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139 -昵懇-
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グリムヒルト王城の外殿。王の執務室の近くで二人は出会った。
「おかえりハニー」
「あら、エンリッキ、ただいま」
腕を広げてウルリッカが飛び込んで来るのを懲りずに待つ、エンリッキ。
今まで飛び込んでくれた事など無いのに毎回お決まりの様に待ち構える。
代わりに軽く額を中指で弾かれる。
「相変わらずウルリッカはつれないな~」
それでも何処か幸せそうなエンリッキ。
「あんたは所構わずいちゃいちゃしたがるわね。一応私もあんたも上官って立場があるんだからね。それにお母上の耳に入ったら、あんたの家、また羅刹の家みたいになるんでしょ?」
母親の事を出された途端、エンリッキの顔はいつもの貼り付けた笑顔に戻る。
「俺は次男だし関係ないよ。」
「そうは言ってもほら、宰相んトコみたいな例もあるし、望まれてる事があるなら、それ優先で構わないわよ?」
「俺はウルリッカしか要らないから。家もどうでもいい」
ウルリッカは呆れた様に、でも何処か可笑しげに溜息をつきながら、答える。
「…もう、しょうがないわね」
カーサライネンの家はグリムヒルトが海賊だった時代から長く王家に仕える家系だ。その事に病的なほど誇りを持っている家で盲信的な王家への忠義を捧げている。
そんな中でエンリッキはアナバスを主に掲げているが、それはあくまでもアナバス個人に対してであって、王家の者だからではない。
カーサライネンの過剰な王家崇拝に嫌気が差しているし、それと同じだとは思われたくない。
家がエンリッキやその兄弟に求めている事はいずれかのヴィスト家から嫁をもらう事。
故にウルリッカとの結婚は認められていない。
恐らくベネディクト王の勅命を出して貰えば結婚出来るが、ウルリッカはそれを良しとしない。
そんなどうでもいい事に陛下の勅命を使わせるのは偲びないという。
ただでさえベネディクト王は勅命の多い王だ。
特に文官からの不満は強く、重臣達はその監視に余念が無い。
「そんな事より、今回の船旅はどうだった?」
「上々よ。こっちの条件は全部飲ませた。ホント誰かに褒めてもらいたい位よ」
「じゃあ、俺が褒めてあげるよ。」
「いいわ。王妃に褒めてもらうの」
「…ウルリッカ、その御守り貰ってから、ホント王妃ラブになったね」
ウルリッカの腰帯にぶら下がる王妃から直々に賜った御守りを指差す。
「失礼ね。それ以前から大好きよ!」
力一杯否定される。実際、ウルリッカはそれ以前から王妃には忠誠を誓っている。
「俺も王妃は好きだけど、そんなに最優先されるとちょっと悲しいよ」
エンリッキとしては主の妻でその主にとって重要な女性である事は間違いないし、付き従う対象である事も間違いない。
しかし自分の恋人までもがその存在にメロメロになっている事が少し複雑な心境だ。
「仕方ないじゃない。王妃可愛いんだもの。王妃になってからはえも言われぬ色気まで出てきて、無敵よ、今や。そんな可愛らしい王妃に褒めて貰えるなんて幸福よ~」
エンリッキはそんな恋人を見つめて、それでもなんだかんだ、幸せな気持ちになれる。
細々した問題はあれど、結局恋人は自分に気を許してくれているし、満足だ。
「そういや、こないだアレクと呑みに行ったんだって?俺も誘ってくれればよかったのに」
「たまにはあいつともサシで呑んでみたかったのよ。私は好きだけど、向こうはやっぱり私の事は苦手みたいね」
「まぁ、苦手だろうね。どちらかと言うと真っ直ぐな奴だから」
「でも、あいつが宰相で正解だったわね~。そう思ったわ。でも3人で呑みに行けたらいいけど、閣下に怒られちゃうんじゃない?一気に抜けちゃったら」
「そこは閣下に留守任せて皆んなで怒られるまでが様式美でしょ」
「あんたのそういうトコホント面白い。好きよ」
エンリッキはウルリッカの言葉に気分が上がる。今日も上がって来る気の重い書類仕事達を片付ける勢いがつきそうだ。
「ウルリッカ?家出るから、やっぱり結婚しよう?」
「いい歳こいて家出とか言ってんじゃないわよ」
カラカラ笑いながらウルリッカが冗談めかす。
「陛下にとってあんたの家名は使い道がある。そうである以上家を出るべきじゃないわ。私達の在り方はその次の話よ。前にも言ったでしょ?」
「…うん。そうだね。わかったよ。…今夜は?」
ウルリッカはエンリッキを見つめて答える。
「空いてるわよ」
「じゃあ、いつものとこで」
「了解」
遠くから声がかかる。
「おい、お前ら!丁度いいとこに揃ってるな。陛下のお召しだぞ」
宰相であるアレクシスが二人に手を振る。
「さて、今日の陛下はご機嫌かしら?」
「ご機嫌が麗しくない時は王妃にお縋りするしかないからね~」
「そうすると王妃が可哀想なのよね~…陛下ったらホント王妃に夢中だから。手加減ってもんを知らないのかしらね、私達のご主人様は」
そう会話しながらアレクシスの元まで歩む。
「宰相、今日はなんかあったっけ?」
「いや、王妃がセイレーン殿を連れて市井に降りられた」
エンリッキは遠い目をする。
「…それは…陛下のご様子が目に浮かぶ様だね」
「いや、それが今回はそういう事じゃないんだ」
ウルリッカとエンリッキは顔を見合わせる。
「どういう事?」
「幻獣が出たらしい」
ウルリッカとエンリッキは同時に言う。
「「幻獣⁈」」
「おかえりハニー」
「あら、エンリッキ、ただいま」
腕を広げてウルリッカが飛び込んで来るのを懲りずに待つ、エンリッキ。
今まで飛び込んでくれた事など無いのに毎回お決まりの様に待ち構える。
代わりに軽く額を中指で弾かれる。
「相変わらずウルリッカはつれないな~」
それでも何処か幸せそうなエンリッキ。
「あんたは所構わずいちゃいちゃしたがるわね。一応私もあんたも上官って立場があるんだからね。それにお母上の耳に入ったら、あんたの家、また羅刹の家みたいになるんでしょ?」
母親の事を出された途端、エンリッキの顔はいつもの貼り付けた笑顔に戻る。
「俺は次男だし関係ないよ。」
「そうは言ってもほら、宰相んトコみたいな例もあるし、望まれてる事があるなら、それ優先で構わないわよ?」
「俺はウルリッカしか要らないから。家もどうでもいい」
ウルリッカは呆れた様に、でも何処か可笑しげに溜息をつきながら、答える。
「…もう、しょうがないわね」
カーサライネンの家はグリムヒルトが海賊だった時代から長く王家に仕える家系だ。その事に病的なほど誇りを持っている家で盲信的な王家への忠義を捧げている。
そんな中でエンリッキはアナバスを主に掲げているが、それはあくまでもアナバス個人に対してであって、王家の者だからではない。
カーサライネンの過剰な王家崇拝に嫌気が差しているし、それと同じだとは思われたくない。
家がエンリッキやその兄弟に求めている事はいずれかのヴィスト家から嫁をもらう事。
故にウルリッカとの結婚は認められていない。
恐らくベネディクト王の勅命を出して貰えば結婚出来るが、ウルリッカはそれを良しとしない。
そんなどうでもいい事に陛下の勅命を使わせるのは偲びないという。
ただでさえベネディクト王は勅命の多い王だ。
特に文官からの不満は強く、重臣達はその監視に余念が無い。
「そんな事より、今回の船旅はどうだった?」
「上々よ。こっちの条件は全部飲ませた。ホント誰かに褒めてもらいたい位よ」
「じゃあ、俺が褒めてあげるよ。」
「いいわ。王妃に褒めてもらうの」
「…ウルリッカ、その御守り貰ってから、ホント王妃ラブになったね」
ウルリッカの腰帯にぶら下がる王妃から直々に賜った御守りを指差す。
「失礼ね。それ以前から大好きよ!」
力一杯否定される。実際、ウルリッカはそれ以前から王妃には忠誠を誓っている。
「俺も王妃は好きだけど、そんなに最優先されるとちょっと悲しいよ」
エンリッキとしては主の妻でその主にとって重要な女性である事は間違いないし、付き従う対象である事も間違いない。
しかし自分の恋人までもがその存在にメロメロになっている事が少し複雑な心境だ。
「仕方ないじゃない。王妃可愛いんだもの。王妃になってからはえも言われぬ色気まで出てきて、無敵よ、今や。そんな可愛らしい王妃に褒めて貰えるなんて幸福よ~」
エンリッキはそんな恋人を見つめて、それでもなんだかんだ、幸せな気持ちになれる。
細々した問題はあれど、結局恋人は自分に気を許してくれているし、満足だ。
「そういや、こないだアレクと呑みに行ったんだって?俺も誘ってくれればよかったのに」
「たまにはあいつともサシで呑んでみたかったのよ。私は好きだけど、向こうはやっぱり私の事は苦手みたいね」
「まぁ、苦手だろうね。どちらかと言うと真っ直ぐな奴だから」
「でも、あいつが宰相で正解だったわね~。そう思ったわ。でも3人で呑みに行けたらいいけど、閣下に怒られちゃうんじゃない?一気に抜けちゃったら」
「そこは閣下に留守任せて皆んなで怒られるまでが様式美でしょ」
「あんたのそういうトコホント面白い。好きよ」
エンリッキはウルリッカの言葉に気分が上がる。今日も上がって来る気の重い書類仕事達を片付ける勢いがつきそうだ。
「ウルリッカ?家出るから、やっぱり結婚しよう?」
「いい歳こいて家出とか言ってんじゃないわよ」
カラカラ笑いながらウルリッカが冗談めかす。
「陛下にとってあんたの家名は使い道がある。そうである以上家を出るべきじゃないわ。私達の在り方はその次の話よ。前にも言ったでしょ?」
「…うん。そうだね。わかったよ。…今夜は?」
ウルリッカはエンリッキを見つめて答える。
「空いてるわよ」
「じゃあ、いつものとこで」
「了解」
遠くから声がかかる。
「おい、お前ら!丁度いいとこに揃ってるな。陛下のお召しだぞ」
宰相であるアレクシスが二人に手を振る。
「さて、今日の陛下はご機嫌かしら?」
「ご機嫌が麗しくない時は王妃にお縋りするしかないからね~」
「そうすると王妃が可哀想なのよね~…陛下ったらホント王妃に夢中だから。手加減ってもんを知らないのかしらね、私達のご主人様は」
そう会話しながらアレクシスの元まで歩む。
「宰相、今日はなんかあったっけ?」
「いや、王妃がセイレーン殿を連れて市井に降りられた」
エンリッキは遠い目をする。
「…それは…陛下のご様子が目に浮かぶ様だね」
「いや、それが今回はそういう事じゃないんだ」
ウルリッカとエンリッキは顔を見合わせる。
「どういう事?」
「幻獣が出たらしい」
ウルリッカとエンリッキは同時に言う。
「「幻獣⁈」」
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