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第37話
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杏の発情期状態は一か月近く続いた。
「しお。しおはどこ。」
「俺か?俺のことなのか?俺はここにいるぞ。」
「なんで、なんでそんなとおいの。」
ベッドの傍の椅子に座っていただけなのだが、お気に召さなかったらしい。
今日は強めの薬を飲んでいるし、何かあったら徹が止めてくれるだろうから安心して杏の傍に居られるが、本人が望んでいることが分からない。
「しお…。ここ。ここいて。」
「ん?ベッドの上?」
ぺしぺしとたたかれ、指定されたベッドの上に胡坐をかく。
杏は満足したのか胡坐の脚を交差してできたスペースに頭をおいて子犬のようにすりすりしてくる。
かわいい。
可愛すぎる。
また別の日。
「杏様が、脱走されました。」
「見張りはなにをやっているんだ。」
「錯乱状態だったようで過呼吸になった杏様への拘束を緩くした際に逃げてしまわれたようです。」
「どこにいるのかわかっているんだよな。」
「はい。こちらです、ご案内いたします。」
廊下の長椅子のそばに置いてあった観葉植物と長椅子に挟まれるように縮こまっていた。
ガタガタと震える杏にゆっくりと近く。
「寒い。寒い。寒い。寒い。」
そうブツブツと呟きながらも時折周りを警戒している。
杏はよくうなされているときも「寒い。」という。
本人に聞いてみたところ全く言っている記憶はないようで本当に寒い訳ではなく無意識に言っているらしかった。
心の寒さなのかもしれない。
俺を視認した杏は頭を守るようにしてさらに縮こまった。俺を認識しているんじゃなくて人に怯えているようだった。
「杏。あーん。」
目線を同じにするためにしゃがみなるべく落ち着いた声で声をかける。
「ごめんなさい。許してください。ごめんなさい。」
「杏。こっちみてごらん。怖くないよ。」
腕で隠していた頭を少しずつ上げてこっちに向く。真っ暗の目はいつもより光がなく正気がない。
「あん。おいで。帰ろう?」
「し…おん…さん?」
「そうだ。迎えにきた。」
「俺帰りたい。俺、ここ嫌なの。お父さんがきちゃう。」
杏のクソ親がいる病院ではないのだが、そのことを理解していない杏にはかなりストレスだったようだ。
「一回部屋行って確認しよう。」
「俺紫苑さんの部屋にいたい。帰りたい。」
俺だと認識した途端縋ってくる杏が愛おし過ぎる。
もっと俺に依存して欲しい欲が出てきてしまうが冷静になる。
とりあえず病室に戻るため杏を抱っこするとすんすんと匂いを嗅いでくる。発情期は終わっていないため俺の心臓に悪い。
好きな相手に縋られて頼られて最高の気分だ。躁鬱状態が繰り返され、精神不安定かつ発情期中な杏でも可愛いしお世話することは苦じゃない。
だか、杏のα欠乏症は確実に進行している。
あとで二条のお抱えの医者の渡辺に相談することにしよう。
「しお。しおはどこ。」
「俺か?俺のことなのか?俺はここにいるぞ。」
「なんで、なんでそんなとおいの。」
ベッドの傍の椅子に座っていただけなのだが、お気に召さなかったらしい。
今日は強めの薬を飲んでいるし、何かあったら徹が止めてくれるだろうから安心して杏の傍に居られるが、本人が望んでいることが分からない。
「しお…。ここ。ここいて。」
「ん?ベッドの上?」
ぺしぺしとたたかれ、指定されたベッドの上に胡坐をかく。
杏は満足したのか胡坐の脚を交差してできたスペースに頭をおいて子犬のようにすりすりしてくる。
かわいい。
可愛すぎる。
また別の日。
「杏様が、脱走されました。」
「見張りはなにをやっているんだ。」
「錯乱状態だったようで過呼吸になった杏様への拘束を緩くした際に逃げてしまわれたようです。」
「どこにいるのかわかっているんだよな。」
「はい。こちらです、ご案内いたします。」
廊下の長椅子のそばに置いてあった観葉植物と長椅子に挟まれるように縮こまっていた。
ガタガタと震える杏にゆっくりと近く。
「寒い。寒い。寒い。寒い。」
そうブツブツと呟きながらも時折周りを警戒している。
杏はよくうなされているときも「寒い。」という。
本人に聞いてみたところ全く言っている記憶はないようで本当に寒い訳ではなく無意識に言っているらしかった。
心の寒さなのかもしれない。
俺を視認した杏は頭を守るようにしてさらに縮こまった。俺を認識しているんじゃなくて人に怯えているようだった。
「杏。あーん。」
目線を同じにするためにしゃがみなるべく落ち着いた声で声をかける。
「ごめんなさい。許してください。ごめんなさい。」
「杏。こっちみてごらん。怖くないよ。」
腕で隠していた頭を少しずつ上げてこっちに向く。真っ暗の目はいつもより光がなく正気がない。
「あん。おいで。帰ろう?」
「し…おん…さん?」
「そうだ。迎えにきた。」
「俺帰りたい。俺、ここ嫌なの。お父さんがきちゃう。」
杏のクソ親がいる病院ではないのだが、そのことを理解していない杏にはかなりストレスだったようだ。
「一回部屋行って確認しよう。」
「俺紫苑さんの部屋にいたい。帰りたい。」
俺だと認識した途端縋ってくる杏が愛おし過ぎる。
もっと俺に依存して欲しい欲が出てきてしまうが冷静になる。
とりあえず病室に戻るため杏を抱っこするとすんすんと匂いを嗅いでくる。発情期は終わっていないため俺の心臓に悪い。
好きな相手に縋られて頼られて最高の気分だ。躁鬱状態が繰り返され、精神不安定かつ発情期中な杏でも可愛いしお世話することは苦じゃない。
だか、杏のα欠乏症は確実に進行している。
あとで二条のお抱えの医者の渡辺に相談することにしよう。
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