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アサとリアの過去編

愛情

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私達は嘆いた、全てに対して
そしてこの世界が不条理に溢れていると
誰も助けてくれる人は居ないんだと……。

「…… お父さん? 」

リアの目の前で口から血を吐き
倒れているライ

「ぷはっ…… はぁ…… はぁ…… 」

私達を庇うようにして刺されたライ
その様子を私はただ黙って見てる事しか
出来なかった

「お父さん!!お父さん!! 」

やっといまの状況を理解出来たリア、そして
すぐに救急隊員に連絡を取ろうとするが

「すいません!!誰かお医者さまを
呼んでください 」

無視をする、誰もライを助けようとは
しない……

「お願いします!!助けてください 」

必死に「助け」を求めるが、誰もそれに
答えようとはしない、こんなにたくさんの
人が居ると言うのに、たくさんの人が私達
を素通りして行く……。

そして、リアは助けを求めようと
街の人々の足を掴もうとしたが、街の人達
は余りにも冷たく、私達を邪魔者扱いする

「てめーで呼べや 」

「てか、貧困のガキだよな? 」

もしも、あの時誰かが「お父さん 」を
救っていれば 「現在 」のようにならなくて
済んだのかもね

「アリアファミリーの最高幹部 ざまぁ~~ 」

ライを嫌う奴は五万といる、そして当然
ながらも殺そうとする奴らだって嫌い以上
にいる

「自業自得だろ? 」

本当に冷たいよお父さん、誰も助けてなんて
くれない……。

だが、その時
アサが街を歩いている男性に土下座を
していた

「お願いします!!救急隊員を呼んで
ください!! お願いします!! 」

涙を流しながら謝るアサ、そしてその時
アサは「地獄」を味わうことになる

「あ? 貧困のガキが気安く、俺に
 話しかけんなよ 」

そう言うと、その男性はアサの頭を
靴で踏む

「お願いします!!助けて下さい!! 」

「お前うるさいんだよ 」

男性はアサの腹を蹴り、アサは痛さの余り
腹を抱え込んでしまう

「うっ…… いたっ…… 」

「消えろ! 」

男性はその場から去って行った。

その後、私達が何度同じことを繰り返しても
0が0になるだけ

「アサ リア…… ぷはっ!! 」

血を吐きながら呼ぶライ、そしてアサとリア
はライの側まで行く

「二人共…… ありがとうな……ぅぅ 
本当に嬉しいッ……  」

「お父さん…… 」

リアが諦めた表情をした瞬間

アサが泣き喚きながらライの身体を
抱き締めた

「死なないでよ…… 」

ただ泣き喚く事しか出来なかった
ただ同じ時間を繰り返す事しか出来なかった

「死なないでよ…… 死なないでよ…… 」

子供のように泣き喚く、そんなアサの姿を
見て、ライは「フフッ」と笑う

「アサ…… お前泣き顔ブチャイクだな 」

ライは「最期の力 」を振り絞り
空間を穏やかにしようとした

「泣くな……俺は殺されて当然の人間
なんだよ 」

「何で優しい…… 人ッ……… 」

そう、アサが言おうとした瞬間
ライはアサの口を抑えた

「優しくなんかねぇぞ…… 俺はな色々な
人達を殺してきたッ……ぅぅ 子がいる親
でもだっ!! 」

お父さんは優しいよ、例え私達を罪滅ぼし
で育てようとしたんだとしても、お父さんは
優しいよ! だって……未来に繋げようとして
いたんだから……。

「優しいよ!! それは絶対に私!!
曲げないから!!! 」

アサは大声で叫んだ、それを見てリアも
泣き喚いた

「俺ってさ、幸せだな 」

そして、ライは目を閉じた
涙が流れる…… コンクリートが冷たく
渇きを欲していた。

私達の涙はコンクリートの上に落ちた。

「お父さん……ぅぅ 」

アサは泣き喚く、その姿を見たリアは
立ち上がり

「生きないと…… お姉ちゃん 」

もう……失う者は何も無いから、そして
「世界」と戦う決意をする

「うん…… 生きなくちゃ 」

お父さんと一緒に居た時間は少なかった
かも知れないけど…… 確かにそこにあった
少ないけどあったの…… 「愛情 」が……。

でも皮肉だよね、そんな「愛情」が簡単に
壊れちゃうなんてさ、私達はさただ純粋に
愛情が欲しかったの。

そして、私達は離れ離れになった
理由はお姉ちゃんが日本に行くと言った
私は、止めた

「ダメだよ…… お姉ちゃん 」

日本なんて分からない場所、お姉ちゃんには
行かせたくない、日本という未知な領域

「私 今を生きるのに思い上がりたくないの 」

「でも…… 」

不安そうに見つめるリア、二人がこうして
普通の会話をしているのは

ライが死んでから一年が経った日のこと。

それまで、二人は死んで居た、ただ
泣き喚くばかしだった

そうして、今と言う時間を見つけたのは
最近の出来事なのである

「なら……行ってらっしゃい お姉ちゃん 」

「うん!ありがとう! 」

こうして、お姉ちゃんはアメリカを
出て、日本へと向かった。
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