悪役令嬢の番犬~かつて悪役令嬢の取り巻きだった私は敵になってでも彼女を救ってみせる~

うにたん

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2章 5歳

第十六話:まるぐりっとさんのお祭り③

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 どうも、ごきげんよう。路地裏散策中のアウトロー令嬢マルグリットです。
 
 ウキウキ、ルンルン気分でお散歩中ですが、別に実戦経験ができるかもしれないからというわけではありませんよ?
 
 断じて人が殴りたくて堪らないというわけではありません。サイコパスというご意見は断固否定します。人情派令嬢マルグリットです。
 
 只今、少年が指した方向に向かって進んでおりますが、これと言って進捗がない状態なのです。
 
 この道は人気が少ないとはいえ住宅街ですから、民家の中に人はぽつぽついる気配はあるんですけど、こっそり中を除く限りそれっぽい人は見当たりません。
 
 もっと先かしら? キョロキョロしながら進んでいると、前方に異様な空気を放つ通りを見つけました。
 
 暗い? 見た目もそうですけど、雰囲気が暗い。それに…… 建物も異様に脆いし……
 
 ハッ! もしや、ここが俗に言う『スラム』というやつなのでは?
 
 当時身体が弱く、箱入り娘で蝶よ花よとして大事に育てられた世間の荒波を一切知らない可憐な一枚の花弁ともいうべき脆いご令嬢だったものだからあくまで書籍の知識しかないけど
 
 『お菓子買ってあげるからついておいで』とか言うヨダレを垂らした満面の笑みを浮かべるヘンリエッタもといおっさんが現れたり
 
 『お、お、おじょうさ~~~ん』とか言いながらコートを開いたすっぽんぽんのヘンリエッタもといおっさんが現れるというおっさんヘンリエッタ天国なのでは?
 
 私は今、隠密行動をする必要があって、ヘンリエッタの同類とエンカウントしてる場合じゃないんです。
 
認識阻害魔法インビジブル
 
 これで邪魔は入らなくなるわね。本当はせっかくの人生初スラムなのでこの周辺の方々にはインタビューをしてみたいのだけれど
 
 建物の前に座っている方とか建物と建物の隙間で立っている方々を見ると目つきが悪そうな方とか目の焦点が合ってないよう方とか
 
 ヘンリエッタとは違うのはわかるのだけど、違う意味で話が通じなさそうな感じがするわ。近寄るのはやめておきましょう。
 
 いけない! 目的が変わってしまいそうになるけど、今の私がすべきことは誘拐されたと思われるお嬢さんの発見をすることよ。
 
 では、改めて行きましょう。
 
 なんか妙に臭いわね…… それに道路も汚いわ、掃除くらいしてほしいものだわ。
 
 うーん、いそうな雰囲気はあるのよね~、すると途中で私は気になる一軒家を見つけた。
 
 二階建ての建物だけど一階には誰もいないわね。二階に二人いるわね。動きは一人が全く動いてないけど、一人がうろうろしてる感じね。
 
 ここかしら?
 
 私は中身を拝見すべく、コッソリと入口のドアを開けて侵入もといお邪魔することにしました。
 
 人がいるのは二階なので、音を立てないように階段を上っていきます。
 
 二階のドアをコッソリ中を拝見すると、あら不思議。猿轡を嚙まされて、後ろで両手を縛られている女の子がいるじゃありませんか。

 やはり名探偵令嬢マルグリットの真実はいつもひとつ!
 
 私は女の子を軽く観察してみると誘拐犯の事を目で追いかけている事が分かった。下手に刺激しないように観察でもしているように見えるわね。
 
 誘拐犯の方は指を加えながら頭を掻きつつ、部屋の中をウロウロしてる感じ。何かにイラついているのかしら?
 
 さて、ここからどうやって女の子を救出して、誘拐犯を黙らせるかですけど……
 
 手っ取り早いのは魔力展開を使って一気に制圧する事なんでしょうけど、後でナナにバレたらお説教だけじゃすまないわね……。
 
 そうだわ! 認識阻害魔法インビジブルはまだ有効だからこっそり女の子に近づいて睡眠魔法スリープで眠ってもらって、誘拐犯がよそ見してる隙を狙って玄関までダッシュして衛兵さんのいる所までとんずらでフィニッシュ。
 
 まさに非の打ちどころがなさすぎて、自分の才能が怖すぎですわぁ。オホホホ。
 
 というわけで早速お邪魔しますね。音を立てないようにドアを私が入れるくらいだけ開けて……と
 
 ウロウロしている誘拐犯にぶつからないように避けてっと……
 
 私は誘拐犯を躱しつつ足音を立てないように忍び足でゆっくり女の子に近づいた。
 
 あなたには申し訳ないけど、少し寝て頂きますね。
 
 私は女の子の目の前まで来たら人差し指を女の子の額に当てて魔法を唱える
 
睡眠魔法スリープ

 私が魔法を唱えると彼女は目を閉じて寝てしまった。
 
 彼女の身体から力が抜けて倒れて音がしないように一旦壁に寄りかからせて誘拐犯のスキを狙って一気に『魔力展開』で駆け抜ける。
 
 その予定だったのだが、スキを伺っていたところ、苛立っていた誘拐犯が口を開いて愚痴を呟きだした。
 
「クソッ、もう少し衛兵が減らねえと出るに出れねえ。時間がかかっちまったら『赤狼』の旦那にどやされちまうぜ」

 『赤狼』。たしかに誘拐犯はそう言った。単語を頭で理解するより先に一気に心臓の鼓動が高鳴ったのを感じた。
 
 そして私は気付いた時には、当初予定していた行動とは真逆の行動に出てしまっていた。

『魔力展開』

 戦闘準備を取った私は誘拐犯に気づかれる前に一気に近寄り、足を引っ掛けて体勢を崩した直後に首元を掴み、一気に床に叩きつけた。そして誘拐犯の両腕も私の両脚で抑えて動けないようにした。
 
「ガッ!」

「ごきげんよう。いくつかあなたにお聞きしたいことがあります。質問に答えて頂けるかしら?」
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