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(R18)花の幸せレシピ〜身代わりの花嫁は25歳年上のイケオジ海軍士官に溺愛される〜
二話『怪しい人影』
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沖に停泊する軍艦疾風。
一日の任務を終えた士官たちが、士官室で思い思いの時間を過ごしていた。
「明日は日曜日だが、あんまり飲みすぎるな」
「はーい」
艦隊勤務は週一日、日曜日だけは休暇だった。今日は土曜日である、夕食後は酒を飲んだりカードをしたり。
楽しくはしゃぐ、士官たちに義孝が優しく声をかける。
「失礼します」
若いセーラー服の海兵が、敬礼して部屋に入る。
「あの、艦長と副長はおられますか?」
ーーーここだ!
杉田朋和中佐が手を挙げる。
「よかった」
ホッとした顔で、海兵が艦長・時東義孝の前にやって来る。
「あの、休憩中にすみません」
「かまわん、なんだ」
コーヒーを口にしながら、義孝が答える。
「実は・・・」
お耳を、と海兵が小声で言った。
♧♧♧
「名取大佐が」
「貨物室に人影?」
「はい、大佐がお二人に・・・内密に来て頂きたいと」
「なるほど」
名取大佐は大人しく、義孝や杉田中佐は特にこれといった印象がない。
「わかった」
「行きましょう」
杉田中佐と義孝は、海兵と貨物室に向かった。
「君は、ここまででいい。三十分経って我々が戻らない場合、大隈大尉と城沢少佐にこの件を知らせろ」
「そうですね。彼らなら、腕が立ちます」
「分かりました」
海兵は一礼して、立ち去る。
「行こう」
「はい」
嫌な予感がしてならない。
《いいか、義孝。第六感は親友だと思え!少しでも「何時もと違う何か」を感じたら、十分過ぎるくらいに注意しろ?》
かつて上官だった、磯崎順一(准将)が教えた、『危険回避』の心得は、今でも義孝の頭にある。
《第六感が働くのはな、軍人にはお守りだ。儂も、何度か命拾いしたからな》
あれから、十数年が過ぎた。
義孝は今、その第六感が働いていた。嫌な、不吉な感覚が拭いきれない。
隣にいる杉田中佐も、緊張しているのが分かる。
「静かだな」
「ええ、音がしません」
人がいればするはずの気配が、ここまで全くしないのだ。
「名取大佐は、大人しい士官だな?」
「はい、大人しいというより、目立たない人物です。私も顔を見なければ」
そう、名取大佐こと名取浩介は良く言えば『大人しい』、悪く言えば『存在感がない』人物だ。
「あ」
貨物室の前に、二人の士官がいた。
「お疲れさま」
「見張りご苦労、中から誰か出たか?」
「いえ、誰も来てないし、出てもありません」
「そうか」
「いいか、もし十五分経って我々が戻らなければ、大隈か沢城を呼べ」
「は」
二人は敬礼した。
「行くぞ」
「はい」
杉田中佐と、貨物室に入る。
♧♧♧
「なにィ」
大隈大尉が声を荒げる。
「バカヤロ、何で二人で行かせたんだよ!」
「怒るな、すぐに俺達に知らせただけで、コイツは上出来だ」
沢城時致は表情を変えることなく、海兵を褒めた。
「艦長達は十五分前に行ったんだな?」
「はい。お二人を探したのに、そのくらいです。あの、自分は艦長達に話すべきか迷いました、なんとなく・・・妙に感じたので」
「そうか、上出来だ。行くぞ、大隈」
「ああ」
二人は部屋を出た。
「誰もいませんね」
「だが、名取大佐が」
言いかけて、義孝はハッとなる。頭上で、何かが蠢いた。
「杉田中佐!」
叫ぶと同時に、杉田中佐に飛びかかった。
ドゴォォン
轟音と共に、荷物が崩れた。
「艦長、副長!」
大隈と時致が、貨物室に入った時には二人が倒れ、積荷が散乱していた。
「艦長!」
「中佐?」
二人は義孝と杉田中佐に駆け寄り、呼吸を確認し安堵した。
「良かった、生きてる」
大隈大尉が息を吐く。
「だが、艦長の左腕」
肘から先に腫れがある。
「こりゃ、折れてるな」
♧♧♧
案の定、義孝の左腕は折れていた。
「三か月ないし半年だな」
「・・・やはり」
杉田中佐がシュンとする。
「中佐の責任じゃない、落ち込むな」
「しかし」
「ま、しばらくは陸勤務だな。義孝、お前・・・まだ独身だろ?これを機に、結婚して子供を作れ」
「は?」
軍医の言葉に義孝は唖然とし、軍医は説明を続ける。
「磯崎の奴が、いい女を見つけたと連絡してきたぞ」
――――はぁっ!?
素っ頓狂な義孝の声が、艦内に響いた。
一日の任務を終えた士官たちが、士官室で思い思いの時間を過ごしていた。
「明日は日曜日だが、あんまり飲みすぎるな」
「はーい」
艦隊勤務は週一日、日曜日だけは休暇だった。今日は土曜日である、夕食後は酒を飲んだりカードをしたり。
楽しくはしゃぐ、士官たちに義孝が優しく声をかける。
「失礼します」
若いセーラー服の海兵が、敬礼して部屋に入る。
「あの、艦長と副長はおられますか?」
ーーーここだ!
杉田朋和中佐が手を挙げる。
「よかった」
ホッとした顔で、海兵が艦長・時東義孝の前にやって来る。
「あの、休憩中にすみません」
「かまわん、なんだ」
コーヒーを口にしながら、義孝が答える。
「実は・・・」
お耳を、と海兵が小声で言った。
♧♧♧
「名取大佐が」
「貨物室に人影?」
「はい、大佐がお二人に・・・内密に来て頂きたいと」
「なるほど」
名取大佐は大人しく、義孝や杉田中佐は特にこれといった印象がない。
「わかった」
「行きましょう」
杉田中佐と義孝は、海兵と貨物室に向かった。
「君は、ここまででいい。三十分経って我々が戻らない場合、大隈大尉と城沢少佐にこの件を知らせろ」
「そうですね。彼らなら、腕が立ちます」
「分かりました」
海兵は一礼して、立ち去る。
「行こう」
「はい」
嫌な予感がしてならない。
《いいか、義孝。第六感は親友だと思え!少しでも「何時もと違う何か」を感じたら、十分過ぎるくらいに注意しろ?》
かつて上官だった、磯崎順一(准将)が教えた、『危険回避』の心得は、今でも義孝の頭にある。
《第六感が働くのはな、軍人にはお守りだ。儂も、何度か命拾いしたからな》
あれから、十数年が過ぎた。
義孝は今、その第六感が働いていた。嫌な、不吉な感覚が拭いきれない。
隣にいる杉田中佐も、緊張しているのが分かる。
「静かだな」
「ええ、音がしません」
人がいればするはずの気配が、ここまで全くしないのだ。
「名取大佐は、大人しい士官だな?」
「はい、大人しいというより、目立たない人物です。私も顔を見なければ」
そう、名取大佐こと名取浩介は良く言えば『大人しい』、悪く言えば『存在感がない』人物だ。
「あ」
貨物室の前に、二人の士官がいた。
「お疲れさま」
「見張りご苦労、中から誰か出たか?」
「いえ、誰も来てないし、出てもありません」
「そうか」
「いいか、もし十五分経って我々が戻らなければ、大隈か沢城を呼べ」
「は」
二人は敬礼した。
「行くぞ」
「はい」
杉田中佐と、貨物室に入る。
♧♧♧
「なにィ」
大隈大尉が声を荒げる。
「バカヤロ、何で二人で行かせたんだよ!」
「怒るな、すぐに俺達に知らせただけで、コイツは上出来だ」
沢城時致は表情を変えることなく、海兵を褒めた。
「艦長達は十五分前に行ったんだな?」
「はい。お二人を探したのに、そのくらいです。あの、自分は艦長達に話すべきか迷いました、なんとなく・・・妙に感じたので」
「そうか、上出来だ。行くぞ、大隈」
「ああ」
二人は部屋を出た。
「誰もいませんね」
「だが、名取大佐が」
言いかけて、義孝はハッとなる。頭上で、何かが蠢いた。
「杉田中佐!」
叫ぶと同時に、杉田中佐に飛びかかった。
ドゴォォン
轟音と共に、荷物が崩れた。
「艦長、副長!」
大隈と時致が、貨物室に入った時には二人が倒れ、積荷が散乱していた。
「艦長!」
「中佐?」
二人は義孝と杉田中佐に駆け寄り、呼吸を確認し安堵した。
「良かった、生きてる」
大隈大尉が息を吐く。
「だが、艦長の左腕」
肘から先に腫れがある。
「こりゃ、折れてるな」
♧♧♧
案の定、義孝の左腕は折れていた。
「三か月ないし半年だな」
「・・・やはり」
杉田中佐がシュンとする。
「中佐の責任じゃない、落ち込むな」
「しかし」
「ま、しばらくは陸勤務だな。義孝、お前・・・まだ独身だろ?これを機に、結婚して子供を作れ」
「は?」
軍医の言葉に義孝は唖然とし、軍医は説明を続ける。
「磯崎の奴が、いい女を見つけたと連絡してきたぞ」
――――はぁっ!?
素っ頓狂な義孝の声が、艦内に響いた。
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