人生５周目！！５度目の人生はマッタリ冒険者になります。

幼少期

１０

　王都ノストックへの出発の朝が来た。朝早くだが、家族揃って僕を見送りしてくれるようだ。子供達は、皆目が赤く、まぶたが腫れぼったい。

　別れは笑顔でいこうと僕は、決めていた。父さんの店がある［オッフェンベルグ］から王都［ノストック］までの馬車が出るらしい。父さんが馬車で僕を［オッフェンベルグ］まで連れて行ってくれるようだ。

　瞬間移動テレポートすれば、一瞬だが、父さんの好意に甘えておこう。

　結局、馬車には家族全員が乗り込んできた。こんな暖かい家族と生きる人生も悪くないなと、素直に思った。

　今までの経験から、人は自分の役に立つと思えば近付いてくる。厄介者だと思われれば離れていく人種しかいなかった。暖かい家族というのが新鮮だったのだ。

　母親は馬車の中で僕の手をずっと握っていた。僕の好きだったガサガサしていた母親の手は、ハンドクリームですべすべの手になっていた。

　いろんな思い出に浸っていると馬車は［オッフェンベルグ］の街に到着した。

　王都［ノストック］への馬車が出発の時間を待っている。父親は、馬車の御者に特別魔法学校の入学届けを見せ、乗車の許可を取った。

　馬車代も無料みたいだ。父親が僕の荷物を荷台に乗せ換えてくれ、僕は王都行きの馬車に乗り換えた。家族はこの世の別れのように見送っている。

　馬車は、王都へと動き出した。

　姿が見えなくなるまで、家族は手を振っている。こんなに胸が熱くなったのは、いつ以来であろう。

　「坊主、良い家族だな！」

　思い出に浸っていた僕に嗄しゃがれ声の中年の男性が声を掛けてきた。

　「坊主１人かい？いきなり声掛けてすまねーな。怪しいもんじゃねーよ。俺にも同じ歳ぐらいのチビがいるから、ついな。」

　訝いぶかしむ僕の視線に気付いたのか、男は弁明をしている。

　「いや、王都まで行く馬車に１人で乗ってるからよ。大したもんだと思ってな。坊主、腹減ってねーかい？１つ食うかい？」

　僕の返事も待たず、サンドイッチを押し付けてきた。

　まさか毒などは、入ってなかろうが、念のため［鑑定］をしてみた。

　【サンドイッチ】
　愛情たっぷりの手作りサンドイッチ。白ブタ肉の燻製が食欲をそそる。

　大丈夫そうだ。家族との別れに気持ちが込み上げてきて、朝食はあまり取れなかったので、正直有り難い。

　一口頬張ってみると、確かに燻製の良い香りが食欲をそそる。

　「どうだ！美味いだろ？ウチの母ちゃんの特製手作りサンドイッチだ。」

　どうやら悪い男ではない様子だ。