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本編
第二幕 武士
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俺の前世は江戸時代の旗本の武士・川崎孝ノ助だった。旗本と言っても三男坊で中途半端な存在だった。お勤めの合間を縫って、遊郭に通っていた。遊女、花魁に会いに行くために。遊郭には美しい花魁、青宮太夫がいた。
「青宮、歌を聴かせてくれないか?」
「はい……」
二人きりの空間で青宮は俺のためだけに歌を歌ったり琵琶を弾いてくれた。無口な俺はただそれらを聴いているだけでよかった。
俺は確かに彼女を愛していた。
「川崎様、わちきの歌は好きですかい?」
「ああ、何よりも好きだ」
青宮は可愛い声で笑いかけ、歌ってくれた。
俺は彼女を身請けし、一緒になりたかった。しかし俺には許嫁が既にいてそれは許されなかった。妾として傍に置くのは青宮を傷付ける結果になると考え、身請けをさせてくれとは言えなかった。それに俺には持病があり、医師に先は短いと言われていた。俺と青宮が一緒に居られる期間はどうやっても短いものになるのはわかっていた。
そして俺は青宮が性病で亡くなったと知って数か月後に、持病が悪化し前世を終えた。
それが俺の前世だった。
※
俺、川地孝雄は川崎孝ノ助の記憶を持ったまま生まれ変わり、現代で生きている。
「孝雄、お疲れ」
「ああ」
剣道部の活動を終えて荷物を背負い、幼馴染の志郎と合流する。前世で武士だったゆえか小学生の時から剣道に惹かれて大学に入った今でも続けている。
「そういや孝雄、まだ『TAYU』の動画見てるよな?」
「うん。ああ」
歩いてバイト先に向かいながら志郎にTAYUの話題を振られる。TAYUとは俺が最近見ている動画投稿者だ。男子高校生がシンプルに歌とギター演奏を披露するだけの動画をアップしているだけなのだが、それが人気かチャンネル登録者は既に五千人はいる。
「ちょっとだけ似ているんだ。青宮太夫に。青宮も歌と楽器が得意だったから」
「ふうん」
志郎は俺の前世の話を昔から黙って聞いてくれている。
「この歌い方、青宮に近いと思うんだ……まさか」
この男子高校生、TAYUは青宮の生まれ変わりかもしれない。
俺は前世で愛した青宮を探している。街を歩く時は辺りを見回したり、ネットでもそれらしい人物のSNSを探ってしまう。TAYUもそのうちの一人だ。
「そんなことあるか? その高校生男だろ?」
「男に生まれ変わってる可能性もあると思う」
俺はTAYUが気になって仕方がなかった。
「青宮、歌を聴かせてくれないか?」
「はい……」
二人きりの空間で青宮は俺のためだけに歌を歌ったり琵琶を弾いてくれた。無口な俺はただそれらを聴いているだけでよかった。
俺は確かに彼女を愛していた。
「川崎様、わちきの歌は好きですかい?」
「ああ、何よりも好きだ」
青宮は可愛い声で笑いかけ、歌ってくれた。
俺は彼女を身請けし、一緒になりたかった。しかし俺には許嫁が既にいてそれは許されなかった。妾として傍に置くのは青宮を傷付ける結果になると考え、身請けをさせてくれとは言えなかった。それに俺には持病があり、医師に先は短いと言われていた。俺と青宮が一緒に居られる期間はどうやっても短いものになるのはわかっていた。
そして俺は青宮が性病で亡くなったと知って数か月後に、持病が悪化し前世を終えた。
それが俺の前世だった。
※
俺、川地孝雄は川崎孝ノ助の記憶を持ったまま生まれ変わり、現代で生きている。
「孝雄、お疲れ」
「ああ」
剣道部の活動を終えて荷物を背負い、幼馴染の志郎と合流する。前世で武士だったゆえか小学生の時から剣道に惹かれて大学に入った今でも続けている。
「そういや孝雄、まだ『TAYU』の動画見てるよな?」
「うん。ああ」
歩いてバイト先に向かいながら志郎にTAYUの話題を振られる。TAYUとは俺が最近見ている動画投稿者だ。男子高校生がシンプルに歌とギター演奏を披露するだけの動画をアップしているだけなのだが、それが人気かチャンネル登録者は既に五千人はいる。
「ちょっとだけ似ているんだ。青宮太夫に。青宮も歌と楽器が得意だったから」
「ふうん」
志郎は俺の前世の話を昔から黙って聞いてくれている。
「この歌い方、青宮に近いと思うんだ……まさか」
この男子高校生、TAYUは青宮の生まれ変わりかもしれない。
俺は前世で愛した青宮を探している。街を歩く時は辺りを見回したり、ネットでもそれらしい人物のSNSを探ってしまう。TAYUもそのうちの一人だ。
「そんなことあるか? その高校生男だろ?」
「男に生まれ変わってる可能性もあると思う」
俺はTAYUが気になって仕方がなかった。
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