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次の日には、姫は鉱山の坑夫達と面会をした。
一様に覇気のなかった坑夫達が、待遇の改善を約束すると次々に今までの待遇の酷さを口にし始めた。
「今の待遇はどの様なものだったんですか?」
「そりゃおめぇ、一度ここで働き出したらもう抜け出せねえよ」
「日当が3000ルピルだ。そっから毎日部屋代と飯代それでカツカツだ」
「残った分を貯めてても次は工具代、被服代で消えちまう」
「毎日毎日ただ、鉱山で石掘って、タコ部屋でひしめき合って寝るだけだ」
「アナバス様……? グリムヒルトの坑夫の平均日当は幾らなんでしょう?」
「長く勤められる職でもないからな。危険手当も込みで日当3万ルピルでも丁度いい位だろう」
「先ずはそこから改善しましょう。適正価格をお支払いする事をお約束します。
工具代や労働に使う被服代もこちらが経費としてお出しします。これまでの労働に対しても補償しますから」
坑夫達から歓声が上がる。
「ありがてぇ! このまま生き地獄で死んだ様に生きてるだけかと思ったが…。あんた女神様か⁉︎」
「俺達の女神様に違いない!」
「…女神だなんて、やめて下さい! そんなんじゃありません! 皆さんの雇い主として当然の事をしているだけです!」
姫は慌てて首を振って否定する。
坑夫達は拝む様に姫を見て、口々に讃える事をやめない。
実際、坑夫達からしたら、姫は女神の様に映るだろう。
長らく出口の見えない労働に疲れ果てていた所に光を与えたのだ。
「ただ、皆さんには健康に出来るだけ長くここで勤めて頂けたらと思うだけです。キチンと退職金も年数に応じてお支払いします。それから、皆さんの寄宿舎も快適なものに立て替えます。それらは今すぐできる事で、他にも要望があればどんどん上げて下さい。出来うる限り対応しますから」
「俺達みたいなただの坑夫にこんな待遇してくれる雇い主なんて他にいねぇ」
涙ぐんで坑夫の一人は言う。
「やっぱり女神様だ!」
姫に対する崇拝はどんどん進む。
「俺達ぁ、坑夫だ。この御恩は石掘って返すよ」
「そうだ! 俺らの拳見てえな宝石掘ってやるよ!」
姫はその勢いに困り果てた様に言った。
「ありがとうございます。でもどうか、安全第一でくれぐれも無茶はなさらないで下さいね?」
坑夫達は今日も仕事に出かけると言い出して、そのまま鉱山に向かって行った。
昨日までの様子とは打って変わり覇気に満ちていた。
「なかなか大盤振る舞いだな」
儂が笑って姫に言う。
「そういう訳ではないのですが……。私が売上を頂いてばかりでも、使い途もせいぜい市井に出て買い食いするくらいでしょう? それでは民に還元できないので、せめてこういう所で使いたいなと思って……」
「そうか。このセオの街は更に発展するだろうな」
「そうでしょうか?」
「待遇が良くなればその噂は間違いなく国中に回る。回れば人がやって来る。人のやって来る所には商売が生まれる。商売が発展すれば街は育つ」
姫は柔かに笑って言う。
「そうなればいいですね。それがアナバス様の一助になればいいのですけど」
「ティアが傍におるだけで充分助けになっている。この俺が面倒な書類仕事に精を出せるのはティアがいればこそだ」
「……ありがとうございます。アナバス様」
頬を染め、でもどこか嬉しそうに姫は儂を見上げてそう言った。
一様に覇気のなかった坑夫達が、待遇の改善を約束すると次々に今までの待遇の酷さを口にし始めた。
「今の待遇はどの様なものだったんですか?」
「そりゃおめぇ、一度ここで働き出したらもう抜け出せねえよ」
「日当が3000ルピルだ。そっから毎日部屋代と飯代それでカツカツだ」
「残った分を貯めてても次は工具代、被服代で消えちまう」
「毎日毎日ただ、鉱山で石掘って、タコ部屋でひしめき合って寝るだけだ」
「アナバス様……? グリムヒルトの坑夫の平均日当は幾らなんでしょう?」
「長く勤められる職でもないからな。危険手当も込みで日当3万ルピルでも丁度いい位だろう」
「先ずはそこから改善しましょう。適正価格をお支払いする事をお約束します。
工具代や労働に使う被服代もこちらが経費としてお出しします。これまでの労働に対しても補償しますから」
坑夫達から歓声が上がる。
「ありがてぇ! このまま生き地獄で死んだ様に生きてるだけかと思ったが…。あんた女神様か⁉︎」
「俺達の女神様に違いない!」
「…女神だなんて、やめて下さい! そんなんじゃありません! 皆さんの雇い主として当然の事をしているだけです!」
姫は慌てて首を振って否定する。
坑夫達は拝む様に姫を見て、口々に讃える事をやめない。
実際、坑夫達からしたら、姫は女神の様に映るだろう。
長らく出口の見えない労働に疲れ果てていた所に光を与えたのだ。
「ただ、皆さんには健康に出来るだけ長くここで勤めて頂けたらと思うだけです。キチンと退職金も年数に応じてお支払いします。それから、皆さんの寄宿舎も快適なものに立て替えます。それらは今すぐできる事で、他にも要望があればどんどん上げて下さい。出来うる限り対応しますから」
「俺達みたいなただの坑夫にこんな待遇してくれる雇い主なんて他にいねぇ」
涙ぐんで坑夫の一人は言う。
「やっぱり女神様だ!」
姫に対する崇拝はどんどん進む。
「俺達ぁ、坑夫だ。この御恩は石掘って返すよ」
「そうだ! 俺らの拳見てえな宝石掘ってやるよ!」
姫はその勢いに困り果てた様に言った。
「ありがとうございます。でもどうか、安全第一でくれぐれも無茶はなさらないで下さいね?」
坑夫達は今日も仕事に出かけると言い出して、そのまま鉱山に向かって行った。
昨日までの様子とは打って変わり覇気に満ちていた。
「なかなか大盤振る舞いだな」
儂が笑って姫に言う。
「そういう訳ではないのですが……。私が売上を頂いてばかりでも、使い途もせいぜい市井に出て買い食いするくらいでしょう? それでは民に還元できないので、せめてこういう所で使いたいなと思って……」
「そうか。このセオの街は更に発展するだろうな」
「そうでしょうか?」
「待遇が良くなればその噂は間違いなく国中に回る。回れば人がやって来る。人のやって来る所には商売が生まれる。商売が発展すれば街は育つ」
姫は柔かに笑って言う。
「そうなればいいですね。それがアナバス様の一助になればいいのですけど」
「ティアが傍におるだけで充分助けになっている。この俺が面倒な書類仕事に精を出せるのはティアがいればこそだ」
「……ありがとうございます。アナバス様」
頬を染め、でもどこか嬉しそうに姫は儂を見上げてそう言った。
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