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邑の人達に一旦戻って陛下にお伝えする事を説明する。
「私一度、王城に帰って貴方達の存在を陛下にお伝えするわね。そして貴方達が安心して暮らせる様に陛下にお願いするから」
今まで怯えて暮らしていた人達は恐怖の対象だった陛下の名前を出すと一様に不安げな顔をして私を見つめた。
ここは努めて笑顔で皆んなに接する。
「大丈夫よ。今のグリムヒルトのベネディクト王は決して無下に人の命を奪う様な人じゃないし、純血を迫害する様な人じゃないわ。もしそんな人なら私なんて今頃酷い扱いを受けてる筈だもの。でも、とっても優しくして頂いてるわ。だから安心して?」
私の言葉にほんの少しだけ邑の皆んなの顔が緩む。
私がここを離れている間、きっと不安だろう。しばらくはこの邑に通ってあげた方が安心してもらえそうだ。
また案件を抱えてしまって、せっかく最近良くなった陛下のご機嫌が斜めになってしまうかしら?
一生懸命説明してわかって貰わないと。
私とヘリュ様はまたオレリアに案内されて洞窟に戻って元来た道を引き返す。
洞窟を出ると明るい日差しが目に飛び込んで来る。
私はついて来てくれたオレリアを振り返って笑いかける。
「オレリア、ここまでで大丈夫。オレリアはしばらくは邑に隠れていた方がいいわ。色んな人に姿をたくさん見られてしまってるから」
『そうする。アナティアリアスみつけたからもうでていかない。ちがうひとたち、こわい』
「違う人達?」
『たましいのいろ、ちがう。もりともかわともそらともだいちともちがうひとたち。おいかけてくるからこわい』
そうか。幻獣には純血と異民の人達がそんな風に違う様に見えるのね。きっと姿を見られて追い回されて怖い思いをした事もあったのだろう。
「そんな怖い思いをしてもライラを助けたかったのね……。力になれなくてごめんなさい」
『ライラ、ことわりといってた。しんじゅうのもとへかえったといってた。だからさびしいしかなしいけど、へいき』
私はライラの頭を優しく撫でる。
「……貴方達幻獣も安心して暮らしていける様にちゃんと陛下にお願いするからね?」
オレリアは目を閉じて私に大人しく撫でられている。
そうしてしばらく撫でていると、木陰からガサリと音がして、男達、15人程で私達を取り囲む。
ヘリュ様がカトラスを両刀抜いて私の前に立ちはだかった。
「おい、小娘! お前狼を手懐けたのか!」
私もいつでも魔法を使える様に身構えながら男に答える。
「別に手懐けた訳じゃないわ。この仔は珍しい毛色の狼じゃないわ。幻獣なの。だから念話が出来るだけよ」
「お前の言う事なら聞く訳だな! お前も狼と一緒に来い!」
男達は抜刀する。ヘリュ様も戦闘体制に入る。
出来れば戦闘なんかせずに終わらせたい。諦めてくれる様に言葉を重ねてみる。
「昨日の夜、ヘリュ様に負けたのにまだ諦めないの?
それにこの仔の皮は剥ぐ事は出来ないわ! 死んでしまったら塵に還ってしまうんだから! 無意味な事はやめて他の獲物を狙って!」
男の一人が私に卑下た笑みを向けて言い放つ。
「お前がいれば言う事聞くなら、見世物にするだけだ。お前も可愛がってやるからな」
夕べのヘリュ様との闘いで完敗したにも関わらず、何故こんなに自信たっぷりなんだろうか?
ヘリュ様もそれに気がついたみたいでこっそりと私に耳打ちする。
「恐らく罠がある。この手合いの考えそうな事だ。相手の誘導に乗らぬ様に」
私は男達を見据えながらコクリと頷いて、オレリアに小声で言う。
「オレリア? 貴方は姿を隠して?そして男達が引き上げるまで邑には向かわないでね。跡をつけられたら厄介だから」
『わかった。いんとんつかう』
「いんとん?」
『すがたけせる』
「そうなの?便利ね! じゃあ姿を消していてね」
オレリアは頷くと姿を消す。
「狼が消えた⁈」
「そっちの小娘を捕まえて出て来るように言わせりゃいい!」
男達の目標は私になった。
ヘリュ様が顔をこちらに向けてコソリと私に言う。
「私の背に隠れていて欲しい」
「闘いの邪魔になりませんか?」
「背後に居てくれる方が護り易い」
「わかりました」
ヘリュ様の背中に庇われるのは安心だ。でも守られてるだけでは申し訳ないので、背後は私が護る位の気持ちで身構える。
男達が一斉にヘリュ様に刃を振り上げた。
ある男が横一線に斬り込んで来たのをカトラスで弾き飛ばす。手首に峰を撃ち込まれて剣を取り落とす。
更に続けて男の一人が縦一線で斬り込む。それをカトラスで滑らせる様にいなして剣先で男の手から器用に剣を取り上げる。そしてそれを遠くに飛ばしてしまう。
「お前達では相手にならない。諦めろ」
ヘリュ様は本気にすらなっていない。グレーゲル達と闘った時の方がまだ本気だった様に見える。
「その小娘を渡せ!」
「断る。これ以上やるなら、私も本気でいかせて貰うが?」
ヘリュ様はそう宣言すると今まで逆刃で持っていたカトラスを持ち替える。
男達はたじろぐ。ヘリュ様の手加減があったから彼らは今生きている。それは充分にわかっているだろう。
「わ、わかった! 降参だ!」
男の一人がそう声を上げると次々に他の男達も剣を納める。
そしてゾロゾロと引き上げていく。
諦めてくれた様で良かった。
ふぅと一つ溜息を吐いて、ふと空を見上げると陽はもう随分高い位置にあった。
「私一度、王城に帰って貴方達の存在を陛下にお伝えするわね。そして貴方達が安心して暮らせる様に陛下にお願いするから」
今まで怯えて暮らしていた人達は恐怖の対象だった陛下の名前を出すと一様に不安げな顔をして私を見つめた。
ここは努めて笑顔で皆んなに接する。
「大丈夫よ。今のグリムヒルトのベネディクト王は決して無下に人の命を奪う様な人じゃないし、純血を迫害する様な人じゃないわ。もしそんな人なら私なんて今頃酷い扱いを受けてる筈だもの。でも、とっても優しくして頂いてるわ。だから安心して?」
私の言葉にほんの少しだけ邑の皆んなの顔が緩む。
私がここを離れている間、きっと不安だろう。しばらくはこの邑に通ってあげた方が安心してもらえそうだ。
また案件を抱えてしまって、せっかく最近良くなった陛下のご機嫌が斜めになってしまうかしら?
一生懸命説明してわかって貰わないと。
私とヘリュ様はまたオレリアに案内されて洞窟に戻って元来た道を引き返す。
洞窟を出ると明るい日差しが目に飛び込んで来る。
私はついて来てくれたオレリアを振り返って笑いかける。
「オレリア、ここまでで大丈夫。オレリアはしばらくは邑に隠れていた方がいいわ。色んな人に姿をたくさん見られてしまってるから」
『そうする。アナティアリアスみつけたからもうでていかない。ちがうひとたち、こわい』
「違う人達?」
『たましいのいろ、ちがう。もりともかわともそらともだいちともちがうひとたち。おいかけてくるからこわい』
そうか。幻獣には純血と異民の人達がそんな風に違う様に見えるのね。きっと姿を見られて追い回されて怖い思いをした事もあったのだろう。
「そんな怖い思いをしてもライラを助けたかったのね……。力になれなくてごめんなさい」
『ライラ、ことわりといってた。しんじゅうのもとへかえったといってた。だからさびしいしかなしいけど、へいき』
私はライラの頭を優しく撫でる。
「……貴方達幻獣も安心して暮らしていける様にちゃんと陛下にお願いするからね?」
オレリアは目を閉じて私に大人しく撫でられている。
そうしてしばらく撫でていると、木陰からガサリと音がして、男達、15人程で私達を取り囲む。
ヘリュ様がカトラスを両刀抜いて私の前に立ちはだかった。
「おい、小娘! お前狼を手懐けたのか!」
私もいつでも魔法を使える様に身構えながら男に答える。
「別に手懐けた訳じゃないわ。この仔は珍しい毛色の狼じゃないわ。幻獣なの。だから念話が出来るだけよ」
「お前の言う事なら聞く訳だな! お前も狼と一緒に来い!」
男達は抜刀する。ヘリュ様も戦闘体制に入る。
出来れば戦闘なんかせずに終わらせたい。諦めてくれる様に言葉を重ねてみる。
「昨日の夜、ヘリュ様に負けたのにまだ諦めないの?
それにこの仔の皮は剥ぐ事は出来ないわ! 死んでしまったら塵に還ってしまうんだから! 無意味な事はやめて他の獲物を狙って!」
男の一人が私に卑下た笑みを向けて言い放つ。
「お前がいれば言う事聞くなら、見世物にするだけだ。お前も可愛がってやるからな」
夕べのヘリュ様との闘いで完敗したにも関わらず、何故こんなに自信たっぷりなんだろうか?
ヘリュ様もそれに気がついたみたいでこっそりと私に耳打ちする。
「恐らく罠がある。この手合いの考えそうな事だ。相手の誘導に乗らぬ様に」
私は男達を見据えながらコクリと頷いて、オレリアに小声で言う。
「オレリア? 貴方は姿を隠して?そして男達が引き上げるまで邑には向かわないでね。跡をつけられたら厄介だから」
『わかった。いんとんつかう』
「いんとん?」
『すがたけせる』
「そうなの?便利ね! じゃあ姿を消していてね」
オレリアは頷くと姿を消す。
「狼が消えた⁈」
「そっちの小娘を捕まえて出て来るように言わせりゃいい!」
男達の目標は私になった。
ヘリュ様が顔をこちらに向けてコソリと私に言う。
「私の背に隠れていて欲しい」
「闘いの邪魔になりませんか?」
「背後に居てくれる方が護り易い」
「わかりました」
ヘリュ様の背中に庇われるのは安心だ。でも守られてるだけでは申し訳ないので、背後は私が護る位の気持ちで身構える。
男達が一斉にヘリュ様に刃を振り上げた。
ある男が横一線に斬り込んで来たのをカトラスで弾き飛ばす。手首に峰を撃ち込まれて剣を取り落とす。
更に続けて男の一人が縦一線で斬り込む。それをカトラスで滑らせる様にいなして剣先で男の手から器用に剣を取り上げる。そしてそれを遠くに飛ばしてしまう。
「お前達では相手にならない。諦めろ」
ヘリュ様は本気にすらなっていない。グレーゲル達と闘った時の方がまだ本気だった様に見える。
「その小娘を渡せ!」
「断る。これ以上やるなら、私も本気でいかせて貰うが?」
ヘリュ様はそう宣言すると今まで逆刃で持っていたカトラスを持ち替える。
男達はたじろぐ。ヘリュ様の手加減があったから彼らは今生きている。それは充分にわかっているだろう。
「わ、わかった! 降参だ!」
男の一人がそう声を上げると次々に他の男達も剣を納める。
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