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中級冒険者

悪行

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 高級店から出た僕は、2人が出てくるのを隠れて待っている。

 顔を赤らめた2人が店から出てきた。きっと美味しい料理とお酒を堪能していたんだろう…

 2人は上機嫌で街中を歩いている。

 すると、なんの看板も出ていない扉の前で立ち止まり、ドアをノックしている。

 ドアに一言二言何か言っていた様に見えた。

 ドアが開き、中からがっしりした体格の男性が出てきた。

 親しげな様子で中に案内している。

 10分ほど待ち、僕も2人が入っていったドアをノックしてみた。

 「合言葉は?ブルータス?」

 僕はとっさに

 「お前もか?」と発した。

 ドアが開き先ほどのがっしりした体格の男性が出てきた。

 僕を怪訝けげんな表情で見つめる。

 「失礼ですがお客様は初めてでしょうか?」

 丁寧だが、ドスの効いた声だ。

 「初めてですが、大丈夫でしょうか?」

 「当店は、御紹介がない方は御利用出来ません。その合言葉はどこでお知りになられましたか?」

 ヤバイと思い、言い訳を考えた。

 「飲み屋で意気投合した人に面白い店があるよと教えられたのですが。」

 「当店は、一見様は御利用出来ません。今度はその方とご一緒に来店くださいませ。」

 ドアを閉められた。

 完全に怪しまれたな……

 店から誰か出てくるまで待っていよう。

 どのくらい待っていたか、ドアが開き1人の男性が出てきた。

 「すいません。ちょっとお話しいいでしょうか?」

 「ん?」

 男性は年の頃なら45ぐらいだろうか?

 「今出てきたお店はどんなお店なんですか?」

 「なんだお前は?なんでそんな事を聞く?」

 「実は僕と生き別れた父親があの店に出入りしているという情報を聞きまして。なんでもいいので教えて貰えませんか?」

 と涙ながらに、待っている間に考えた嘘を話してみた。

 「そうか坊主!大変だな!坊主あそこは賭場だよ。バクチ。見てみろ看板もなんも出してないだろ?」

 賭場!?バクチ!?

 フランチェスカさんの昼とは違う顔が見えてくる。

 「実はさっき女性と2人であの店に入ったと聞いたんですが?」

 「さっき?女性と2人?ボウズまさか番頭さんの?」

 「いやー番頭さんの訳ないか?ありゃダメだ。悪党も悪党。ど悪党だよ!」

 「番頭さんとは、どのような悪党なんですか?」

 「バクチ狂いで借金まみれって噂だよ。噂だけど借金から逃げるために借金取りを何人か殺めたって話も聞いたぜ!」

 僕は衝撃を受けた。

 あの仕事が出来て気がよく効く、番頭のフランチェスカさんがバクチ狂いの人殺し?

 「人を殺めても、バクチをしても俺は捕まる事はないって酒場で騒いでたって話もあったな。」

 「あくまでも噂だけどな?ボウズの父ちゃんとは違うんだろ?俺から聞いたって言うなよ。」

 喋りすぎたと思ったのか、男は夜の街に足早に消えていった。
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