人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

文字の大きさ
91 / 200

91、閑話 -面影4-

しおりを挟む
 馬車を見送る。
 小さくなっていく馬車に声をかけた。
「幸せにね……」
「なーーーーーーーーーーにが、『幸せにね……』よ!」
 この場面で一番聴こえて欲しくない声が聞こえる。

「うわぁ……」
 思わず声を上げて振り返ると、その声の主は片手を腰に当ててこっちを非難する目で見つめている。
「なぁに?そのあからさまに『嫌な奴に見つかっちゃったよ~~……オイオイ……』みたいな顔は」
 その声の主は更に言い重ねる。
「正直、女遊びの清算現場見ちゃった私の方が『オイオイ』って感じなんですけど?」

 俺はとにかく誤魔化せそうな話題を振る。
「あ……あはは……。これはこれは我が国の敏腕外相閣下。いつお帰りで?」
「昨日の夕方よ。独り身組の部下のご機嫌とり。娼館で一晩明かしちゃったわよ。ホント、船から降りてすぐだもんね~~。グリムヒルトの男は元気一杯よね~~。だから女達から軽く見られてんのよ。言っとくけど、あんたも例に漏れずだからね?」
「……相変わらずあんたの言葉は胸に深く突き刺さるよね……」
「あんた、よくも軽く、幸せにねなんて言えたもんね~~? ちゃんと頭動いてんの? 色ボケてんじゃないわよ」

 残念ながら話しは上手く逸れなかったようだ。
「あはは……お説教の時間ですか……?」
 外相は腕を組んで俺を睨む。
「あの子、マグダラスの子でしょ? しかも妊娠してて、元娼婦。
 この国で生きていくには充分過ぎる位、幸せには程遠そう。
 しかもそんな子が何故か土地持ちの金持ち。それって嫌味にしかなんないわよ」
 外相は頭を掻く。

「きっとこれからあの子もその子供も、謗りや嫌がらせを受けるんでしょうね。
 金だけじゃ解決できない事もあるのよ」
 その的確過ぎる意見に、俺はぐうの音も出ない。
 黙って受け入れるしかない。

「あの子自身、どう思ってるか知らないけど、世の中そんな甘いもんじゃないわよ。そういう事ちゃんとわかってて理解してんなら軽々しく『幸せにね……』なんて言える訳ないでしょ?
 これがわかんないなら一丁前に女遊びなんかすんじゃないわよ? わかった?」
 外相が俺の脇腹を肘で突つく。

「ハイ……。ゴメンナサイ……。」
「なに馬鹿正直に謝ってんのよ!」
「グワッ!」
 外相の肘鉄がなかなか良い勢いで俺の脇腹に見舞われた。
 俺はたまらず悲鳴をあげて、うずくまる。
「……脇腹はダメだって……」

「あんたにはまだあの子を幸せにしてあげられる可能性が残ってるでしょ?」
 その言葉に俺は外相を振り返る。

「あんた自分の事なんだと思ってんの?
 あんたはあの子が生きていくって決めた、この、グリムヒルトの『海軍中将にして、敏腕宰相閣下』でしょ?
 あんたが遊んだ女の子全員幸せにする事くらい、その気になれば出来るの。そういう責任の取り方もあるでしょ?」

 なるほど……こいつは俺とは違う。
 柔軟な発想でコロコロと一貫性がない所が苦手だが、こういう考え方を出してくるのか。

 今回はこいつの言う通りだ。

「……そうだね」

 俺は、祈るだけじゃなく、まだしてやれる事があるんだな……。
 これは俺にとっても救いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

イケメンとテンネン

流月るる
恋愛
ある事情から、イケメンと天然女子を毛嫌いする咲希。彼らを避けて生活していた、ある日のこと。ずっと思い続けてきた男友達が、天然女子と結婚することに! しかもその直後、彼氏に別れを告げられてしまった。思わぬダブルショックに落ち込む咲希。そんな彼女に、犬猿の仲である同僚の朝陽が声をかけてきた。イケメンは嫌い! と思いつつ、気晴らしのため飲みに行くと、なぜかホテルに連れ込まれてしまい――!? 天邪鬼なOLとイケメン同僚の、恋の攻防戦勃発!

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...