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第71話
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それは、まだ俺たち双子が第二性のαやΩで優劣をつけられる前の話。
今までお父さんは少し怖かったし、いつもピリピリしていて話かけにくかったけど、それにお母さんは優しかった。
そうだ、ある日、お父さんがニコニコで帰ってきたんだ。
「俺はやはり天才だったみたいだ。ふははお前らが役に立つ時が来たぞ。」
俺たち双子は喜んでニコニコしているお父さんを見て嬉しくなっていた。
「おとうさん、にこにこだね。」
「うん。ぼくもにこにこしちゃうね。」
「杏もにこにこしてるね。」
夕飯を食べ終わると、お父さんから薬を一粒で渡された。
「飲みなさい。」
「俺、びょうきないよ?」
「ぼくもげんき!」
「いいから飲みなさい。それは、明日もっと元気になる薬なんだ。」
なんだか逆らえなくてそのまま飲み込んだ。
明日、もっと元気になる。
なら、明日なにしてあそぼうか。
そんな話をして二人で眠った。
その日の夜体の芯から暑くなるような感覚で目が覚めたのは杏である俺だった。
「あつい…お水のも…。」
台所へ向かいお水を飲んでいるとお父さんがリビングに入ってきた。
「どうした?」
「体が暑いの。水をのんでも、氷を食べても暑いの。」
「そうか。それは困ったね。少し涼みに外にお散歩へいかないか?」
夜に外に出る。
これは親から禁止されているし、あまりない経験だった。
「うん!お父さんとお散歩する。」
今思えばこれが全ての始まりだったと思う。
「車に乗りなさい。」
「はーい!」
運転して着いた場所は知らない建物。
ズンズンと進んでいくお父さんと離れそうになったけど、夜の暗さが怖くてお父さんから離れたくなくて必死に着いて行った。
ビルの中に入り、地下に進み、薄暗い廊下をすすんだその先の扉には色々な機械が広がっていた。
「お父さん。ここ…なに?」
「お前は今日から結果がでるまでここで過ごしてもらう。」
「嫌だよ。帰ろう?」
「喋るな。俺の役に立てて嬉しいだろ?」
「お父さん?どうしたの?」
「喋るなと言っただろう!そこに横になりなさい。」
怒ったお父さんに張り手をされて、そのまま俺の体は吹っ飛んだ。何が起きたか分からず頭真っ白のままだった。
だけど、本能的に逆らったら死ぬ気がしたので、それからはお父さんの言う通りに従った。
お父さんが飲めと言ってくる薬は苦しかったものが多かった。
気持ち悪くて吐いたり、お腹が痛くなったり、頭が痛かったりした。
その度に新しい薬を渡され、飲み込む。
逃げられなくて苦しいだけの生活は急に終わった。
最後に飲んだ薬が苦しくも辛くもなかったのだ。
それがわかった瞬間、お父さんは「よくやった。モルモット。」と言った。
実験台=モルモットのイメージがなかった俺はわかっていなかったが喜んでいるお父さんを見てまた何かあるのかもしれないと怖かった。
「ぼくのこと思い出した?」
「うん、思い出した。薬を飲むのは今でも怖いんだ。どうしてこんなに手が震えるのかわからなかったけど、思い出した。」
「帰ってからお母さんはぼくのことが嫌いになってたんだよね。」
「そう。お母さんは俺のことを邪魔物扱いするようになった。」
「ぼくのせいで家族が怖くなったよね。」
「元々怖いから変わらないよ。ありがとう。この記憶を抑えてくれてて。」
「ううん。お兄ちゃんまだあるから頑張ってね。」
「うん、次に行ってくるよ。」
映画のセットのようにかつてお散歩の先に行ったビルの地下が広がっていたが、真っ暗になり、真ん中に扉が現れた。
俺は、次に進むしかない。
今までお父さんは少し怖かったし、いつもピリピリしていて話かけにくかったけど、それにお母さんは優しかった。
そうだ、ある日、お父さんがニコニコで帰ってきたんだ。
「俺はやはり天才だったみたいだ。ふははお前らが役に立つ時が来たぞ。」
俺たち双子は喜んでニコニコしているお父さんを見て嬉しくなっていた。
「おとうさん、にこにこだね。」
「うん。ぼくもにこにこしちゃうね。」
「杏もにこにこしてるね。」
夕飯を食べ終わると、お父さんから薬を一粒で渡された。
「飲みなさい。」
「俺、びょうきないよ?」
「ぼくもげんき!」
「いいから飲みなさい。それは、明日もっと元気になる薬なんだ。」
なんだか逆らえなくてそのまま飲み込んだ。
明日、もっと元気になる。
なら、明日なにしてあそぼうか。
そんな話をして二人で眠った。
その日の夜体の芯から暑くなるような感覚で目が覚めたのは杏である俺だった。
「あつい…お水のも…。」
台所へ向かいお水を飲んでいるとお父さんがリビングに入ってきた。
「どうした?」
「体が暑いの。水をのんでも、氷を食べても暑いの。」
「そうか。それは困ったね。少し涼みに外にお散歩へいかないか?」
夜に外に出る。
これは親から禁止されているし、あまりない経験だった。
「うん!お父さんとお散歩する。」
今思えばこれが全ての始まりだったと思う。
「車に乗りなさい。」
「はーい!」
運転して着いた場所は知らない建物。
ズンズンと進んでいくお父さんと離れそうになったけど、夜の暗さが怖くてお父さんから離れたくなくて必死に着いて行った。
ビルの中に入り、地下に進み、薄暗い廊下をすすんだその先の扉には色々な機械が広がっていた。
「お父さん。ここ…なに?」
「お前は今日から結果がでるまでここで過ごしてもらう。」
「嫌だよ。帰ろう?」
「喋るな。俺の役に立てて嬉しいだろ?」
「お父さん?どうしたの?」
「喋るなと言っただろう!そこに横になりなさい。」
怒ったお父さんに張り手をされて、そのまま俺の体は吹っ飛んだ。何が起きたか分からず頭真っ白のままだった。
だけど、本能的に逆らったら死ぬ気がしたので、それからはお父さんの言う通りに従った。
お父さんが飲めと言ってくる薬は苦しかったものが多かった。
気持ち悪くて吐いたり、お腹が痛くなったり、頭が痛かったりした。
その度に新しい薬を渡され、飲み込む。
逃げられなくて苦しいだけの生活は急に終わった。
最後に飲んだ薬が苦しくも辛くもなかったのだ。
それがわかった瞬間、お父さんは「よくやった。モルモット。」と言った。
実験台=モルモットのイメージがなかった俺はわかっていなかったが喜んでいるお父さんを見てまた何かあるのかもしれないと怖かった。
「ぼくのこと思い出した?」
「うん、思い出した。薬を飲むのは今でも怖いんだ。どうしてこんなに手が震えるのかわからなかったけど、思い出した。」
「帰ってからお母さんはぼくのことが嫌いになってたんだよね。」
「そう。お母さんは俺のことを邪魔物扱いするようになった。」
「ぼくのせいで家族が怖くなったよね。」
「元々怖いから変わらないよ。ありがとう。この記憶を抑えてくれてて。」
「ううん。お兄ちゃんまだあるから頑張ってね。」
「うん、次に行ってくるよ。」
映画のセットのようにかつてお散歩の先に行ったビルの地下が広がっていたが、真っ暗になり、真ん中に扉が現れた。
俺は、次に進むしかない。
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