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姫と出かけたその夜、第四妾妃が自殺した。
名をマリアンナ・パウラ・ハリラ。
この女は儂に懸想しており、
常に儂に気に入られる様行動していた。
名家の出の派閥に属し、
退紅色の髪の長い美しい髪が自慢の女だった。
儂の姫への寵愛にショックを受けて死んだとという事で片付けられた。
「しかし不審な点も無いわけじゃないんですよね」
執務室に法相を呼び、事の経緯を聞く。
「ほう?不審な点とは?」
「飛び降りる所を目撃した衛兵の話によると、何かに追われていた様に見えたと」
いつもの貼り付けた笑顔を崩さずに法相は語る。
「自殺なのは目撃者がいる以上、間違いないんですがね。ただ、その経緯が不審です」
「化け物にでも追われていたか」
「そういったご様子だったそうです」
儂は更に質問を重ねる。
「麻薬の線はないのか?」
法相が答える。
「ハリラ妾妃のお部屋を調べましたが、お召しになっていた形跡はないですね」
麻薬は基本的に葉や花や果肉を乾燥させたものを使う。
様々な種類があるが、基本的な処理法と使用法は皆同じだ。
葉や花はキセルに少量乗せ火で燻し、その煙を吸う。
乾燥させた果肉は噛んで口径から摂取する。
効能はその植物で色々あるが、あまりにも依存性の強いものはグリムヒルトでは禁じている。
「……どうにも胡散臭いな。このタイミングであの女が死ぬとも思えん」
「と、仰いますと?」
法相が先を促す。
「あの女は儂に懸想しておったからな。儂が命じて姫に尽くせと言えば、喜んで尽くしただろう。儂に捨てられずに済むならな」
「そうであれば確かにこのタイミングではおかしいですね。あるなら廃妃を命じられた時だったでしょうね」
法相は指先を口元にやり、思案する。
「……もう一度洗い直します」
「頼む」
「御意」
法相が一礼し部屋を出る。
目の前の書類に目を通す。
サインする。
弾く。
それを繰り返しながら、思案する。
膠着していたものを動かす時、必ずこういう事が起きる。
姫への寵愛を示した途端にこれだ。
だが、何故第4妾妃なのか、これがわからない。
ハリラ家は後ろ盾の家の中でも没落直前の弱い立場にある。
娘の美貌に縋り、娘を差し出してなんとか一家の再興を果たした。
ハリラ家の現当主は徴税官でその職もマリアンナが儂の妾になって得られた職だ。
これだけ立場の弱い第4妾妃は狙われる理由がどこにも無い。
狙うなら姫であろうが諜報の者も姫が狙われた事は無いと言う。
しかし早晩姫は狙われる。これだけは確かだろう。
犯人がいるとすれば、これは始まりに過ぎないだろうな。
儂はウンザリして思索をやめた。
名をマリアンナ・パウラ・ハリラ。
この女は儂に懸想しており、
常に儂に気に入られる様行動していた。
名家の出の派閥に属し、
退紅色の髪の長い美しい髪が自慢の女だった。
儂の姫への寵愛にショックを受けて死んだとという事で片付けられた。
「しかし不審な点も無いわけじゃないんですよね」
執務室に法相を呼び、事の経緯を聞く。
「ほう?不審な点とは?」
「飛び降りる所を目撃した衛兵の話によると、何かに追われていた様に見えたと」
いつもの貼り付けた笑顔を崩さずに法相は語る。
「自殺なのは目撃者がいる以上、間違いないんですがね。ただ、その経緯が不審です」
「化け物にでも追われていたか」
「そういったご様子だったそうです」
儂は更に質問を重ねる。
「麻薬の線はないのか?」
法相が答える。
「ハリラ妾妃のお部屋を調べましたが、お召しになっていた形跡はないですね」
麻薬は基本的に葉や花や果肉を乾燥させたものを使う。
様々な種類があるが、基本的な処理法と使用法は皆同じだ。
葉や花はキセルに少量乗せ火で燻し、その煙を吸う。
乾燥させた果肉は噛んで口径から摂取する。
効能はその植物で色々あるが、あまりにも依存性の強いものはグリムヒルトでは禁じている。
「……どうにも胡散臭いな。このタイミングであの女が死ぬとも思えん」
「と、仰いますと?」
法相が先を促す。
「あの女は儂に懸想しておったからな。儂が命じて姫に尽くせと言えば、喜んで尽くしただろう。儂に捨てられずに済むならな」
「そうであれば確かにこのタイミングではおかしいですね。あるなら廃妃を命じられた時だったでしょうね」
法相は指先を口元にやり、思案する。
「……もう一度洗い直します」
「頼む」
「御意」
法相が一礼し部屋を出る。
目の前の書類に目を通す。
サインする。
弾く。
それを繰り返しながら、思案する。
膠着していたものを動かす時、必ずこういう事が起きる。
姫への寵愛を示した途端にこれだ。
だが、何故第4妾妃なのか、これがわからない。
ハリラ家は後ろ盾の家の中でも没落直前の弱い立場にある。
娘の美貌に縋り、娘を差し出してなんとか一家の再興を果たした。
ハリラ家の現当主は徴税官でその職もマリアンナが儂の妾になって得られた職だ。
これだけ立場の弱い第4妾妃は狙われる理由がどこにも無い。
狙うなら姫であろうが諜報の者も姫が狙われた事は無いと言う。
しかし早晩姫は狙われる。これだけは確かだろう。
犯人がいるとすれば、これは始まりに過ぎないだろうな。
儂はウンザリして思索をやめた。
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