人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

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 次の日。
 私は牢にいるレニタ様の元へ向かう。
 衛兵がいる中、私達は小さな部屋で向かい合って座る。
「レニタ様……どうしてこの様な事をなさったのですか…?」
 レニタ様は遠い目をして、口を開いた。
「……疲れてしまったのですよ……。あの方の妾妃でいる事に……」
「……疲れた……」
 レニタ様は遠い目のまま微笑む。
「私もね、陛下をお慕い申し上げておりましたの。
 でもね、陛下は秋気を向ける女性を嫌う。
 ですから私、決して表に出さぬ様、努めて参りました。
 でもね、レイティア様が現れて陛下が人を愛すさまを見て、何か……糸の様なものが切れてしまいましたの」

 私は静かに質問をぶつける。
「……私が狙いでしたら、私だけを狙えば良かったのです」

 レニタ様の瞳がひたと私に向いた。
「狙いは全ての妾妃と、レイティア様ですのよ」
 そしてクスクスと笑い出す。
「もう疲れてしまって、やめたくなった。
 どうせ陛下は私を愛する事はもう無い。
 せめて子を授けて下されば、王位など継げなくてもよかったのです。
 慈しんで育てる事が出来た……。
 私の愛の行き場が迷う事もなかった……。

 何もないこの場所に縋って、陛下の愛が他にあるのを見ながら生きるなんて私には耐えられなかったのです。
 ……でも、私だけがここを去るのなんて、それも許せなかったの」

 私はレニタ様をじっと見つめる。
 レニタ様はまた遠い目をして私から目を逸らした。
「自分が去った後も他の女が陛下の妾妃だと言って、誰も彼もその寵愛を奪う事に躍起になる様など、考えるだけでもおぞましかった。
 陛下は誰のものにもならないからこそ、美しいお方なのに……」

 レニタ様の瞳からじわりと涙が浮かぶ。

「……でも、それは私がそう思いたかっただけだった……。
 レイティア様を見つめる眼差し、まるで宝物の様に扱う所作、優雅に踊られるダンス、優しく微笑むそのお姿……何を取っても美しくて、私にはその全てが向かない事にただただ絶望しました……。
 それをもし、万が一、皆に一片でも与える様になったら?
 そんな事ありはしないけど、もしも、起こってしまったら?
 ……そんな事は耐えられない。
 でも、もう後宮ここにいる事も耐えられなかったから、私は皆様に道連れになって欲しかったのです」

「……だから、アガターシェを使った?」
 私は膝の上に両の手で拳を作る。
 ドレスをぎゅっと握りしめた。

「そうですよ。アガターシェは母の家ライタネン家が取り扱っていたのです。以前の交易ルートを調べればすぐ入手が可能でした。
 お父様もレイティア様のお輿入れを阻止できるならと乗り気でしたから、協力も得られましたわ。
 ……私は家から世継ぎを産む様期待されておりましたの。
 でも御渡りが無いのだもの。どだい無理な話ですわよね。
 だからね、家も巻き込んでやりました」

「……全て滅ぼしたかったのですね……」

「……レイティア様の事は恐らくただのきっかけですの。
 私は本当はもうとっくに、陛下へのこの想いに疲れ果てていたのですよ。
 ……悔しいので、そういう事にしておきますわ」

 レニタ様はそう言って哀しげに微笑んだ。

 私はそれ以上何も言えなかった。
 言葉が見つからない。

 レニタ様は立ち上がって、衛兵に伴われ、牢に戻っていった。
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