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幼少期

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 1歳になり歩けるようになった僕は、屋敷内をあちこち動き回り、身体能力の向上に励んでいく。

 1人であちこち動きたいのだが、僕が動くたびに母親や、兄、姉が『待て待て~』と追いかけて来る。

 ある時は、積み木で1人遊びをしている様に見せかけて、積み木から、木材、木材から木の剣という様に変形の練習をして、錬金術のレベル上げを行なっていた。もちろん終える時には積み木に戻している。

 2歳になる頃には、錬金術も満足出来るレベルとなっていた。

 暇な時には、書斎に入り込み、この世界の地理や、周辺国事情を吸収していた。

 特に好きだったのは、たまに訪れて来る客との会話を聞くことだった。たいして有力ではない、父親の[カフマン商会]にも、時には商談の相手が訪れてきた。その時に盗み聞く、各国の状況や売れ筋商品の話、景気の話などは、お金を払ってでも聞きたい情報であった。

 ある時、魔石を持ってきた客がいた。僕がその魔石をじっと観察していると、

 「僕は小さいのに、鑑定してるのかな?アハハハ!その魔石が気に入った様子だからプレゼントするよ。」

 と小さな魔石を貰うことが出来た。[鑑定]してみると、ゴブリンの魔石であった。魔石は、魔力の供給源として重宝されており、魔道具を作製する時の動力源となる物だ。現代における乾電池みたいな物だ。

 魔石を得るのは数年後になると思っていた僕は、とても嬉しかった。早速、部屋に帰り錬金術で魔石を変形させる。

 「錬成!」

 メガネ状に変形させた魔石に、魔力を付与して魔道具を作製した。この身体になって初めて作製した魔道具だ。

 上手く出来たかな?メガネを掛けてみた。

 「うん、成功だ!」

 この人生で初めて作製した魔道具は【透けるメガネ】だった。メガネを掛けて対象物を見ると、衣服が全て透けて見えるというロマン溢れた代物だ。現在の僕には、女性といえば、母親か、3歳離れた姉しか居ない。母親の乳房は授乳時から見慣れている。5歳の幼児の裸を見ても仕方がない。せっかくの代物も使う時を待たねばいけなかった。その辺に置いて紛失してもいけないので、アイテムボックスに収納する事にした。 

 このアイテムボックスというのは便利で、1度目の人生以来ずっと助けられている。魔力の消費もせず、無制限で収納出来るのだ。

 2歳になっていた僕は、ようやく家の庭に、1人で出れる様になっていた。監視がおらず、1人で屋外に出る事がこんなに嬉しいと思った事はない。

 庭では素材となるガラス石を採取する事が出来た。裏庭まで行くと、雑木林から木材や雑草も採取出来た。雑木林に少し入った家から見えない所で、雑草を錬金術で縄に加工する。木材を縄で吊るし、木に括りつける。その吊るされた木を木の剣で打ちつけ、剣術の稽古も行なっていた。
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