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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(新婚編)
六話『新婚旅行〜緊急招集〜』
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朝ご飯を食べながら、今日の計画を考える。
「午後は写真を取りに行かねば」
「はい。その後は、またその時に」
そう、まだ一日。
今日一日は、一緒の筈だった。
「時東さま」
「はい?」
女将が部屋に来た。
「すみません、たった今ーーー海軍の方が」
「!」
顔が、笑顔でなくなる。
義孝が愛する夫から『海神の化身』、戦艦疾風の艦長になる。
「花さん」
戻った義孝は、面目無さそうに眉を下げていた。
「はい」
嫌な、予感はよく当たる。
「すみません、戻ることになりました」
「・・・・はい」
涙は我慢した。
「仕方ないです、仕事ですから」
笑顔、だったよね?
誰に言うでもなく、花はため息を吐いた。
「仕方、ないよね」
ぐす、と鼻が鳴る。
「仕事、だも?」
淋しいよ
「ないちゃ、駄目、ないちゃ」
えぐっ、と一度もれた嗚咽は引いてはくれない。
「義孝さ」
え?
後ろから、腕が伸びて抱き寄せられる。
「一度しか、言いませんから聞いて下さい。次は十一月十五日あたりになります」
「・・・・」
「すみません」
腕が離れる。
「それだけの、為に。帰ったの?」
泣き笑いになる。
「いってらっしゃい」
しゃくりあげながら、花は叫んだ。
「また、泣かせてしまった」
写真を受け取りに行く約束も、果たせなかった。
「はあ、なんで海軍を選んだんだ」
黒光りの軍艦が並ぶ横須賀鎮守府。今日ほど、自分の職業を恨めしく思った日はない。
ーーーー否、これからたぶん。
「数え切れぬほど、あるんだろうな」
ーーー淋しいよ。
引き返して聞こえたのは、花の嗚咽混じりの呟き。
ーーーないちゃ、駄目、ないちゃ
必死に、涙を止めようとしていた。
ーーー夕べは、一緒だった。
もし、自分が海に散ったら。
花は、どうするだろうか?
「おかえりなさい」
「ああ」
操舵室に戻る義孝に、憂いの色は微塵もない。ただ、眼の前の多国籍の軍艦を、鋭い眼差しで見つめる。
『こちら・・・』
流暢な英語が敵艦に響く。
「昨日は、一緒にいられたもん。満足だわ、楽しかったもん」
美味しいご飯、広い湯船。
それからーーーーー。
「楽しもう。義孝さんがとってくれた宿だもん。いっぱい、楽しもう」
鞄を手に、部屋を出る。
「まずは、写真館に行かなきゃ。それから、土産物見て。あ、ラウンジでケーキ食べよかな」
ショーケースのフルーツタルト、クリームいっぱいの苺のショートケーキ。
「ふふ、義孝さんになんて言い訳しようかな?」
アップルパイも捨てがたいし。
「あ、また、やってみようかな?『ダメ?』って」
小首を傾げて、振り返りざまに。
ーーーダメ?
「なんちゃ・・・」
花が固まる。
そこには、康介が立っていた。
「花ちゃん」
「兄さま?」
「なんで、旦那は」
「えと、緊急招集」
同じ海軍だから、大丈夫だと。
花は思った。
(・・・あれ?なら、なんで兄さまは陸にいるの)
「緊急招集?なにそれ」
はっ、と康介が笑う。
「いや、だから」
不味い、軍事機密だ。
花は血の気が失せる。
「ね、花ちゃん。君は旦那様とうまくやっているの?」
「っ」
康介が近付いてくる。
「時東さんが、今、どこにいるか。知っているの」
✣✣✣✣✣✣
「ケーキ、二つ。食べちゃっ」
涙が流れ落ちる。
「なんて、言い訳しよ」
ぐす、涙が止まらない。
味が、分からない。
「義孝さんが、そんな」
嘘だよね?
花は空を仰いだ。
✣✣✣✣✣
「なんとか、なりましたね」
「ああ」
やれやれ、と椅子に座る。
ことは起きずに済んだ。
「・・・」
「艦長?」
「明日の午後には戻る」
ーーーあ、行っちゃった。
「瀕死ッスね」
「ああ」
くくっ、と杉田中佐をはじめ、全員が笑った。
✣✣✣✣ 深夜〇時 ✣✣✣✣
「あ、時東様」
「すみません、夜分に」
「いえ、おかえりなさいませ」
番頭に断り、部屋に向かう。
「今のは、時東様?」
「はい」
「睦まじいわね」
「・・・義孝さん、違うよね」
涙声で、花が喋る。
「違う、よね」
ぐす、と花が泣いている。
「花さん?」
「他に、いるの?私以外に、深い仲の」
えぐっ、としゃくりあげる。
甘い果実酒の香り。
「義孝さん、私は義孝さんだけ」
えぐっ、えぐっ。
「捨てないで、生きてけないよ」
ーーーー捨てませんよ。
「え?」
「ただいま、帰りました」
抱き寄せると、花が泣き笑いになる。
「えぐっ、違う人に会いに・・行っちゃったの?」
「だれが、そんなことを」
「だって、海軍のえぐっ」
わあああん!
「兄さまが、言ったの。義孝さんは芸者と楽しんでるって!」
「誰ですか、兄さまって」
「え」
身体を引き離し、義孝が訊ねた。
「花さん?」
「え、えと、えとっ」
酔いが、一気に醒める。
「えと?」
「花さん」
にっこり、義孝が笑う。
「話すまで、寝させませんよ」
(私は、藤岡康介さんについて、洗いざらいを話した)
「・・・て、言うわけで」
「なるほど?」
「あの、浮気とかじゃ」
「ええ、わかっています。ですが、まだ・・私の愛情が足りないみたいですね」
足りてます。
「もう一度、教えましょうか。今夜」
義孝が服を脱ぎ始める。
「い、や、その」
「花さん?」
「よろしく、お手、やわらかに?」
「それは、花さん次第です」
「午後は写真を取りに行かねば」
「はい。その後は、またその時に」
そう、まだ一日。
今日一日は、一緒の筈だった。
「時東さま」
「はい?」
女将が部屋に来た。
「すみません、たった今ーーー海軍の方が」
「!」
顔が、笑顔でなくなる。
義孝が愛する夫から『海神の化身』、戦艦疾風の艦長になる。
「花さん」
戻った義孝は、面目無さそうに眉を下げていた。
「はい」
嫌な、予感はよく当たる。
「すみません、戻ることになりました」
「・・・・はい」
涙は我慢した。
「仕方ないです、仕事ですから」
笑顔、だったよね?
誰に言うでもなく、花はため息を吐いた。
「仕方、ないよね」
ぐす、と鼻が鳴る。
「仕事、だも?」
淋しいよ
「ないちゃ、駄目、ないちゃ」
えぐっ、と一度もれた嗚咽は引いてはくれない。
「義孝さ」
え?
後ろから、腕が伸びて抱き寄せられる。
「一度しか、言いませんから聞いて下さい。次は十一月十五日あたりになります」
「・・・・」
「すみません」
腕が離れる。
「それだけの、為に。帰ったの?」
泣き笑いになる。
「いってらっしゃい」
しゃくりあげながら、花は叫んだ。
「また、泣かせてしまった」
写真を受け取りに行く約束も、果たせなかった。
「はあ、なんで海軍を選んだんだ」
黒光りの軍艦が並ぶ横須賀鎮守府。今日ほど、自分の職業を恨めしく思った日はない。
ーーーー否、これからたぶん。
「数え切れぬほど、あるんだろうな」
ーーー淋しいよ。
引き返して聞こえたのは、花の嗚咽混じりの呟き。
ーーーないちゃ、駄目、ないちゃ
必死に、涙を止めようとしていた。
ーーー夕べは、一緒だった。
もし、自分が海に散ったら。
花は、どうするだろうか?
「おかえりなさい」
「ああ」
操舵室に戻る義孝に、憂いの色は微塵もない。ただ、眼の前の多国籍の軍艦を、鋭い眼差しで見つめる。
『こちら・・・』
流暢な英語が敵艦に響く。
「昨日は、一緒にいられたもん。満足だわ、楽しかったもん」
美味しいご飯、広い湯船。
それからーーーーー。
「楽しもう。義孝さんがとってくれた宿だもん。いっぱい、楽しもう」
鞄を手に、部屋を出る。
「まずは、写真館に行かなきゃ。それから、土産物見て。あ、ラウンジでケーキ食べよかな」
ショーケースのフルーツタルト、クリームいっぱいの苺のショートケーキ。
「ふふ、義孝さんになんて言い訳しようかな?」
アップルパイも捨てがたいし。
「あ、また、やってみようかな?『ダメ?』って」
小首を傾げて、振り返りざまに。
ーーーダメ?
「なんちゃ・・・」
花が固まる。
そこには、康介が立っていた。
「花ちゃん」
「兄さま?」
「なんで、旦那は」
「えと、緊急招集」
同じ海軍だから、大丈夫だと。
花は思った。
(・・・あれ?なら、なんで兄さまは陸にいるの)
「緊急招集?なにそれ」
はっ、と康介が笑う。
「いや、だから」
不味い、軍事機密だ。
花は血の気が失せる。
「ね、花ちゃん。君は旦那様とうまくやっているの?」
「っ」
康介が近付いてくる。
「時東さんが、今、どこにいるか。知っているの」
✣✣✣✣✣✣
「ケーキ、二つ。食べちゃっ」
涙が流れ落ちる。
「なんて、言い訳しよ」
ぐす、涙が止まらない。
味が、分からない。
「義孝さんが、そんな」
嘘だよね?
花は空を仰いだ。
✣✣✣✣✣
「なんとか、なりましたね」
「ああ」
やれやれ、と椅子に座る。
ことは起きずに済んだ。
「・・・」
「艦長?」
「明日の午後には戻る」
ーーーあ、行っちゃった。
「瀕死ッスね」
「ああ」
くくっ、と杉田中佐をはじめ、全員が笑った。
✣✣✣✣ 深夜〇時 ✣✣✣✣
「あ、時東様」
「すみません、夜分に」
「いえ、おかえりなさいませ」
番頭に断り、部屋に向かう。
「今のは、時東様?」
「はい」
「睦まじいわね」
「・・・義孝さん、違うよね」
涙声で、花が喋る。
「違う、よね」
ぐす、と花が泣いている。
「花さん?」
「他に、いるの?私以外に、深い仲の」
えぐっ、としゃくりあげる。
甘い果実酒の香り。
「義孝さん、私は義孝さんだけ」
えぐっ、えぐっ。
「捨てないで、生きてけないよ」
ーーーー捨てませんよ。
「え?」
「ただいま、帰りました」
抱き寄せると、花が泣き笑いになる。
「えぐっ、違う人に会いに・・行っちゃったの?」
「だれが、そんなことを」
「だって、海軍のえぐっ」
わあああん!
「兄さまが、言ったの。義孝さんは芸者と楽しんでるって!」
「誰ですか、兄さまって」
「え」
身体を引き離し、義孝が訊ねた。
「花さん?」
「え、えと、えとっ」
酔いが、一気に醒める。
「えと?」
「花さん」
にっこり、義孝が笑う。
「話すまで、寝させませんよ」
(私は、藤岡康介さんについて、洗いざらいを話した)
「・・・て、言うわけで」
「なるほど?」
「あの、浮気とかじゃ」
「ええ、わかっています。ですが、まだ・・私の愛情が足りないみたいですね」
足りてます。
「もう一度、教えましょうか。今夜」
義孝が服を脱ぎ始める。
「い、や、その」
「花さん?」
「よろしく、お手、やわらかに?」
「それは、花さん次第です」
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