82 / 200
82
しおりを挟む
宴はまだ続くが、暇を取る。
姫を伴い、王の間に入る。
今日から閨は王の間に姫を呼び寄せるのが通常となる。
互いの侍女達がせっせと儂と姫の閨の準備を始める。
先ずは儂が湯殿を使う。
姫はその間長椅子で座って待っていた様だがこの時点で侍女達に起こされていた。
儂の湯浴みが終わった後、
殆どうつらうつらと船を漕ぐ姫を侍女達が湯殿へ連れて行く。
姫が湯浴みを終え、半ば支えられて、ベッドに座らされた。
儂が姫を支えるのを替わり、侍女達に下がる様に命じる。
「姫、もう眠るか?」
「……はい……もう、げんかいです……」
「わかった。よく頑張った」
姫を横たわらせる。
本当に限界だった様で、すぐに寝息を立てて眠ってしまった。
今日は儂の横で慣れぬ社交を全てやってみせた。
賓客だけではなく、諸侯や官吏の名前までしっかり覚え、声をかけていたのには感心した。
ダンスの時にプトレド王国のあの似非王子と何を話したのかが気にかかる。
あの似非王子は見てくれこそ取り繕うのが上手いが、恐らくは儂と同種の人間だ。同じ匂いがする。
姫に会ったのが儂との婚姻の儀で非常に悔しい事だろう。
儂の様な手合いは姫の様な女が好みだ。
そういう女に無茶な要求を飲ませたがる。
さすがに本気で奪いにかかる事は無いだろうが。
だが残念ながらこの女はもう儂のものだ。
誰にも渡す気はない。
すっかり深く眠ってしまった姫の寝顔を見つめる。
今宵はこの寝顔を見つめていよう。
明日の儂の予定は要人との会談など色々とある。
とは言って交易の輸入、輸出量、価格調整など煩雑とした取り決めを事前に話してある。殆どが外相が固めた内容を書面にして調印するだけだ。
ヴィンザンツ大陸からグリムヒルトまで船で2、3週間はかかる。今の季節なら3週間だろう。あまり長い航海に非戦闘員の女は連れ立って来ない。故に今回の式に女の賓客はいないので、姫がもてなす相手はいない。
姫は明日の午前は身体が空く。
明日は一日ゆっくりさせてやろう。
焦る事は無い。一年待ったのだから。
ーーーー……次の日の朝
姫、いや、王妃の声に起こされる。
「……陛下?そろそろ起きなくてはいけませんよ?」
「……まだ眠い……」
「今日は各国の要人との会談と調印式がおありでしょ?もう起きなきゃ遅れてしまいます」
微睡みの中、隣にレイティアの体温を感じる。
「そろそろ侍女達が起こしに来る時間ですよ。今日ばかりはお目溢しはしてもらえないでしょうから、予めお起こししました」
「……そうか……わかった」
やや、覚醒した所で、レイティアを抱き寄せる。
そして口付ける。
「……陛下……」
レイティアは頬を染める。
「夫婦になったのだから、この位は慣れろ」
「……はい……」
肯定するにも関わらず、照れ臭そうに目を逸らし俯く仕草が可愛い。
もっとこういう顔を見たい。
更にその先の、
泣き濡れて懇願する顔を見てみたい。
この一年、ずっと耐えていた衝動を許されている事に興奮を覚えるが、今はお預けだ。
どうせもう、逃す気はない。
儂はこの儂の腕の中に収まり、幸せそうに笑いかけるこの顔をめちゃくちゃに穢してしまうだろう。
レイティアはどう思うのだろうか。
酷いと泣くだろうか?
それでももう手放してやれない。
この衝動を一身に受けてもらう。
やはり儂の妻になるなど生き地獄だろう。
レイティアの髪を撫でながら、儂はそんな想いを巡らせていた。
姫を伴い、王の間に入る。
今日から閨は王の間に姫を呼び寄せるのが通常となる。
互いの侍女達がせっせと儂と姫の閨の準備を始める。
先ずは儂が湯殿を使う。
姫はその間長椅子で座って待っていた様だがこの時点で侍女達に起こされていた。
儂の湯浴みが終わった後、
殆どうつらうつらと船を漕ぐ姫を侍女達が湯殿へ連れて行く。
姫が湯浴みを終え、半ば支えられて、ベッドに座らされた。
儂が姫を支えるのを替わり、侍女達に下がる様に命じる。
「姫、もう眠るか?」
「……はい……もう、げんかいです……」
「わかった。よく頑張った」
姫を横たわらせる。
本当に限界だった様で、すぐに寝息を立てて眠ってしまった。
今日は儂の横で慣れぬ社交を全てやってみせた。
賓客だけではなく、諸侯や官吏の名前までしっかり覚え、声をかけていたのには感心した。
ダンスの時にプトレド王国のあの似非王子と何を話したのかが気にかかる。
あの似非王子は見てくれこそ取り繕うのが上手いが、恐らくは儂と同種の人間だ。同じ匂いがする。
姫に会ったのが儂との婚姻の儀で非常に悔しい事だろう。
儂の様な手合いは姫の様な女が好みだ。
そういう女に無茶な要求を飲ませたがる。
さすがに本気で奪いにかかる事は無いだろうが。
だが残念ながらこの女はもう儂のものだ。
誰にも渡す気はない。
すっかり深く眠ってしまった姫の寝顔を見つめる。
今宵はこの寝顔を見つめていよう。
明日の儂の予定は要人との会談など色々とある。
とは言って交易の輸入、輸出量、価格調整など煩雑とした取り決めを事前に話してある。殆どが外相が固めた内容を書面にして調印するだけだ。
ヴィンザンツ大陸からグリムヒルトまで船で2、3週間はかかる。今の季節なら3週間だろう。あまり長い航海に非戦闘員の女は連れ立って来ない。故に今回の式に女の賓客はいないので、姫がもてなす相手はいない。
姫は明日の午前は身体が空く。
明日は一日ゆっくりさせてやろう。
焦る事は無い。一年待ったのだから。
ーーーー……次の日の朝
姫、いや、王妃の声に起こされる。
「……陛下?そろそろ起きなくてはいけませんよ?」
「……まだ眠い……」
「今日は各国の要人との会談と調印式がおありでしょ?もう起きなきゃ遅れてしまいます」
微睡みの中、隣にレイティアの体温を感じる。
「そろそろ侍女達が起こしに来る時間ですよ。今日ばかりはお目溢しはしてもらえないでしょうから、予めお起こししました」
「……そうか……わかった」
やや、覚醒した所で、レイティアを抱き寄せる。
そして口付ける。
「……陛下……」
レイティアは頬を染める。
「夫婦になったのだから、この位は慣れろ」
「……はい……」
肯定するにも関わらず、照れ臭そうに目を逸らし俯く仕草が可愛い。
もっとこういう顔を見たい。
更にその先の、
泣き濡れて懇願する顔を見てみたい。
この一年、ずっと耐えていた衝動を許されている事に興奮を覚えるが、今はお預けだ。
どうせもう、逃す気はない。
儂はこの儂の腕の中に収まり、幸せそうに笑いかけるこの顔をめちゃくちゃに穢してしまうだろう。
レイティアはどう思うのだろうか。
酷いと泣くだろうか?
それでももう手放してやれない。
この衝動を一身に受けてもらう。
やはり儂の妻になるなど生き地獄だろう。
レイティアの髪を撫でながら、儂はそんな想いを巡らせていた。
10
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!
柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる