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「グリムヒルト王妃陛下、是非私と踊って頂けませんか?」
プトレド王国の王子殿下にダンスに誘われる。
私は微笑んでお受けする。
「はい、喜んで」
跪いて、私に手を差し出す。私はその手を取ってホールの中央に導かれる。
ヴィンセント・ヴィダル・ストレムブラード王子殿下はとても素敵な男性だ。
物腰も柔らかく、こうしてエスコートされる時も気遣われているのがわかる。
きっと女性に大変な人気だろうと思う。
実際、特にグリムヒルトの諸侯や官吏のお嬢さん方は今もウットリ殿下を見つめている。
早速組み合い、音楽が始まるのを待つ。
テンポの優雅な音楽が流れる。
「王妃陛下はダンスはお得意ですか?」
こっそり耳元で話しかけてこられる。
「得意という程ではありません。嗜む程度ですよ?」
にこりと微笑むと、王子殿下も同じ様に笑ってくれた。
「そうですか。それなら私と同じですね、よかった」
こうして踊っていたらわかるけれど、多分それは謙遜だ。王子殿下は多分凄く踊れる人だと思う。
「所で王妃陛下のご出身のマグダラスとはどんなお国だったのですか?」
「地の利に救われてなんとか生活している貧しい国ですよ。そんな国の王女を陛下のご温情で正妃にして頂きました」
「そうでしたか。慣れない国での王妃としての生活は大変でしょう。遠く離れてはいますが、何かあればお力になります」
「ありがとうございます。プトレド第二王子殿下はお優しい方ですね」
「どうぞ私の事はヴィンセントとお呼び下さい」
「そういう訳には参りません……。それでは未来の王子殿下の花嫁様にヤキモチを焼かれてしまいますでしょう?」
他国の王子を名前呼びなんて出来ないし、私の事も同じ様に名前で呼んでもらう事も難しいだろう。
私は笑顔でなんとかお断りする。
「私には婚約者はおりませんよ。無骨者でして来手がありません。……困らせてしまいましたね、申し訳ありません」
困った様な笑顔で私に謝る。
「こちらこそどうかお許し下さいね。お気持ちとても嬉しく思っております」
私も笑顔で謝罪しておく。
自分一人の気持ちとしては全然レイティアと呼んで貰って構わないけど、今のグリムヒルト王国の正妃という立場はきっとそんな風に呼ばれる事を他国の人に安易に赦してはいけない。
私が誰かと仲良くなる事は陛下にも大きな影響を与える。
曲もそろそろ終わりそうだ。
また、王子が耳元で囁く。
「また機会がありましたら、踊って頂けますか?」
私は王子殿下を見上げて笑う。
「もちろんです。また是非」
こうしてダンスが終わり、一礼する。
すると次の曲の合間にビアニア王国第七王子、シーグヴァルド・クリストファー・ヴィーカンデル殿下がやって来た。
「私とも一曲お願い出来ますか?」
「はい、喜んで」
ビアニア第七王子殿下は一礼して、私の手を取った。
目が合うとにこりと笑って私と組み合った。
音楽が始まる。
またゆっくりとしたテンポの優しい調べの曲だったので、ステップの心配をせずにお話できそうだ。
「実はグリムヒルト王妃陛下とお話ししてみたかったんです」
「どうして私と?」
「先日成人なさったばかりだとお聞きして、私も近い年頃です。なのに立派に王妃として振る舞っておられるので素晴らしい方だと思っておりました」
「ありがとうございます。でも私は務めを果たすのに精一杯ですよ。それをこなせているのもグリムヒルトの優秀な侍女達や官吏達のお陰です」
「我が国はサンドバル帝国に隣接する配置でして軍事国家としての色が強く、文官があまり育ちません。戦争で今も国情は不安定です。グリムヒルト王国の安定した国内の発展した様相に本当に感心しました」
「ビアニア王国とサンドバル帝国はずっと戦争をなさっているのですね……。我がグリムヒルトとの同盟でサンドバルに上手く圧力をかけられれば良いのですけど」
「何度かグリムヒルト王国にご助力頂きました。感謝しております」
「我が国がビアニア王国のお力になれたなら幸いです。今後も良き同盟関係を築いていきましょう」
曲も終盤に差し掛かって来た。
「ありがとうございました、グリムヒルト王妃陛下」
「こちらこそ、楽しいひと時を過ごせました。ありがとうございます、ビアニア第七王子殿下」
曲が終わり、一礼する。
これ以上踊っては最後までこの夜会をやり過ごせる自信がないので、素早く陛下の玉座の横の椅子に座る。
国内の諸侯や官吏達に誘われる事は無いと陛下が仰っていたので、急ぐ事もないけど。
宴も酣、だけどそろそろ体力の限界かもしれない……。
一応、一国の王女だったけど、こんなに一日でたくさんの行事をこなした事なんてなかった。
何もかも初めての体験で上手くこなせたか自信がない。
チラリと陛下と目が合う。
多分、同じ気持ちなんだろうなと思って、やっぱり少しだけ苦笑いをした。
プトレド王国の王子殿下にダンスに誘われる。
私は微笑んでお受けする。
「はい、喜んで」
跪いて、私に手を差し出す。私はその手を取ってホールの中央に導かれる。
ヴィンセント・ヴィダル・ストレムブラード王子殿下はとても素敵な男性だ。
物腰も柔らかく、こうしてエスコートされる時も気遣われているのがわかる。
きっと女性に大変な人気だろうと思う。
実際、特にグリムヒルトの諸侯や官吏のお嬢さん方は今もウットリ殿下を見つめている。
早速組み合い、音楽が始まるのを待つ。
テンポの優雅な音楽が流れる。
「王妃陛下はダンスはお得意ですか?」
こっそり耳元で話しかけてこられる。
「得意という程ではありません。嗜む程度ですよ?」
にこりと微笑むと、王子殿下も同じ様に笑ってくれた。
「そうですか。それなら私と同じですね、よかった」
こうして踊っていたらわかるけれど、多分それは謙遜だ。王子殿下は多分凄く踊れる人だと思う。
「所で王妃陛下のご出身のマグダラスとはどんなお国だったのですか?」
「地の利に救われてなんとか生活している貧しい国ですよ。そんな国の王女を陛下のご温情で正妃にして頂きました」
「そうでしたか。慣れない国での王妃としての生活は大変でしょう。遠く離れてはいますが、何かあればお力になります」
「ありがとうございます。プトレド第二王子殿下はお優しい方ですね」
「どうぞ私の事はヴィンセントとお呼び下さい」
「そういう訳には参りません……。それでは未来の王子殿下の花嫁様にヤキモチを焼かれてしまいますでしょう?」
他国の王子を名前呼びなんて出来ないし、私の事も同じ様に名前で呼んでもらう事も難しいだろう。
私は笑顔でなんとかお断りする。
「私には婚約者はおりませんよ。無骨者でして来手がありません。……困らせてしまいましたね、申し訳ありません」
困った様な笑顔で私に謝る。
「こちらこそどうかお許し下さいね。お気持ちとても嬉しく思っております」
私も笑顔で謝罪しておく。
自分一人の気持ちとしては全然レイティアと呼んで貰って構わないけど、今のグリムヒルト王国の正妃という立場はきっとそんな風に呼ばれる事を他国の人に安易に赦してはいけない。
私が誰かと仲良くなる事は陛下にも大きな影響を与える。
曲もそろそろ終わりそうだ。
また、王子が耳元で囁く。
「また機会がありましたら、踊って頂けますか?」
私は王子殿下を見上げて笑う。
「もちろんです。また是非」
こうしてダンスが終わり、一礼する。
すると次の曲の合間にビアニア王国第七王子、シーグヴァルド・クリストファー・ヴィーカンデル殿下がやって来た。
「私とも一曲お願い出来ますか?」
「はい、喜んで」
ビアニア第七王子殿下は一礼して、私の手を取った。
目が合うとにこりと笑って私と組み合った。
音楽が始まる。
またゆっくりとしたテンポの優しい調べの曲だったので、ステップの心配をせずにお話できそうだ。
「実はグリムヒルト王妃陛下とお話ししてみたかったんです」
「どうして私と?」
「先日成人なさったばかりだとお聞きして、私も近い年頃です。なのに立派に王妃として振る舞っておられるので素晴らしい方だと思っておりました」
「ありがとうございます。でも私は務めを果たすのに精一杯ですよ。それをこなせているのもグリムヒルトの優秀な侍女達や官吏達のお陰です」
「我が国はサンドバル帝国に隣接する配置でして軍事国家としての色が強く、文官があまり育ちません。戦争で今も国情は不安定です。グリムヒルト王国の安定した国内の発展した様相に本当に感心しました」
「ビアニア王国とサンドバル帝国はずっと戦争をなさっているのですね……。我がグリムヒルトとの同盟でサンドバルに上手く圧力をかけられれば良いのですけど」
「何度かグリムヒルト王国にご助力頂きました。感謝しております」
「我が国がビアニア王国のお力になれたなら幸いです。今後も良き同盟関係を築いていきましょう」
曲も終盤に差し掛かって来た。
「ありがとうございました、グリムヒルト王妃陛下」
「こちらこそ、楽しいひと時を過ごせました。ありがとうございます、ビアニア第七王子殿下」
曲が終わり、一礼する。
これ以上踊っては最後までこの夜会をやり過ごせる自信がないので、素早く陛下の玉座の横の椅子に座る。
国内の諸侯や官吏達に誘われる事は無いと陛下が仰っていたので、急ぐ事もないけど。
宴も酣、だけどそろそろ体力の限界かもしれない……。
一応、一国の王女だったけど、こんなに一日でたくさんの行事をこなした事なんてなかった。
何もかも初めての体験で上手くこなせたか自信がない。
チラリと陛下と目が合う。
多分、同じ気持ちなんだろうなと思って、やっぱり少しだけ苦笑いをした。
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