人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

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 王妃の間のベッドルームで儂と姫は床についた。
「……陛下?」
 聞かれそうな事は大体察しがつく。
「……気になるか?」
「はい……。レニタ様が犯人なのは間違い無いですか?」
 ベッドで横になり、向かい合わせになって語り合う。

「イーリス・オイヴィ・ヴァイサンの証言が決定打になったな。
 定期船に検閲を免れている荷があってな。その荷を管理していたのがホンカサロ家だ」
 儂は頬杖をついて姫を見下ろす。
「今調べさせているがな。
 アガターシェの入った化粧品が妾妃達の持ち物から出た。贈り主は皆第三妾妃との事だ」

「レニタ様は……?」
 姫が儂の顔を真剣な眼差しで見た。

「捕らえた。特に抵抗する事もなく捕まったと聞いている」

「陛下……?」

「なんだ……?」

「妾妃様達はどうなりますか?」
 これにも真剣な眼差しで姫は問う。

「皆が例の化粧品を使っていてな。多かれ少なかれ、中毒症状が出ている。幾人かは廃妃にせざるを得んだろうな」

「……そうですか……」
 姫は切なげに目を伏せる。

「お前が気に病む必要は何処にもない。
 こればかりは誰にも防げぬ。
 アガターシェなど撒いた第三妾妃に全ての責はある」

 姫は儂の目をじっと見つめる。
「……そうですね……。
 明日、少しだけ、レニタ様とお話させてもらえませんか?」

 立ち合いがあれば問題ないだろう。
「人の見ている所であれば。」

「ありがとうございます。陛下。
 ……アガターシェがあんなに即効性があるとは思いませんでした」
 姫は思い巡らせる様に瞳を伏せる。

「あれは特別だ。恐らく相当量のアガターシェを混入させていたんだろう。第三妾妃の狙いは姫だったからな」

 儂は姫の口元に絡む髪を払ってやる。

「触れているだけで吸収するものなんですね。私はてっきり食事に混ぜて摂らせるのだと思っていました」

「ああいった粉末状の麻薬は大体そうだな。
 姫の言う様に食事から摂らせる場合もあるが、皮膚からも吸収するので此度の様に化粧品などに混ぜるのは理にかなっているな」

「……太公様がこの植物をご禁制になさった理由わけがわかります。これは国を滅ぼしかねない」

「これは興奮作用のある麻薬だからな。鎮静作用のあるものと比べると余計にたちが悪い。まぁどちらも依存し継続的に使えば廃人になるのだがな」

 長い沈黙が続く。

 姫の瞳が僅かに揺れて、口を開く。
「私……色んな事を混ぜっ返してしまったんでしょうか……?多分皆さん、陛下の事を愛してらっしゃって、微妙な均衡で成り立っていたのでしょうから……」

 儂は姫の唇に指先で触れる。
「それ以上言うな」
 姫は弾かれた様な顔をして儂を見た。
 そして僅かに笑う。
「……そうですね。ごめんなさい……」

 姫は軽く息を吐く。

「眠れぬか?」
「はい……。今夜は眠れそうにありません……」
「そういう時は無理に眠らずともよい。儂も付き合ってやろう」
「……はい……」

 そうして姫の肩を抱き、夜長を二人語らいながら過ごした。
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