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新たな船出

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 軍に所属か……おいそれと即答は出来ない。協力する事はやぶさかでないが……

 とりあえず返答までに二日間待って貰う事にした。商店に戻り、家族に相談する必要がある。私は聖女スキルを得たとは言え、まだ12歳なのだ。

 商店に戻るとまだ沢山のお客さんで賑わっていた。珍しい日用品や生活雑貨もよく売れているようだ。

 『ああ~帰ってきたようです。ユリナ、お前にお客さんだ。』

 私を待っていたのは、聖女会館の執事タケウチである。

 「何かご用ですか?」

 私はつっけんどんに声をかけた。

 『御無沙汰しております。お元気そうで何よりです。御両親様は見事に商売を繁盛させておられるみたいで、大したものですね。いえ、ユリナ様が聖女スキルを開眼されたと風の噂でお聞きしまして、様子を伺いに来た次第であります。』

 自分達で叩き出しておきながら、どの口が言ってるんだ!?

 「ご覧の様に商売繁盛しておりまして、忙しいので、様子を見られたなら、失礼してよろしいですか?」

 『まあまあそう仰らないで。アルテニア皇国の守護大臣をされているナカサキ大臣を覚えておられますか?ナカサキ大臣からの書状を預かっております。これをお受け取り下さい。』

 常に偉そうにして、最後は私に暴行をした大臣か。忘れる訳がないではないか。一体何の用事だ?

 《聖女ユリナへ。そなたの聖女スキルが開眼したと聞き、アルテニア皇国では、国を挙げて喜んでいる。そもそもそなたの生まれ故郷であり、女神の庇護を受けたのは、アルテニア皇国である。いち早くアルテニア皇国に戻り、聖女会館に帰還される事を強く願う。もしそなたが、ルーミハイム王国に滞在したままであるならば、国家間の軋轢あつれきを生む行動だということを、自覚して欲しい。聖女というのは、国の宝である。そなたは生まれ故郷のアルテニア皇国の宝なのだ。国を出る際、私共と行き違いがあった事には、残念に思っている。》

 途中まで読んで腹わたが煮えくり返る思いだった。スキルが発動せず、役立たずだったのは間違いないが、誰も助言も手助けもしてくれず、嫌がらせを受けてきた。そして要らない物を棄てるかのように、私に暴行を働き、我が家に火をつけ何もかもを奪った奴らだ。

 《私はアルテニア皇国の守護大臣という要職に就いている。今、アルテニア皇国とルーミハイム王国とはゴタゴタが続いている。そなたの存在が引き金となり、両国間に激しい戦争が生じる危険もある。そなたの行動で罪のない多くの人の命が消えるのだ。そなたが母国であるアルテニア皇国に戻り、聖女会館に勤めるならば、そなたと、そなたの家族の繁栄を約束する。詳細は聖女会館執事タケウチに伝えている。即刻戻り我が国の為に勤めよ。》
 
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