171 / 200
171
しおりを挟む
「状況は?」
結局マイヤールに着いて早々、蜻蛉返りになってしまう。
マイヤールにいた時点で、ギネゼ領に帰っていた軍師に領軍を出し、王城を海から囲む様伝令を出す。
儂は黒馬を駆りながら、先程王城からやって来て合流した二人目の伝令係に訊ねた。
「はっ! 詳細はまだわかりませんが、賊の数は多くはありません。王城に居られた、ハーヴィスト閣下、カーサライネン閣下も拘束されている模様です。どうやら賊は出入りの商人に紛れて王城に潜入し、挙兵。外殿のお茶会の会場である海遊庭園、ハーヴィスト閣下の執務室、カーサライネン閣下の執務室を押さえた様です」
茶会があった為、普段よりも出入りが激しく、警備に不備が出たのだろう。
勝手知ったる儂の王城だ。幾らでもやりようはあるが、問題はレイティアだ。宰相も法相も放っておいても問題ないだろうが、レイティアは相手の要求によってはきっと無茶をする。
「で? 賊は何か要求は寄越したか?」
「はい! 要求は王妃陛下のお茶会のお客人の一部が解放されました時に託けられました」
「内容は?」
「一つは均等税法の撤廃。一つは此度の4ヶ国同盟の参加拒否、一つは王妃陛下の排斥です」
「そうか。ご苦労だった。お前と馬は休め」
「賜りました!」
伝令係の馬は減速し、どんどん小さくなって闇に溶けて消えていった。
……武具を運ぶ者達を招き入れ、手数と武器を増やした上で、中の叛逆者と共に挙兵し、要点だけを押さえて儂に要求を飲ませようという事か。
馬に跨り手綱を引きながら、要求を反芻してみるが儂は違和感を覚える。
これだけ手間や金をかけて、奴らの要求は反逆ではなく、叛逆だ。
何故、レイティアの排斥なのだ? この要求だけが何か違和感を感じる。
地の民への優遇政策に不満を持つ者達を唆して、レイティアを排斥させるのが本当の狙いの様な気がしてならない。
賊は一枚岩ではないのか、それともどこぞの誰かが糸を引いているか……
と、なるとそのどこぞの誰かの本丸はどれだ?
なんにせよ完全に後手に回っているこの状況を打破せねばどこぞの誰かの思う壺だ。
複数の商会を作っているという事は、運び入れられた武器、特に鏃は一度の戦で使う量を均すと1万本程度、それに匹敵する数、もしくはそれ以上の数が王都に運び込まれた可能性が高い。
だとして、叛逆だった場合そんなに必要だろうか?
そもそも儂に要求を飲ませるだけなら弓など必要ない。
賊は王城全体を乗っ取れるほどには多くない。要点のみの制圧なのを見てもそれは間違いない。ならば立て篭もるには無理がある。
……弓は違う用途で使用される?
思考していると次の伝令係が先頭を走る儂とすれ違った。
三人目の伝令係は一旦馬を止め、踵を返した。儂はスピードを若干緩め、伝令係が儂の横に着くのを待った。
「陛下、申し上げます!」
「申せ」
「王妃陛下が、亡くなられたとの情報です!」
「……わかった。他に情報はあるか?」
「お茶会のお客人達は皆無事に解放されたという事です」
「そうか、以上か?」
「はい!」
「わかった。ご苦労だったな、休め」
「賜りました!」
伝令係の馬がまた、減速し、小さくなって闇に溶けた。
儂は馬に鞭を入れる。すると馬は嘶き少し脚を早めた。
儂は駆けながら気立よく微笑んだ別れ際のレイティアの顔を思い出す。
あれの思っている事は何故かわかる。あれは寂しがっていた。それでも笑うのはあれの強さだが、弱さの裏返しでもある。
あれは弱った時ほど笑う。
そういう女だ。
ただ。あれの顔を思い返しても悲しみや心配は湧いてこない。
恐らくレイティアは生きている。
その様な事を考えてる内に、王都の郊外にまで戻ってきた。まだ朝も明けきらぬ薄暗い空だ。
月夜でよかった。おかげでこれだけの早駆けをさせられた。
そして王城の海は満潮の時間で、王城の海側に充分の数の軍船をつける事が出来る。
マイヤール領の領軍と共にやって来たが、本隊が到着するのはまだまだかかるだろう。
儂は王都全体を見渡せる丘へと馬を歩ませる。
丘から見える王城はいつもよりも煌々と灯りが焚かれている。
そして、あちらでは宰相と法相が鍔迫り合いを演じている所だろう。
儂の仕事は簡単だ。王城を囲い込み、手駒を侵入させて、中の情報を得る。
中身にあの二人を置いた事は正解だった。
あれらはこういう事に血湧き肉躍るうつけ者だ。あれらが引っ掻き回し、戦況を混乱させてくれる事だろう。
イロラは他領がこれに乗じて何か起こさない様に、睨みを効かせる為マイヤール領に篭らせている。
儂の借りて来られたのは5000。囲う程度ならこの位で十分だろう。
王城を眺めていると、海の北から続々と軍船がやってくる。
そして王城の出航口を完全に囲い込んだ。
軍旗は錨をモチーフにした紋章。
軍師のギネゼ領の領軍の軍船だ。
「軍師の船が来た。伝令を送る」
伝令係の男が儂の馬の傍で膝を折る。
「蟻の子一匹通してはならん」
儂の勘が正しければ、レイティアは船に乗せられる。
結局マイヤールに着いて早々、蜻蛉返りになってしまう。
マイヤールにいた時点で、ギネゼ領に帰っていた軍師に領軍を出し、王城を海から囲む様伝令を出す。
儂は黒馬を駆りながら、先程王城からやって来て合流した二人目の伝令係に訊ねた。
「はっ! 詳細はまだわかりませんが、賊の数は多くはありません。王城に居られた、ハーヴィスト閣下、カーサライネン閣下も拘束されている模様です。どうやら賊は出入りの商人に紛れて王城に潜入し、挙兵。外殿のお茶会の会場である海遊庭園、ハーヴィスト閣下の執務室、カーサライネン閣下の執務室を押さえた様です」
茶会があった為、普段よりも出入りが激しく、警備に不備が出たのだろう。
勝手知ったる儂の王城だ。幾らでもやりようはあるが、問題はレイティアだ。宰相も法相も放っておいても問題ないだろうが、レイティアは相手の要求によってはきっと無茶をする。
「で? 賊は何か要求は寄越したか?」
「はい! 要求は王妃陛下のお茶会のお客人の一部が解放されました時に託けられました」
「内容は?」
「一つは均等税法の撤廃。一つは此度の4ヶ国同盟の参加拒否、一つは王妃陛下の排斥です」
「そうか。ご苦労だった。お前と馬は休め」
「賜りました!」
伝令係の馬は減速し、どんどん小さくなって闇に溶けて消えていった。
……武具を運ぶ者達を招き入れ、手数と武器を増やした上で、中の叛逆者と共に挙兵し、要点だけを押さえて儂に要求を飲ませようという事か。
馬に跨り手綱を引きながら、要求を反芻してみるが儂は違和感を覚える。
これだけ手間や金をかけて、奴らの要求は反逆ではなく、叛逆だ。
何故、レイティアの排斥なのだ? この要求だけが何か違和感を感じる。
地の民への優遇政策に不満を持つ者達を唆して、レイティアを排斥させるのが本当の狙いの様な気がしてならない。
賊は一枚岩ではないのか、それともどこぞの誰かが糸を引いているか……
と、なるとそのどこぞの誰かの本丸はどれだ?
なんにせよ完全に後手に回っているこの状況を打破せねばどこぞの誰かの思う壺だ。
複数の商会を作っているという事は、運び入れられた武器、特に鏃は一度の戦で使う量を均すと1万本程度、それに匹敵する数、もしくはそれ以上の数が王都に運び込まれた可能性が高い。
だとして、叛逆だった場合そんなに必要だろうか?
そもそも儂に要求を飲ませるだけなら弓など必要ない。
賊は王城全体を乗っ取れるほどには多くない。要点のみの制圧なのを見てもそれは間違いない。ならば立て篭もるには無理がある。
……弓は違う用途で使用される?
思考していると次の伝令係が先頭を走る儂とすれ違った。
三人目の伝令係は一旦馬を止め、踵を返した。儂はスピードを若干緩め、伝令係が儂の横に着くのを待った。
「陛下、申し上げます!」
「申せ」
「王妃陛下が、亡くなられたとの情報です!」
「……わかった。他に情報はあるか?」
「お茶会のお客人達は皆無事に解放されたという事です」
「そうか、以上か?」
「はい!」
「わかった。ご苦労だったな、休め」
「賜りました!」
伝令係の馬がまた、減速し、小さくなって闇に溶けた。
儂は馬に鞭を入れる。すると馬は嘶き少し脚を早めた。
儂は駆けながら気立よく微笑んだ別れ際のレイティアの顔を思い出す。
あれの思っている事は何故かわかる。あれは寂しがっていた。それでも笑うのはあれの強さだが、弱さの裏返しでもある。
あれは弱った時ほど笑う。
そういう女だ。
ただ。あれの顔を思い返しても悲しみや心配は湧いてこない。
恐らくレイティアは生きている。
その様な事を考えてる内に、王都の郊外にまで戻ってきた。まだ朝も明けきらぬ薄暗い空だ。
月夜でよかった。おかげでこれだけの早駆けをさせられた。
そして王城の海は満潮の時間で、王城の海側に充分の数の軍船をつける事が出来る。
マイヤール領の領軍と共にやって来たが、本隊が到着するのはまだまだかかるだろう。
儂は王都全体を見渡せる丘へと馬を歩ませる。
丘から見える王城はいつもよりも煌々と灯りが焚かれている。
そして、あちらでは宰相と法相が鍔迫り合いを演じている所だろう。
儂の仕事は簡単だ。王城を囲い込み、手駒を侵入させて、中の情報を得る。
中身にあの二人を置いた事は正解だった。
あれらはこういう事に血湧き肉躍るうつけ者だ。あれらが引っ掻き回し、戦況を混乱させてくれる事だろう。
イロラは他領がこれに乗じて何か起こさない様に、睨みを効かせる為マイヤール領に篭らせている。
儂の借りて来られたのは5000。囲う程度ならこの位で十分だろう。
王城を眺めていると、海の北から続々と軍船がやってくる。
そして王城の出航口を完全に囲い込んだ。
軍旗は錨をモチーフにした紋章。
軍師のギネゼ領の領軍の軍船だ。
「軍師の船が来た。伝令を送る」
伝令係の男が儂の馬の傍で膝を折る。
「蟻の子一匹通してはならん」
儂の勘が正しければ、レイティアは船に乗せられる。
0
あなたにおすすめの小説
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
イケメンとテンネン
流月るる
恋愛
ある事情から、イケメンと天然女子を毛嫌いする咲希。彼らを避けて生活していた、ある日のこと。ずっと思い続けてきた男友達が、天然女子と結婚することに! しかもその直後、彼氏に別れを告げられてしまった。思わぬダブルショックに落ち込む咲希。そんな彼女に、犬猿の仲である同僚の朝陽が声をかけてきた。イケメンは嫌い! と思いつつ、気晴らしのため飲みに行くと、なぜかホテルに連れ込まれてしまい――!? 天邪鬼なOLとイケメン同僚の、恋の攻防戦勃発!
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる