身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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回想・身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

六話『愛しい人へ』

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「時東様、お夕食はどうされますか?」
 ラウンジからの帰り、仲居が訊ねる。
「そうですね、一人分を部屋に」
「畏まりました。お酒はいかがですか?美味しい苺酒がありまして、女性に大変人気です」
「苺」
 甘いの、大好き。

「おいひぃ」
 ちびちびと、果実酒を楽しむ。

「あ、時東様。お戻りですか?」
「すみません、夜中に」
「いえ、ありがとうございます。軍人の方々には、感謝しております」
 
   ✣✣✣深夜0時✣✣✣

 ・・・何人、いるの?
 淋しい呟きがした。
「花さん?」
 ひっく、としゃくりあげる。

 ーーー他に、何人いるの?
 酔えば、また思い出す。
 不安がぶり返した。

「捨てないで?私、生きていけない」
 涙が流れ落ちる。

「花さん、まだ起きて?」
「あ」
 花が振り返る。
「おかえり・・なひゃい」
 ひっく、としゃくりあげる。
「飲んだ・・んですか」
「大丈夫、酔ってまふぇん」
 きゃはは、と笑う。

(涙の筋がある)

「お仕事、終わりですかぁ」
「ええ。すみません、淋しくしましたね」
「あれぇ?白粉の匂い、しにゃい?」
「白粉?」

 はた、と義孝は花を引き離す。
「白粉とは、何ですか?」
「え?」
 花はビクッとする。
「花さん!」
「えとっ、兄さまが・・・」
「兄さま?」
 花には、兄弟はいないはず。
「花さん?」
 にっこり、優しく笑う。

「それで?」
「藤岡康介さんは、家の近所で」
 酔は覚めた。
「えとっ、義孝さんは芸者と愉しんでるから」
「なるほど」
 膝に抱かれ、ふるふると震える。
「あの、怒らないで。浮気とかじゃ」
「分かっています、花さんは誠実ですから。しかし、哀しいですねぇ?」
「え」
 花は紅くなる。
「あれだけ、昨夜は」
「あ、言わないで」
「まだ、足りませんか?」
 ふるふる、首を振る。
「どうやら、もう一度教える必要がありますね?」
「や」
 上着を脱ぎ、シャツのボタンを外し始める。

「あ・・・、優しくしてください」
 花は観念する。
「さあ?それは、花さん次第ですね」

      ✣✣✣✣

「花さん」
 翌朝、着替える義孝の背中に、花が抱きつく。
「着替え、出来ません」
「はい」
 ふるふる、震えながら着替えに向かう。昨日の招集がなければ、花は泣かなかった。

「これは?」
 昨晩、花は義孝に写真立てを渡した。
「昨日、誕生日でしたよね?」
「作ってくれたんですか」
「海のガラスと、桜貝です」
 義孝が項垂れた。
「参ったな、返せるものが」
「義孝さんは、たくさん下さいました。優しさ、愛情、他にも」
「・・・」

 だが、花の愛情には敵わない。

「ありがとうございます。大事に飾ります」
「はい」

 義孝の部屋に、一つ変わったこと。それは一枚の写真。
「どうしていますか?」
 写真に笑いかける。

「私は、元気です」
 陸は見えないけれど。
 海は見えないけれど。

 この青い空は、いつも、愛しい人に繋がるから。

「私は、元気です!」
 二人が笑った。
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