぎ込まれた。多すぎる白濁はジェイミーの小さな蜜壺に納まりきらず、秘部から溢れて股を伝う。
「は……あ……」
「……身体は辛くないか?」
ピストンを止めたクリフォードも一旦出したことで、さすがに少しは息があがっているのだろう。小さく息を吐きながらジェイミーの顔をうかがう。蜜壺への責めがやんだことでようやく長すぎた快楽の波が納まったジェイミーは、浅くくりかえしていた呼吸を、やっと深く息を吸った。
「はぁ……ふ……大丈夫、だ」
(終わった……のか)
かろうじてそう応えながら、ジェイミーはまだ荒い呼吸を整えるように息を吐く。短時間だったのに、最初から飛ばしたせいでずいぶんと長く感じられた。
しがみついていた腕の力をようやく緩めたが、まだ離れがたく感じる。至近距離にいるクリフォードは、そんな彼女の様子を余裕の表情で見守っているのがジェイミーはなんだが悔しい。激しく動いていたクリフォードのほうが疲れているはずなのに、それを感じさせない様子で彼は穏やかにジェイミーの頬を撫でて口づけた。
「ん……」
「……疲れたか?」
「少し」
火照った頬に当たるクリフォードの手も熱い。ジェイミーの目尻には涙がこぼれていたが、これは激情にかられたせいではなく、快楽に耐えかねて流れたものだ。
「ならまだ大丈夫だな」
「え? ぁっあ、なに……あぁっ」
にっと笑んだクリフォードの腰が、ぐりぐりと押し付けられてジェイミーの奥を抉って来る。
「お前、出したんじゃ……!」
欲を吐き出したばかりのはずの肉棒は、未だ劣情を催しているらしい。ジェイミーが気づいていなかっただけで、子種を吐き出したあともずっと太く硬いままだった。二回りも歳が上のクリフォードのほうが、ジェイミーよりも情事のあとに元気だなんて、これでは逆だろう。
(私だって身体を鍛えているのに……!)
それは慣れない快楽に振り回されているせいで余計に疲労が強いのだろうが、ジェイミーはそんなことに気づきもしないでむくれる。その彼女の蜜壺を、クリフォードの肉棒がさらにぐりぐりと押した。
「んぁ……っま、て……もうこれ以上は……!」
言いながらもぴくぴくと中を震わせる妻に微笑んで、クリフォードは一旦腰を止めてねだる。
「やっと両想いなんだ。今夜くらいゆっくりさせろ」
それは初夜にジェイミーを貫いたときと同じような言い草で、思わず彼女は笑ってしまう。あのときは絶望的に聞こえたセリフが今は胎に響くなんて、ずいぶんおかしな話だ。
(だけど、悪くない)
「仕方のないやつだな。……私は、お前をいつだってゆるしてしまうじゃないか」
正直に言えば、まだジェイミーは嫉妬にかられた女になるのが怖いし、この身体だって受け入れきれていない。きっと一朝一夕でどうにかなるものではないのだ。だが、どうしたってジェイミーは、クリフォードだけは求めて、彼の情欲を受け入れるのだろう。
(たぶん、それでいいんだ)
「そりゃ俺のセリフだろうが。ジェイミーがどんなに俺に酷いことをするやつでも、嫌いになれないんだからな」
そうして何十年もかけてクリフォードは執念の末に愛した者を腕の中に閉じ込めたのだ。
言葉を重ねる前に二人は笑いあって、どちらともなく唇を重ね合わせる。二度目の初夜とも言える今夜はまだまだ長くなりそうだ。
女として転生した元騎士は、こうして旧友の甘い執着に堕ちて、その腕に抱かれるのを受け入れたのだった。
(きもち、い……)
感情を認めてしまえば、クリフォードとの口づけはそれだけで気持ちがいい。ちゅくちゅくと鳴る水音でさえも、初夜はあんなにいやだったのに、それが二人の間を繋ぐものだと思えば、酷く高揚した。
「抱くぞ。いいな?」
ナイトウエアのリボンに手をかけながらの問いかけに、ジェイミーは笑う。
「いやだと言っても聞かないくせに」
未だ目尻が乾かないままのジェイミーが言えば、クリフォードは目を細めて笑む。
「お前から求められたいんだよ」
熱の籠った声に、ジェイミーは息を呑む。
(私がずっと、クリフォードを拒み続けていたから……)
クリフォードが騎士の時代に気持ちを封じ込めていたのだって、ジェイミーが恋愛を嫌がっていたからだ。初夜こそ無理やりだったがそれ以降抱いてこなかったのも、ジェイミーを思ってのことだ。申し訳なくなる一方で、それでもジェイミーは確認しないではいられなかった。
「……クリフォード。もし、私が嫉妬に狂ったら」
「そんな暇がないくらい、愛してやるよ」
不敵に宣言する琥珀の瞳に、もうジェイミーは降参せざるをえない。
「うん……なら、たくさん……抱いてくれ」
「はは、急に素直になったな」
クリフォードは機嫌よくリボンを解いて、ジェイミーの胸を曝け出させる。話が長引いたせいで柔らかくなっていた胸の先端は、クリフォードの指で簡単に硬度を取り戻した。
「ん……ぁ。あ……」
鼻がかった喘ぎ声が自分の口から漏れるのは、まだ慣れない。クリフォードの指は的確にジェイミーをよがらせてくるのに、女として抱かれることへの恐怖をジェイミーは克服できていなかった。
(そうだ)
「んっふ……ぅ、あ、ま、待って……!」
「お前が抱いてくれって言ったんだろうが」
「そうじゃな……あんんっやっくりふぉ、あ、あ、吸ったら、だめ……!」
かぷ、と乳房に口が寄せられて、舌で尖りをこねられ、まるで母乳を吸うかのように弄ばれる。
「どうした? 何が違う」
からかうように言いながら、クリフォードはわざと音をたてて胸をしゃぶる。じゅくじゅくと音が鳴るたびに、お腹の奥に響いて、ジェイミーは口から嬌声が漏れるのと止められない。とっさにクリフォードの頭をおさえたが、彼の愛撫はやむ気配がなかった。
「ン……っわ、私がやるから!」
「んん?」
ジェイミーの叫びに、クリフォードの手がやっと止まった。
「クリフォードが言ったんだろう。お、男だって、その、女に愛撫を……される、って……。それに、わ、私だって男、なんだから……お前にシたい」
皆まで言う前にジェイミーの顔は真っ赤だ。男の乳首に対する愛撫がずいぶんと濃い情事であることを、ジェイミーはまだ気づいていないらしい。本当に愛撫をしたいのかと言えば、そういうわけではないが、責め立てられて喘ぎ声を発し続けるよりもずいぶん難易度が低いように感じられた。
「わかった」
くつくつと笑いながら組み敷いていた身体を解放して、クリフォードはベッドにあぐらをかいて座りなおすとナイトガウンの前をくつろげた。そこには初夜のときにも見た立派な上半身と、屹立した男根が現れる。すでに中を貫くには充分なくらいに怒張していたが、妻が奉仕すると言っているのだ。クリフォードはあえて拒みはしないだろう。
「ほら、やってみろ」
両腕を拡げてクリフォードが促すのに、ジェイミーは恐る恐る手を伸ばして、まずぶ厚い筋肉のついた胸板に手を添える。すりすりと撫でるものの、それ以上どうしていいかわからなくなった。
(愛撫って……)
クリフォードがジェイミーにしたように、乳首を指先でこすってみたが、クリフォードは余裕たっぷりの表情で彼女を見ているままだ。触ってやればすぐに尖りはする。だが、彼がしたように指先でつまんでやろうにも、ハリのある筋肉に引っ張られていて平らに近いのでどうにも指でつまめそうになかった。
ぎゅうっと眉間に皺を寄せたジェイミーはおずおずと顔を胸元に寄せて、舐めてみる。ちろちろと舌を這わせ、クリフォードの真似をして舌を尖らせて、乳首を捏ねる。指でつまむよりは刺激になりそうだった。
「……ふっ」
(今のは気持ち良かった……?)
小さく漏れた息に、ジェイミーは期待でぱっと顔をあげる。しかし、彼はくすぐったそうに笑っているだけだった。
「本当に愛撫ってこれで合ってるのか?」
むうっとしたジェイミーに耐えきれなくなったクリフォードは吹き出す。だが、その顔はいつものからかう調子じゃなく、心底ジェイミーを愛おしげで、ジェイミーは怒るに怒れない。
「俺は胸じゃ感じなくてな。下を触ってもらえると助かる」
「下……」
言われて目線を下ろせば、先ほどと同様に屹立したままの男根が目に入って、ジェイミーは
「あっ」と声をあげる。
「だめか?」
「だ、だめじゃない」
言下に返して、ジェイミーは胸に触れさせていた手をそのままするすると下げていき、つん、とクリフォードの男根に触れる。
「あつい……」
指先が触れた瞬間の熱に驚いて、ジェイミーは一瞬手をひっこめかけたが、おずおずと屈んで手に握りこむ。だが彼の肉棒は太すぎて、ジェイミーの華奢な手の平ではとうてい片手で握りきれず、両手で触れた。
(こんなに……熱くて、硬いものなのか)
そう考えてしまうのは、ジェイミーが騎士時代に一度自慰をしたことがないせいだった。生理現象として朝目覚めたときに股のものが硬くなっていたこともあったが、ジェイミーはそれを自分で慰めることはせず、時間が経過して自然に治まるのに任せていた。自慰が禁じられているわけではないが、そもそも色に溺れるのを恐れていたから、快楽を求めることはしてこなかったのだ。
だから、怒張した男根を昂らせるのも生まれて初めてだ。そして恐らく、この男根は前世のジェイミーのものよりずいぶんと大きい。
「もっと強く握ってさすってくれ」
「こう、か?」
「っああ、うまいな」
両手で握りこんだまま、手を上下させてしごく。先ほどの胸への愛撫と違って、クリフォードは快感を得ているらしい。彼の股の間に屈んだままクリフォードを見上げれば、琥珀の瞳が余裕なさげにジェイミーを見つめていて、心なしか息も荒い。それだけで彼女の身体も昂るように感じる。
(初夜のときは私を弄ぶのが理解できなかったが……なるほど、これは……楽しいかもしれない)
ぴくぴくと脈打つ男根をしごいているうちに、先端から透明な液が溢れてきた。なぜか反射的にそれを舐めとったジェイミーは顔をしかめる。
(苦い)
「……っ」
口を離そうとしたジェイミーの耳に、クリフォードが息を呑んだのが聞こえて、試しにさらに舌で液をすくいとった。そうすれば先ほどから硬かった男根が、より硬度を増す。
(これは気持ちがいいのか)
舌を尖らせて、穴を攻めながら舐める。しごく手を止めないままに頬張るように先端を口に含んでやれば、苦い先走りは次々と溢れて、それと同時にクリフォードの息も荒くなるようだった。
「っジェイミー」
顔の角度を変えては舐めしゃぶるジェイミーの姿に、クリフォードが声をあげる。彼女はその反応が楽しくて、雄の香りを口いっぱいに吸い込みながら責め立てた。夢中になりすぎて、彼女の腰がクリフォードに見せつけるようにゆらゆらといやらしく揺れているのに、ジェイミーは気づいていない。その尻が、クリフォードの手に捉えられた。
「んぅ……っ?」
柔らかな丘を両手で撫でたかと思えば、クリフォードはジェイミーのガウンの裾をナイトウエアごとするするとたくし上げて、彼女の尻を直接揉み始める。
「クリフォード、今は私が……ぁんっ」
割れ目のあたりをこすり合わせるように肉を揉まれたせいで、ジェイミーの手が止まる。口づけの時点ですでに潤っていたそこは、クリフォードのものを舐めているうちに、より蜜を垂らしてほんの少し擦りあわされた程度で、直接触られているわけでもないのに、ぬちゅぬちゅと音をたてた。もどかしい刺激にも関わらず、ずっと触れてなかった場所に突然与えられたせいで、響く音のいやらしさもあいまってジェイミーは声を抑えるのに必死になった。
「ほら、手が止まってる。俺を愛撫するんだろう?」
にちっにちっと音をたてられて羞恥をさらに煽りたてられる。柔らかな花弁が手で揺らされるたびに、割れ目がこすれて、その間にある快楽の芽がわずかに刺激された。そのせいで奥からは新たな密がさらに溢れて滑りをよくし、こするたびに鳴る水音を大きくする。
「や、ぁ、あ……っ、そん、なこと……されたら……ぁっやめ……んっふぁ……っ!?」
男根を握りこんだ姿勢のまま嬌声をあげるジェイミーの蜜壺に、にゅるりと指が侵入する。ジェイミーの声とは裏腹に、難なくクリフォードの指を受け入れた割れ目は、彼が中を探ってかきまわすのを許した。
「だ、め……あっああっ」
もはや嬌声をあげるばかりで、与えられる快楽にしか集中できないジェイミーは、女としてよがることに対する抵抗感を強制的に捨てさせられている。
「や、やだ……あっなか、なか、触るなぁ……ふ、ぁああ……っ」
「弄られるのがいやなら、もう挿れるか?」
「あ……ぅ?」
ちゅぽっと音をたてて指を抜かれ、唐突に快楽から解放されたジェイミーは間抜けな声を出す。クリフォードの股の間でうずくまって浅く呼吸をするジェイミーは、一瞬クリフォードが何を言ってるのか理解できなかった。その隙に、彼女の身体がころん、と転がされて仰向けに倒される。
「二度目だから、もっと解したほうがいいとは思うんだがな」
前髪をかきあげながら、クリフォードがジェイミーを見下ろす。その顔に、彼女は胸が落ち着かない。
「お前が触ったおかげでもう我慢がきかん。……いいか?」
ジェイミーのナイトウエアをたくしあげてから、クリフォードは彼女の太ももをつかんで足を開かせる。行為をやめるつもりのないであろう彼は、ジェイミーのとろとろに潤った入り口に男根をあてがった。だが、まだ挿入はしない。初夜が無理やりだったぶんだけ、今日はできうる限りジェイミーの許しを得ようとしているのだろう。
先までしごいていた彼の男根は、ピクピクと脈に合わせて揺れながら、そそり立っている。今から蜜壺にそれが納まるのかと思うと、初夜のときの快楽に沈められたあの感覚が蘇って、きゅうんと奥が切なくなった。だが、それと同時にジェイミーは今のこの体勢が、過去に垣間見た母の姿に重なって震える。さっきも言葉で納得したのに、ふとした拍子にまた不安になるのは、それだけジェイミーのトラウマの根が深いせいだろう。身体はクリフォードを求めているのに、心は怯えている。
「……まだ、怖い」
「嫉妬の話か?」
ジェイミーが小さく頷いたのを見た彼は、少し考えるような顔になった。ジェイミーにかけるべき言葉を探していたクリフォードは、すぐに思い付いたようだった。
「俺が結婚式で言った宣誓を覚えているか?」
『クリフォード・ウィルズはジェイミー・レノンを妻とし、病めるときも健やかなるときも、死してなお永遠の愛を捧げ、生涯を共にするとここに誓う』
問われた瞬間にセリフが蘇って、ジェイミーは苦笑した。
「あんなの忘れられるわけがないだろう」
「ならずっと覚えておけ」
上半身を起こしたままだったクリフォードは、身体をかがめて軽く口づけ、おでこをくっつけて笑う。
「あのときはお前と両想いになれるなんて思ってなかったがな。それでも俺は、ずっとお前に一生を捧げるつもりで誓った」
それは報われなくても想いを捧げるという覚悟なのだろう。
「だから、俺は結婚してなかったんだしな」
そしてすでに、彼は二十年以上も忘れられない人のために、一途に操を立て続けていたのだ。もっと言えば、その忘れられない人とは、ジェイミーである。彼女はそれについてはすっかり忘れていた。
「……クリフォード」
「まだ嫉妬しそうで怖いか?」
穏やかに尋ねる彼に、ジェイミーは首を横に振る。この期に及んで尻込みするジェイミーの中に、肉棒をねじこんで快楽を得るのは簡単だ。入る場所を求めて揺れている男根はきっと苦しいだろう。すぐにでもジェイミーと繋がって腰を振りたいだろうに、クリフォードは辛抱強く待ってくれているのだ。
(こいつを信じなくてどうするんだ)
両手を伸ばして、ジェイミーはクリフォードの首に腕を回して抱き締める。
(今から、クリフォードに抱かれる……あの夜みたいに)
想いの全てをジェイミーに刻みつけるように抱かれ、愛されるのだ。
「……来てくれ」
「ああ」
満足げに頷いたクリフォードは、ゆっくりと腰を落としてきた。だが、彼の肉棒は簡単にはジェイミーの中には入ることができなかった。初回よりもほぐしの足りない蜜壺は、充分に愛液を零してはいるもののクリフォードの太いものの侵入を拒むように入り口が固い。
「んぁっ」
すぐさまの挿入を諦めたのか、クリフォードは腰の動きを変え、入り口に肉棒をこすりつけるように前後して、肉の花弁を割って割れ目を押し開くように刺激する。ずる、ずる、とくりかえし割れ目の筋に沿って前後させているだけで、敏感な豆が肉棒の穂先に引っかかって、ジェイミーは声をあげて新しい愛液を溢れさせる。そうしてとろとろの密にまみれた肉棒を、クリフォードは再び入り口にあてがいなおした。
「力を抜けよ」
短く声をかけると、クリフォードは再び腰を落としはじめる。
「ん……ふ、ぅ……っ」
「痛いか?」
ぐぐっと穂先が入り口を割る。強い抵抗のある入り口に反して、そこを進んでしまえばあとはぬるん、と男根は中ほどまで入り込んだ。
(大きい……)
痛いかと聞かれれば、その答えは否だ。気づかわれているというそのクリフォードの気持ちを思えば、ジェイミーの中はねだるようにひくりと蠢いた。
「だい、じょうぶ……」
「何かあればすぐに言え」
痛みを感じていないのは彼女の中がうねっているのでクリフォードにも伝わっているだろう。にもかかわらず彼は、いちいちジェイミーに確認してくれる。
股の間に、クリフォードのものが入っている。初めてのときは裏切られた気持ちと痛みでいっぱいいっぱいだったが、熱い欲の塊が、ジェイミーを貫いてぴくぴくと中で揺れている。腰を止めているからこそ、彼が腰を振るのを我慢しているのが伝わってきてしまう。思えば、初めてのときだって、貫くのは無理やりだったが、その前にはずいぶんと解されたし、抽送もジェイミーの身体を気づかうような動きだった。あれでクリフォードが満たされていたのかと思うと、きっとそうではないのだろう。
股の異物は慣れない。まだ肉を割られる違和感のほうが強いが、ジェイミーはクリフォードの首に回した腕に力をこめる。
(クリフォードに、応えたい)
早く気持ちよくなって欲しい。その気持ちは、再びの蜜壺のうねりで、彼にも伝わったかもしれない。
「も、動いて……いい」
「ああ」
唇を軽くついばんで、クリフォードはゆすゆすと腰を揺らし始める。
「あ……ん……んっ」
根本まで入り切っていないその揺らしは、穏やかにジェイミーの快感を高めていく。中をさほど弄られていない蜜壺は熱く熟れてはいるが、狭いせいで、その少しの揺らしでも奥が強く叩かれた。最初は抑えめだった嬌声が、やがて大きくなっていく。
「あ、あ、んんっあ……っくりふぉー、ど……あっ、きもち、い……」
「っそう、か」
「ひゃん……っ!」
急に強く奥を突かれてジェイミーは声をあげる。初夜のときにはついぞ口走らなかった快楽を訴えるセリフを無意識に伝え、それがクリフォードを煽りたてたのだとは思いもよらないのだろう。
「あっあっふぁっはげ、し……い……!」
「……いやか?」
尋ねながらもクリフォードは腰の動きを速めている。納まりきっていなかった肉棒は、いつの間にかジェイミーの最奥を貫いて根本までしっかり挿入されていた。それを引き抜いては捻じ込んで、どちゅどちゅと音をたてながら何度もジェイミーの奥を激しく揺らす。
「あっあっちが、きもちい、あんっは……んんっもっと……くり、ふぉーども……ふぁっは、ぁああんんっ」
甘ったるいおねだりの声を吐いた途端に、ジェイミーは絶頂に上り詰める。ギチギチとクリフォードの肉棒を締めつけたが、抽送をくりかえす彼の腰は止まらない。
「ひゃ、や……あっんぁああ……っだめ、あああ、きもち、よすぎる……!」
「何よりだ」
なんでも言え、と言った割には快楽が強すぎるというジェイミーの訴えにはとりあわないで、クリフォードは彼女を責め続ける。それというのも、ジェイミーが『もっと』とねだったせいなのだから、致し方あるまい。それがクリフォードももっと気持ち良くなって欲しい、という意味だとしても、同じことだ。
「や……っば、か……やろ……あぁっだ、めぇ……っ」
だめだと言いながらも、蜜壺をうねらせてぎゅうぎゅうと肉棒を締め付けているジェイミーは激しい突き上げに耐えながら、もうクリフォードにしがみつくしかない。揺すぶられるたびにたぷたぷと揺れる胸が痛むのも気にならないくらいに奥を穿たれて、彼女は連続で快楽の頂点にのぼり続ける。
「……もっと緩めろ、って言っても無理だろうな……一旦、出すぞ」
「あ……っ? あ、くりふぉーど……あっあつい……!」
ばちゅんっと強く打ち付けられた途端に、クリフォードが熱を放つ。連続で痙攣している中に合わせて、びゅくんびゅくんと勢いよく子種が注ぎ込まれた。多すぎる白濁はジェイミーの小さな蜜壺に納まりきらず、秘部から溢れて股を伝う。
「は……あ……」
「……身体は辛くないか?」
ピストンを止めたクリフォードも一旦出したことで、さすがに少しは息があがっているのだろう。小さく息を吐きながらジェイミーの顔をうかがう。蜜壺への責めがやんだことでようやく長すぎた快楽の波が納まったジェイミーは、浅くくりかえしていた呼吸を、やっと深く息を吸った。
「はぁ……ふ……大丈夫、だ」
(終わった……のか)
かろうじてそう応えながら、ジェイミーはまだ荒い呼吸を整えるように息を吐く。短時間だったのに、最初から飛ばしたせいでずいぶんと長く感じられた。
しがみついていた腕の力をようやく緩めたが、まだ離れがたく感じる。至近距離にいるクリフォードは、そんな彼女の様子を余裕の表情で見守っているのがジェイミーはなんだが悔しい。激しく動いていたクリフォードのほうが疲れているはずなのに、それを感じさせない様子で彼は穏やかにジェイミーの頬を撫でて口づけた。
「ん……」
「……疲れたか?」
「少し」
火照った頬に当たるクリフォードの手も熱い。ジェイミーの目尻には涙がこぼれていたが、これは激情にかられたせいではなく、快楽に耐えかねて流れたものだ。
「ならまだ大丈夫だな」
「え? ぁっあ、なに……あぁっ」
にっと笑んだクリフォードの腰が、ぐりぐりと押し付けられてジェイミーの奥を抉って来る。
「お前、出したんじゃ……!」
欲を吐き出したばかりのはずの肉棒は、未だ劣情を催しているらしい。ジェイミーが気づいていなかっただけで、子種を吐き出したあともずっと太く硬いままだった。二回りも歳が上のクリフォードのほうが、ジェイミーよりも情事のあとに元気だなんて、これでは逆だろう。
(私だって身体を鍛えているのに……!)
それは慣れない快楽に振り回されているせいで余計に疲労が強いのだろうが、ジェイミーはそんなことに気づきもしないでむくれる。その彼女の蜜壺を、クリフォードの肉棒がさらにぐりぐりと押した。
「んぁ……っま、て……もうこれ以上は……!」
言いながらもぴくぴくと中を震わせる妻に微笑んで、クリフォードは一旦腰を止めてねだる。
「やっと両想いなんだ。今夜くらいゆっくりさせろ」
それは初夜にジェイミーを貫いたときと同じような言い草で、思わず彼女は笑ってしまう。あのときは絶望的に聞こえたセリフが今は胎に響くなんて、ずいぶんおかしな話だ。
(だけど、悪くない)
「仕方のないやつだな。……私は、お前をいつだってゆるしてしまうじゃないか」
正直に言えば、まだジェイミーは嫉妬にかられた女になるのが怖いし、この身体だって受け入れきれていない。きっと一朝一夕でどうにかなるものではないのだ。だが、どうしたってジェイミーは、クリフォードだけは求めて、彼の情欲を受け入れるのだろう。
(たぶん、それでいいんだ)
「そりゃ俺のセリフだろうが。ジェイミーがどんなに俺に酷いことをするやつでも、嫌いになれないんだからな」
そうして何十年もかけてクリフォードは執念の末に愛した者を腕の中に閉じ込めたのだ。
言葉を重ねる前に二人は笑いあって、どちらともなく唇を重ね合わせる。二度目の初夜とも言える今夜はまだまだ長くなりそうだ。
女として転生した元騎士は、こうして旧友の甘い執着に堕ちて、その腕に抱かれるのを受け入れたのだった。
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