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91、閑話 -面影4-
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馬車を見送る。
小さくなっていく馬車に声をかけた。
「幸せにね……」
「なーーーーーーーーーーにが、『幸せにね……』よ!」
この場面で一番聴こえて欲しくない声が聞こえる。
「うわぁ……」
思わず声を上げて振り返ると、その声の主は片手を腰に当ててこっちを非難する目で見つめている。
「なぁに?そのあからさまに『嫌な奴に見つかっちゃったよ~~……オイオイ……』みたいな顔は」
その声の主は更に言い重ねる。
「正直、女遊びの清算現場見ちゃった私の方が『オイオイ』って感じなんですけど?」
俺はとにかく誤魔化せそうな話題を振る。
「あ……あはは……。これはこれは我が国の敏腕外相閣下。いつお帰りで?」
「昨日の夕方よ。独り身組の部下のご機嫌とり。娼館で一晩明かしちゃったわよ。ホント、船から降りてすぐだもんね~~。グリムヒルトの男は元気一杯よね~~。だから女達から軽く見られてんのよ。言っとくけど、あんたも例に漏れずだからね?」
「……相変わらずあんたの言葉は胸に深く突き刺さるよね……」
「あんた、よくも軽く、幸せにねなんて言えたもんね~~? ちゃんと頭動いてんの? 色ボケてんじゃないわよ」
残念ながら話しは上手く逸れなかったようだ。
「あはは……お説教の時間ですか……?」
外相は腕を組んで俺を睨む。
「あの子、マグダラスの子でしょ? しかも妊娠してて、元娼婦。
この国で生きていくには充分過ぎる位、幸せには程遠そう。
しかもそんな子が何故か土地持ちの金持ち。それって嫌味にしかなんないわよ」
外相は頭を掻く。
「きっとこれからあの子もその子供も、謗りや嫌がらせを受けるんでしょうね。
金だけじゃ解決できない事もあるのよ」
その的確過ぎる意見に、俺はぐうの音も出ない。
黙って受け入れるしかない。
「あの子自身、どう思ってるか知らないけど、世の中そんな甘いもんじゃないわよ。そういう事ちゃんとわかってて理解してんなら軽々しく『幸せにね……』なんて言える訳ないでしょ?
これがわかんないなら一丁前に女遊びなんかすんじゃないわよ? わかった?」
外相が俺の脇腹を肘で突つく。
「ハイ……。ゴメンナサイ……。」
「なに馬鹿正直に謝ってんのよ!」
「グワッ!」
外相の肘鉄がなかなか良い勢いで俺の脇腹に見舞われた。
俺はたまらず悲鳴をあげて、うずくまる。
「……脇腹はダメだって……」
「あんたにはまだあの子を幸せにしてあげられる可能性が残ってるでしょ?」
その言葉に俺は外相を振り返る。
「あんた自分の事なんだと思ってんの?
あんたはあの子が生きていくって決めた、この、グリムヒルトの『海軍中将にして、敏腕宰相閣下』でしょ?
あんたが遊んだ女の子全員幸せにする事くらい、その気になれば出来るの。そういう責任の取り方もあるでしょ?」
なるほど……こいつは俺とは違う。
柔軟な発想でコロコロと一貫性がない所が苦手だが、こういう考え方を出してくるのか。
今回はこいつの言う通りだ。
「……そうだね」
俺は、祈るだけじゃなく、まだしてやれる事があるんだな……。
これは俺にとっても救いだ。
小さくなっていく馬車に声をかけた。
「幸せにね……」
「なーーーーーーーーーーにが、『幸せにね……』よ!」
この場面で一番聴こえて欲しくない声が聞こえる。
「うわぁ……」
思わず声を上げて振り返ると、その声の主は片手を腰に当ててこっちを非難する目で見つめている。
「なぁに?そのあからさまに『嫌な奴に見つかっちゃったよ~~……オイオイ……』みたいな顔は」
その声の主は更に言い重ねる。
「正直、女遊びの清算現場見ちゃった私の方が『オイオイ』って感じなんですけど?」
俺はとにかく誤魔化せそうな話題を振る。
「あ……あはは……。これはこれは我が国の敏腕外相閣下。いつお帰りで?」
「昨日の夕方よ。独り身組の部下のご機嫌とり。娼館で一晩明かしちゃったわよ。ホント、船から降りてすぐだもんね~~。グリムヒルトの男は元気一杯よね~~。だから女達から軽く見られてんのよ。言っとくけど、あんたも例に漏れずだからね?」
「……相変わらずあんたの言葉は胸に深く突き刺さるよね……」
「あんた、よくも軽く、幸せにねなんて言えたもんね~~? ちゃんと頭動いてんの? 色ボケてんじゃないわよ」
残念ながら話しは上手く逸れなかったようだ。
「あはは……お説教の時間ですか……?」
外相は腕を組んで俺を睨む。
「あの子、マグダラスの子でしょ? しかも妊娠してて、元娼婦。
この国で生きていくには充分過ぎる位、幸せには程遠そう。
しかもそんな子が何故か土地持ちの金持ち。それって嫌味にしかなんないわよ」
外相は頭を掻く。
「きっとこれからあの子もその子供も、謗りや嫌がらせを受けるんでしょうね。
金だけじゃ解決できない事もあるのよ」
その的確過ぎる意見に、俺はぐうの音も出ない。
黙って受け入れるしかない。
「あの子自身、どう思ってるか知らないけど、世の中そんな甘いもんじゃないわよ。そういう事ちゃんとわかってて理解してんなら軽々しく『幸せにね……』なんて言える訳ないでしょ?
これがわかんないなら一丁前に女遊びなんかすんじゃないわよ? わかった?」
外相が俺の脇腹を肘で突つく。
「ハイ……。ゴメンナサイ……。」
「なに馬鹿正直に謝ってんのよ!」
「グワッ!」
外相の肘鉄がなかなか良い勢いで俺の脇腹に見舞われた。
俺はたまらず悲鳴をあげて、うずくまる。
「……脇腹はダメだって……」
「あんたにはまだあの子を幸せにしてあげられる可能性が残ってるでしょ?」
その言葉に俺は外相を振り返る。
「あんた自分の事なんだと思ってんの?
あんたはあの子が生きていくって決めた、この、グリムヒルトの『海軍中将にして、敏腕宰相閣下』でしょ?
あんたが遊んだ女の子全員幸せにする事くらい、その気になれば出来るの。そういう責任の取り方もあるでしょ?」
なるほど……こいつは俺とは違う。
柔軟な発想でコロコロと一貫性がない所が苦手だが、こういう考え方を出してくるのか。
今回はこいつの言う通りだ。
「……そうだね」
俺は、祈るだけじゃなく、まだしてやれる事があるんだな……。
これは俺にとっても救いだ。
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