人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

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 儂の執務室に重臣達が集まった。
「で?どういう事なの?幻獣ってあの幻獣?」
 外相が宰相に問う。
「王妃が仰るには、その、幻獣だよ。幻獣が出たのは王都の郊外です。記録に残る限りグリムヒルトではここ40年は見つかっていないんですがね」
 外相の問いに答える形で宰相が書類を片手に皆に伝える。
「王妃は化け物騒ぎを演習中の騎士達から聞いて、託けと置き手紙をして出て行かれました」
 儂はその手紙を指に挟んで皆に示す。
「『それは多分幻獣だ。純血の自分にしか解決出来ないだろうから、ちょっと出て来る』そうだ。まぁ、セイレーン殿が付いているからな。滅多な事はないだろうが」
 外相が腕を組んで唸り、疑問を口にする。
「う~ん…なんで今更グリムヒルトに幻獣が…とか色々思うけど、幻獣ってそもそも素人の女の子がたった一人で御せるものなの?」
 宰相が外相の方に向き直り言う。
「正直全くの未知だな。幻獣が相手ではセイレーン殿の剣もあまり意味がないだろう」
 儂は脚を組んで、腕組みをした。
「で、あるならば、兵を率いても意味がないであろうな」
「滑空する種類ならなお、お手上げか」
 軍師が目を閉じて言った。
「結局の所、王妃に任せるしかないのが現状だな」
 儂が結論を出す。
「正確にはどこに出たの?」
 外相が宰相の方を向き再び問う。
「王都の南西の郊外にあるアラギス林道に入る前の集落だよ。まぁ、ただ出て来ただけで何の被害もないらしい。」
 宰相は外相の方を向き答え、儂に向き直る。
「正直、幻獣に関しては我らでは情報が圧倒的に不足していてどうしていいのかわかりませんね。取り囲んで捕縛出来るものでもないようですし」
 儂は宰相の言葉に首肯する。
「捕らえたという例は無いしな。
 確か幻獣は炎や吹雪を吐く種もあると聞く。
 不可思議な力があると見て間違いなかろう。
 王妃から聞く限り、神獣との契約で魔法を行使出来る様になるという。幻獣ともそう言った不可思議な意思疎通が出来るのやもしれん」
 宰相が顎に指をやり呟いた。
「こういう時、原住国家との国交が全く無いというのは辛いですね」
 外相が宰相の言に答える。
「現状、原住国家との関係は殆ど無交渉と言っていいわ。王妃がおられるから、マグダラスとは国交を持つ口実を作ろうと思えば作れるけど、その場合モトキスとの交渉が難しい事になるわね。モトキスを無視するなら、マグダラスと軍事的同盟を結ばなきゃ不味いけど、それはマグダラスが頷かないでしょうね。それにそもそも王妃が絶対に納得しないわよね。他の他国は全くの未知数。情報としてはオルシロンよりもシビディアと交渉する方が有意義だわ。オルシロンは異民の民全体を全否定してるからね。ただ、シビディアは全く伝手が無い。無理矢理伝手を作るなら、やっぱり王妃にお縋りするしかないわね」
 宰相が引き継ぎ述べる。
「更に現在、シビディアとオルシロンは緊張状態にあります。うちと交渉する事であちらの戦況がどうなるのかも読めない。機が悪過ぎる」
 軍師が更に言い添える。
「我が国だけの話をするならば、これ以上戦争は抱えたくは無い。サンドバルとは正直消耗戦に近い。国土が荒れてしまったら殆ど我が国に勝ち目は無くなる。オルシロンに攻め込まれでもしたら厄介な事になるでしょう」
「ふむ…。どこもかしこも難しい状況という訳か。万事万端とは行かぬものだな。実に面倒だ」
 投げやりに言ってみる。全て燃やしてしまえばいっそ、楽なのだが。
「…陛下、今全部燃やしてしまえとか思ってるでしょ?」
 外相が儂に白い目を向ける。
 儂は頬杖を深くつき、外相に答える。
「思っただけだ」
「そんな事思ってたら王妃に叱られちゃうわよ? 叱られたら構ってもらえなくなるんだから!」
「王妃を引き合いに出すな」
 儂は不愉快になる。
 今この城にレイティアがいない事も苛立だしい。
 外相が釘を刺す様に儂に迫った。
「今回の件はどうしたって我らでは手出しできないんだから、王妃が市井に降りた件で意地悪しちゃダメよ?」
「……わかっておる」

 儂は渋面で腕を組み、長椅子に深く凭れかかった。
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