143 / 200
143
しおりを挟む
アラギス林道はマイヤール領に向かう要所となる。
アラギス林道を抜けて更に山道に入り、峠を越えて関所があって、マイヤール領に入る。
特に手形とか書付が必要な訳じゃないけど、物流の要所となるので荷の改めなどがあったりする。
海産物なんかの足の早いものは特別に検閲を免れる。他のルートも無いわけではないけど、森が深過ぎて安全とは言い難いから、このアラギス林道が主要になってる。
アラギス林道の集落は基本的に酒場ばかりが集まっていて、他にはちょっとした万屋さんがあるくらいでこじんまりした集落だ。
というのも、アラギス林道は朝王都を馬車で出れば、昼過ぎには辿り着く。
なのでここでいない訳ではないけど宿泊する人は少ない。
ここで宿泊するよりも、林道を抜け、峠の関所を抜けた付近にある大きな集落の方で宿を取る事が多く、賑わっているらしい。
私達は昼を過ぎてから王都を出たので着いたのは夜だった。
宿屋は宿屋というよりも酒場にある空き部屋を貸してくれる様な形式だ。
私達は宿屋併設の酒場に入って先ずは食事を摂った。
そこで酒場の主人に話を聞く事にする。
「ねぇ、この辺りに化け物が出るって聞いたんだけど、何か知ってる?」
「ああ、嬢ちゃん達も捕まえようってのか?」
「え! 捕まえようとしてる人達がいるの⁈」
それは大変だ。多分幻獣は捕まらないけど、捕まえようとした人達が怪我をする可能性もある。
「ああ。腕に覚えのある奴らが徒党組んで張り切ってるぞ。なんでも変わった毛並みの狼らしいからな。毛を剥いで売る気だろうよ」
ああ、本当に早くなんとかしなきゃ。
仮に幻獣を仕留められたとしても皮を剥ぐ前に塵になってしまうのに。
その毛並みを採る事が出来るのは、羊の型をしたものだけだ。
そんな無駄死にをさせる訳にいかない。そうなったら人間の方も無事とは言えない被害が出てる筈だ。
「どの位の人数で徒党組んでるの?」
「そうだな、5、6人のパーティが3つってとこかな」
その中に純血の人は多分いないだろう。
いたとしたらもっと問題だけど。
でも純血の人だったら、これが不可能で無意味な事を知ってると思う。
なのでいる可能性は限りなく低い。
「それらに関しては私が抑えられる。お気になさるな」
へリュ様が私に耳打ちして断言してくれる。
本当にへリュ様は頼りになる。一緒にいて陛下の次に安心感のある人だ。
「何時頃になったら出るの?」
「そうだな…結構夜遅く、夜半になってから出る事が多いな。南の森の木陰から遠吠えして場所を知らせてくる。顔を覗かせてそのまま去っていくぞ」
「…そうなんだ…」
幻獣にも色々と格がある。
格の高い幻獣は念話が出来るらしい。私は念話が出来る種類の幻獣に遭った事はないけど、そういう種類がいる事はマグダラスの文献でたくさん見た事がある。
もし、今出て来ている幻獣も念話が出来るものなら、もしかしたら何か訴えたい事があるのかもしれない。
早く見つけてあげなきゃ。
「ありがとう。私達も南の森に行ってみるわ」
「女二人でか。そっちの姐さんは腕が立ちそうだが、嬢ちゃんは大丈夫なのか?」
「大丈夫よ! ありがとう!」
私は主人ににっこり笑ってお礼を言う。
手早く食事を摂って、夜半に備えて少し休む事にした。
◇◇◇
「起きられよ、……ティア様」
宿の部屋で少しだけ休むつもりだったのに、本格的に寝てしまった様だ。
「……へリュ様……起こして下さってありがとうございます……」
私は覚醒したばかりのぼんやりした頭でお礼を言う。
「……近頃、夜もよく眠ってはおられぬのだろう?」
「え?何故ですか?」
知らぬ間に私の頬は紅潮していく。
「……あの男が加減を知らぬといつも侍女達が心配している」
「……ああ……その……それは……」
「婚姻以降、毎晩毎晩貴女に無理をさせて碌に睡眠も取れていないと」
「大丈夫ですよ? つい最近月のものがありましたので、その時は労って頂きましたし」
「……ない時は無理をしているのか?」
「いえ、決してそういう訳ではなくて……」
「夫婦の事だ。野暮を言うつもりはないが、……ただ、ご自愛されよ」
「……ご心配をおかけしてすみません。ありがとうございます」
私は顔が赤いだろう。自分達の営みが周りに筒抜けな状態も結構恥ずかしい。
……多分これは陛下にお願いしても聞き入れて貰えないと思うので、どうしようか……。
頼めば頼むほど、逆に激化する可能性の方が高い……。
意地悪な顔をしてきっと言う筈だ。
『ならば拒んで見せよ』って。
……出来ない事を知っていて、わざと試す様な事をする。
陛下のそういう所は本当に困ってしまう。
私にも実はどうしようもない事なので、諦めて受け入れるしかないなぁと思っていた所だ。
私は赤面しながら出かける準備を整える。
へリュ様はもう準備万端だ。
私の準備が済むと二人で酒場を出た。
アラギス林道を抜けて更に山道に入り、峠を越えて関所があって、マイヤール領に入る。
特に手形とか書付が必要な訳じゃないけど、物流の要所となるので荷の改めなどがあったりする。
海産物なんかの足の早いものは特別に検閲を免れる。他のルートも無いわけではないけど、森が深過ぎて安全とは言い難いから、このアラギス林道が主要になってる。
アラギス林道の集落は基本的に酒場ばかりが集まっていて、他にはちょっとした万屋さんがあるくらいでこじんまりした集落だ。
というのも、アラギス林道は朝王都を馬車で出れば、昼過ぎには辿り着く。
なのでここでいない訳ではないけど宿泊する人は少ない。
ここで宿泊するよりも、林道を抜け、峠の関所を抜けた付近にある大きな集落の方で宿を取る事が多く、賑わっているらしい。
私達は昼を過ぎてから王都を出たので着いたのは夜だった。
宿屋は宿屋というよりも酒場にある空き部屋を貸してくれる様な形式だ。
私達は宿屋併設の酒場に入って先ずは食事を摂った。
そこで酒場の主人に話を聞く事にする。
「ねぇ、この辺りに化け物が出るって聞いたんだけど、何か知ってる?」
「ああ、嬢ちゃん達も捕まえようってのか?」
「え! 捕まえようとしてる人達がいるの⁈」
それは大変だ。多分幻獣は捕まらないけど、捕まえようとした人達が怪我をする可能性もある。
「ああ。腕に覚えのある奴らが徒党組んで張り切ってるぞ。なんでも変わった毛並みの狼らしいからな。毛を剥いで売る気だろうよ」
ああ、本当に早くなんとかしなきゃ。
仮に幻獣を仕留められたとしても皮を剥ぐ前に塵になってしまうのに。
その毛並みを採る事が出来るのは、羊の型をしたものだけだ。
そんな無駄死にをさせる訳にいかない。そうなったら人間の方も無事とは言えない被害が出てる筈だ。
「どの位の人数で徒党組んでるの?」
「そうだな、5、6人のパーティが3つってとこかな」
その中に純血の人は多分いないだろう。
いたとしたらもっと問題だけど。
でも純血の人だったら、これが不可能で無意味な事を知ってると思う。
なのでいる可能性は限りなく低い。
「それらに関しては私が抑えられる。お気になさるな」
へリュ様が私に耳打ちして断言してくれる。
本当にへリュ様は頼りになる。一緒にいて陛下の次に安心感のある人だ。
「何時頃になったら出るの?」
「そうだな…結構夜遅く、夜半になってから出る事が多いな。南の森の木陰から遠吠えして場所を知らせてくる。顔を覗かせてそのまま去っていくぞ」
「…そうなんだ…」
幻獣にも色々と格がある。
格の高い幻獣は念話が出来るらしい。私は念話が出来る種類の幻獣に遭った事はないけど、そういう種類がいる事はマグダラスの文献でたくさん見た事がある。
もし、今出て来ている幻獣も念話が出来るものなら、もしかしたら何か訴えたい事があるのかもしれない。
早く見つけてあげなきゃ。
「ありがとう。私達も南の森に行ってみるわ」
「女二人でか。そっちの姐さんは腕が立ちそうだが、嬢ちゃんは大丈夫なのか?」
「大丈夫よ! ありがとう!」
私は主人ににっこり笑ってお礼を言う。
手早く食事を摂って、夜半に備えて少し休む事にした。
◇◇◇
「起きられよ、……ティア様」
宿の部屋で少しだけ休むつもりだったのに、本格的に寝てしまった様だ。
「……へリュ様……起こして下さってありがとうございます……」
私は覚醒したばかりのぼんやりした頭でお礼を言う。
「……近頃、夜もよく眠ってはおられぬのだろう?」
「え?何故ですか?」
知らぬ間に私の頬は紅潮していく。
「……あの男が加減を知らぬといつも侍女達が心配している」
「……ああ……その……それは……」
「婚姻以降、毎晩毎晩貴女に無理をさせて碌に睡眠も取れていないと」
「大丈夫ですよ? つい最近月のものがありましたので、その時は労って頂きましたし」
「……ない時は無理をしているのか?」
「いえ、決してそういう訳ではなくて……」
「夫婦の事だ。野暮を言うつもりはないが、……ただ、ご自愛されよ」
「……ご心配をおかけしてすみません。ありがとうございます」
私は顔が赤いだろう。自分達の営みが周りに筒抜けな状態も結構恥ずかしい。
……多分これは陛下にお願いしても聞き入れて貰えないと思うので、どうしようか……。
頼めば頼むほど、逆に激化する可能性の方が高い……。
意地悪な顔をしてきっと言う筈だ。
『ならば拒んで見せよ』って。
……出来ない事を知っていて、わざと試す様な事をする。
陛下のそういう所は本当に困ってしまう。
私にも実はどうしようもない事なので、諦めて受け入れるしかないなぁと思っていた所だ。
私は赤面しながら出かける準備を整える。
へリュ様はもう準備万端だ。
私の準備が済むと二人で酒場を出た。
0
あなたにおすすめの小説
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
イケメンとテンネン
流月るる
恋愛
ある事情から、イケメンと天然女子を毛嫌いする咲希。彼らを避けて生活していた、ある日のこと。ずっと思い続けてきた男友達が、天然女子と結婚することに! しかもその直後、彼氏に別れを告げられてしまった。思わぬダブルショックに落ち込む咲希。そんな彼女に、犬猿の仲である同僚の朝陽が声をかけてきた。イケメンは嫌い! と思いつつ、気晴らしのため飲みに行くと、なぜかホテルに連れ込まれてしまい――!? 天邪鬼なOLとイケメン同僚の、恋の攻防戦勃発!
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる