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真実の愛の成れの果て
かつて、王宮の食堂は、銀食器の触れ合う音と贅を尽くした料理の香りに包まれていた。だが今、そこに広がるのは、冷え切ったスープの匂いと、耐え難いほどの沈黙だった。
アーノルドは、目の前の粗末なパン――かつては家畜の餌にさえされなかったような、硬く、質の悪い黒パン――を睨みつけていた。
王宮の備蓄は底を突き、カークランド公爵家が止めた物流のせいで、近隣の農村さえもが王宮への納入を拒否し始めている。
「……これだけか? 今日の夕食は、これだけなのか!」
アーノルドが銀の匙をテーブルに叩きつけた。ガシャンという鋭い音が、人気のなくなった広い食堂に空虚に響く。
対面に座るフィオナは、びくりと肩を揺らし、俯いた。彼女が纏っている桃色のドレスは、手入れをする侍女たちが暇乞いをして去ったせいで、裾が汚れ、シワが寄っている。
「申し訳ありません……厨房の者たちが、もうこれ以上の材料は入らないと……」
「言い訳はいい! なぜ、お前が何とかしないんだ! 王妃教育を受けているんだろう? 庭の花を勝手に摘んで配るような『慈悲』があるなら、王宮の台所の一つや二つ、采配してみせろ!」
アーノルドの声は、怒りと焦燥でひび割れていた。
外からは連日、暴徒化した民衆の怒号が聞こえてくる。近衛騎士団は半数が脱走し、残った者たちも「給与の代わりに王宮の調度品を持ち去る」という無秩序な状態だ。
「……私、そんなこと言われても……。私には、難しいことは分かりませんわ……」
フィオナは大きな瞳に涙を溜め、ただ弱々しく首を振る。
かつて、その「弱さ」はアーノルドにとって、守るべき可憐な花に見えた。だが、現実の崩壊を前にした今、それはただの「無能」という名の重石でしかなかった。
「分かりません、だと!? マグノリアなら、こんな事態になる前に手を打っていた! 彼女なら、兵の士気を掌握し、商人と交渉し、僕の隣で……!」
「……だったら、マグノリア様のところへ行けばよろしいじゃないですか!」
フィオナが、生まれて初めて声を荒らげた。
涙がその頬を伝い、贅沢な刺繍を濡らす。
「殿下は、私を選んだのでしょう!? 何も持たず、何もできない私を、『そのままでいい』と救い出したのは貴方ではありませんか! なぜ今になって、私にマグノリア様のような真似を求めるのですか……! 私は、最初から『空っぽ』だったのに!」
アーノルドは絶句した。
フィオナの叫びは、あまりにも残酷な真実を突いていた。
彼は、フィオナという人間を愛したのではない。
自分を全肯定し、自分の庇護欲を満足させてくれる「都合の良い器」を求めただけだった。そしてフィオナもまた、アーノルドを愛したのではない。自分を過酷な現実から連れ出してくれる「都合の良い魔法」に縋っただけだった。
二人の間にあったのは、高潔な「真実の愛」などではない。
互いの欠落を埋め合わせるための、醜く、甘い「現実逃避」に過ぎなかったのだ。
「……ああ、そうだ。僕は……僕は、何を間違えたんだ……」
アーノルドは、頭を抱えて椅子に崩れ落ちた。
目の前のフィオナは、ただ怯えて泣きじゃくるばかりで、彼に手を差し伸べることもしない。
「愛」という魔法が解けたあとに残ったのは、冷え切ったスープと、互いを呪い合う二人の男女だけだった。
海を隔てた隣国、ルミナリア王国。
その北方に位置する広大な「新カークランド領」は、春の陽光を浴びて活気に満ち溢れていた。
マグノリアは、領地を一望できるテラスで、ゆったりと椅子に身を預けていた。
彼女の傍らには、兄オリビエと、その妻でありルミナリアの王女であるカトリーヌが、穏やかな表情で座っている。
「マグノリア、新しい運河の開通式の日程が決まったよ。君が考案した新型の揚水機、あれは素晴らしいね。農民たちが皆、君を『知恵の女神』と呼んで崇めているよ」
オリビエが誇らしげに語る。マグノリアは、エメラルドの瞳を和らげ、手元の書類にサインを書き加えた。
「当然ですわ、お兄様。法が守られ、正当な報酬が約束される場所では、人は自ずと知恵を絞るものですもの。……感情という霧に惑わされない統治こそが、真の繁栄をもたらしますわ」
そこへ、一人の騎士が銀のトレイを捧げて現れた。
「マグノリア様。……ロメリア王国より、親書が届いております」
マグノリアは、その紋章を一瞥して、ふっと口角を上げた。それは、かつての婚約者、アーノルド・ロメリアからのものだった。
封を切らずとも、中身は容易に想像がついた。
『すまなかった』
『君がどれほど正しかったか、ようやく分かった』
『国は滅びかけている、どうか戻ってきて、私を、この国を助けてほしい』
文字にするのも悍ましいほどに、卑屈で、自分勝手で、中身のない懇願の言葉が並んでいるのだろう。
マグノリアは、その手紙を読みもせず、傍らの暖炉へと無造作に放り投げた。炎が紙を舐め、数瞬のうちに、愚かな王子の「愛の言葉」は灰へと変わっていった。
「マグノリア、読まなくていいのかい?」
カトリーヌが、少しだけ心配そうに尋ねる。マグノリアは、澄み切った声で答えた。
「ええ。死者の言葉を聴くほど、私は暇ではありませんの。……あちらの国は、自分たちで『真実の愛』を選んだのです。ならば、最後までその愛を食べて、心中を遂げるのが筋というものでしょう」
マグノリアは、立ち上がった。
彼女の視線の先には、新しく建設された学校から帰る子供たちの笑い声と、整備された街道を走る馬車の群れが見える。
その時、テラスの入り口に、一人の長身の男性が現れた。
ルミナリア王国の若き公爵であり、マグノリアの現在のビジネスパートナーにして、彼女が最も信頼を置く知己、ギルバートである。
「マグノリア。例の東方交易の契約書、修正案を持ってきた。君の指摘通り、保険の条項を追加しておいたよ」
ギルバートは、マグノリアの知性を心から尊敬し、彼女の誇りを汚さぬ距離で見守る男だ。マグノリアは彼に向け、アーノルドには決して見せなかった、心からの信頼に満ちた微笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、ギルバート様。……ふふ、やはり法と誠実さを知る方との会話は、何よりの毒消しになりますわ」
マグノリアは、最後に一度だけ、遥か南の空――かつての故郷、そして今は崩壊しつつあるロメリア王国の方角――を見つめた。
彼女の瞳には、もはや未練も、怒りも、復讐心さえも残っていない。ただ、広大な世界を支配する者としての、揺るぎない確信だけがあった。
「愛は、一時的に人を救い、陶酔させるかもしれませんが……国を救い、歴史を紡ぐのは、厳格な法と、積み上げられた誠実さだけですわ」
マグノリアは、風に吹かれながら、静かに、けれど力強く告げた。
「……さようなら、私の愛した王子様。どうぞ、その『真実の愛』という名の墓標の下で、安らかにお眠りなさいませ」
彼女は、一度も振り返ることなく、新しい世界の扉を自らの手で開き、光の中へと歩み出した。
背後で、かつての世界の残骸を飲み込んだ炎が、パチリと音を立てて消えた。
__________
エール📣いいね❤️お気に入り⭐️応援よろしくお願いします🙇♀️
📢✨【『ずっと好きだった』なんて、もう信じない ~一途な幼馴染に寄り道された男爵令嬢は、二度目の恋から逃げ出したい~】
アーノルドは、目の前の粗末なパン――かつては家畜の餌にさえされなかったような、硬く、質の悪い黒パン――を睨みつけていた。
王宮の備蓄は底を突き、カークランド公爵家が止めた物流のせいで、近隣の農村さえもが王宮への納入を拒否し始めている。
「……これだけか? 今日の夕食は、これだけなのか!」
アーノルドが銀の匙をテーブルに叩きつけた。ガシャンという鋭い音が、人気のなくなった広い食堂に空虚に響く。
対面に座るフィオナは、びくりと肩を揺らし、俯いた。彼女が纏っている桃色のドレスは、手入れをする侍女たちが暇乞いをして去ったせいで、裾が汚れ、シワが寄っている。
「申し訳ありません……厨房の者たちが、もうこれ以上の材料は入らないと……」
「言い訳はいい! なぜ、お前が何とかしないんだ! 王妃教育を受けているんだろう? 庭の花を勝手に摘んで配るような『慈悲』があるなら、王宮の台所の一つや二つ、采配してみせろ!」
アーノルドの声は、怒りと焦燥でひび割れていた。
外からは連日、暴徒化した民衆の怒号が聞こえてくる。近衛騎士団は半数が脱走し、残った者たちも「給与の代わりに王宮の調度品を持ち去る」という無秩序な状態だ。
「……私、そんなこと言われても……。私には、難しいことは分かりませんわ……」
フィオナは大きな瞳に涙を溜め、ただ弱々しく首を振る。
かつて、その「弱さ」はアーノルドにとって、守るべき可憐な花に見えた。だが、現実の崩壊を前にした今、それはただの「無能」という名の重石でしかなかった。
「分かりません、だと!? マグノリアなら、こんな事態になる前に手を打っていた! 彼女なら、兵の士気を掌握し、商人と交渉し、僕の隣で……!」
「……だったら、マグノリア様のところへ行けばよろしいじゃないですか!」
フィオナが、生まれて初めて声を荒らげた。
涙がその頬を伝い、贅沢な刺繍を濡らす。
「殿下は、私を選んだのでしょう!? 何も持たず、何もできない私を、『そのままでいい』と救い出したのは貴方ではありませんか! なぜ今になって、私にマグノリア様のような真似を求めるのですか……! 私は、最初から『空っぽ』だったのに!」
アーノルドは絶句した。
フィオナの叫びは、あまりにも残酷な真実を突いていた。
彼は、フィオナという人間を愛したのではない。
自分を全肯定し、自分の庇護欲を満足させてくれる「都合の良い器」を求めただけだった。そしてフィオナもまた、アーノルドを愛したのではない。自分を過酷な現実から連れ出してくれる「都合の良い魔法」に縋っただけだった。
二人の間にあったのは、高潔な「真実の愛」などではない。
互いの欠落を埋め合わせるための、醜く、甘い「現実逃避」に過ぎなかったのだ。
「……ああ、そうだ。僕は……僕は、何を間違えたんだ……」
アーノルドは、頭を抱えて椅子に崩れ落ちた。
目の前のフィオナは、ただ怯えて泣きじゃくるばかりで、彼に手を差し伸べることもしない。
「愛」という魔法が解けたあとに残ったのは、冷え切ったスープと、互いを呪い合う二人の男女だけだった。
海を隔てた隣国、ルミナリア王国。
その北方に位置する広大な「新カークランド領」は、春の陽光を浴びて活気に満ち溢れていた。
マグノリアは、領地を一望できるテラスで、ゆったりと椅子に身を預けていた。
彼女の傍らには、兄オリビエと、その妻でありルミナリアの王女であるカトリーヌが、穏やかな表情で座っている。
「マグノリア、新しい運河の開通式の日程が決まったよ。君が考案した新型の揚水機、あれは素晴らしいね。農民たちが皆、君を『知恵の女神』と呼んで崇めているよ」
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「マグノリア様。……ロメリア王国より、親書が届いております」
マグノリアは、その紋章を一瞥して、ふっと口角を上げた。それは、かつての婚約者、アーノルド・ロメリアからのものだった。
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