【本編完結】白紙の未来

Popo

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第36話

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「杏の様子はどうだ。」

「まだ、寝ておられます。」

「そうか。今日の分は終わったからそっちに向かう。」

「お待ちしております。紫苑様。」


電話を切り、病院に向かう準備をする。

「クソッ。」

杏は先日かつて橋本恭についていた奴らに誘拐されてしまった。
特にあの学校は古いからセキュリティなんてほぼないことへの対策が一足遅かった。
防犯カメラはないし、杏にGPSもない。捜索には時間がかかった。

レイプされていた杏はリンチもされていたのか、体のそこら中に浅く怪我があり、血が薄く出ている。
さらに殴られて時間が経っている怪我は紫色になっていて急いで病院に連れて行った。
男5人に囲まれて無事な人のほうが少ないだろうが、ここまでとは。


病院の入り口についたときに徹から電話が来た。

「紫苑様、杏様が目を覚まされたのですが、錯乱状態でして部屋から出ていかれてしまいました。」

「いい。もう見つけてある。」

「お部屋でお待ちしております。」

徹からの電話がかかってきた時点で遠くから杏が来ているのが見えていた。
杏を着ていた服で包み担いで捕獲する。

暴れる杏を力で抑えて病室へ戻る。
錯乱状態開けじゃなくて発情もしているらしく、発語ができていないようだったが急におとなしくなったのでベッドに運び、発情期の薬を飲ませた。
このまま脱走することが多くなれば、ベッドに縛ることも考えなくてはいけないが…。

しゃべっても伝わっていないようでとりあえず再び暴れようとする杏を押さえ看護師に包帯を取ってもらう。
まぶたが殴られた影響で腫れていたのと少し切れていたための包帯なので外しても問題ないそうだ。

が、Ωのフェロモンが駄々洩れしている状態は俺にも徹にもリスクがある。フェロモンに耐性があったとしても、αであるからだが反応しないわけではない。

再び脱走しないように監視役をおいて家に帰った。

本当に危なかったのだ。運命の番のフェロモンを舐めていた。
あそこが病院じゃなかったら、杏が元気だったら…俺は杏の同意を求めずに体を求めていた。
杏はすでにα欠乏症により自分が発情しているということが分からないというのに。

次の日も病室へ向かうが昨日よりフェロモンの匂いがすごかったので部屋に入らずに眺めて仕事へ向かった。
まだ俺は、杏に完全に信頼されていないから何か杏に対して不利益な行動をすればすぐに見てもらえなくなるだろう。
それは、あの家で育った杏の自己防衛であることはわかっているが、自分が耐えられない。

無性にイライラするのは頼られないからだろう。
灰皿に置かれた大量の吸い殻をみて自嘲した。
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