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裁きの香りと、氷華の誓い
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氷の城に平穏が戻り、私とアレックス様の婚礼準備が着々と進む中、祖国ロレンタ王国から一通の親書が届いた。差出人は兄ダニエル。そこには、私を裏切った者たちの最期が、怒りで震えるような筆致で記されていた。
晩餐会での毒殺未遂、その黒幕は、やはりサンドラお姉様だった。
彼女は修道院へ護送される道中、番兵を誘惑して逃亡を企てたが、協力者であったはずのマキシム・ターロットに見捨てられたという。
かつて愛を共有し、共謀して私を欺いた二人は、追い詰められた土壇場でお互いを罵り合い、その絆は脆くも崩れ去った。
「マキシムは、家督を剥奪された絶望から完全に正気を失い、今は塔に幽閉されている。彼は今も、壁に向かってお前の名前を呼び続け、存在しない『自分だけの香水』を求めて虚空を見つめているそうだ。……そしてサンドラは、逃亡の果てに極貧の街で捕らえられ、今は名前も剥奪された罪人として、一生を地下の独房で過ごすことが決まった」
手紙を読み終えた私は、静かに瞳を閉じた。
「……ジュリア。終わったよ。君を縛る過去は、もうどこにもない」
背後から温かな腕が私を包み込んだ。アレックス様だ。
彼は私の肩に顔を寄せ、あの忌まわしい花の香りではなく、マイセンの厳しい冬が育む、凛とした針葉樹の香りを私に届けてくれた。
「ええ。……悲しいですわね。彼らは最後まで、本当の意味で誰かを信じる喜びを知らなかった。共有していたのは、愛ではなく、空虚な欲望だけだったのですから」
私は手紙を暖炉に投げ入れた。赤々と燃え上がる炎が、裏切りの記録を灰に変えていく。その煙を見つめながら、私は自分の首元に触れた。そこには、アレックス様との絆の象徴である、透き通ったダイヤモンドが輝いている。
婚礼の日、氷の城は国中の祝福に包まれた。マイセンの民たちは、自分たちの冷徹公爵を雪解けのように変えた、凛として賢明な異国の乙女を「氷華の女神」と呼び、熱狂的に迎えてくれた。
祭壇の前で、アレックス様は私の手を取り、深く、慈しむような瞳で見つめた。
「ジュリア。君は私の唯一の妻だ。君の悲しみも、喜びも、この先の人生のすべてを、私一人だけが背負い、守り抜くと誓おう」
「……私も、誓います。あなたの誠実さに、生涯を懸けて応えることを」
重厚な鐘の音が響き渡り、私たちは初めて、真実の誓いの口づけを交わした。
かつて私を蝕んでいた「共有された婚約者」の呪いは、今、北国の清廉な雪の中に溶けて消えた。
隣国での私の物語は、ここから始まる。
「わたくしの愛は、あなたが思うほど甘くはございませんわよ? ……けれど、一度選んだお方は、地の果てまでお支えいたしますわ。アレックス様」
不敵な笑みを浮かべた私に、アレックス様は愉快そうに目を細め、再び私を強く抱き寄せた。
マイセンの厳しい冬はまだ続く。けれど、私たちの心には、どんな春よりも暖かく、揺るぎない光が灯っていた。
______________
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晩餐会での毒殺未遂、その黒幕は、やはりサンドラお姉様だった。
彼女は修道院へ護送される道中、番兵を誘惑して逃亡を企てたが、協力者であったはずのマキシム・ターロットに見捨てられたという。
かつて愛を共有し、共謀して私を欺いた二人は、追い詰められた土壇場でお互いを罵り合い、その絆は脆くも崩れ去った。
「マキシムは、家督を剥奪された絶望から完全に正気を失い、今は塔に幽閉されている。彼は今も、壁に向かってお前の名前を呼び続け、存在しない『自分だけの香水』を求めて虚空を見つめているそうだ。……そしてサンドラは、逃亡の果てに極貧の街で捕らえられ、今は名前も剥奪された罪人として、一生を地下の独房で過ごすことが決まった」
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「ジュリア。君は私の唯一の妻だ。君の悲しみも、喜びも、この先の人生のすべてを、私一人だけが背負い、守り抜くと誓おう」
「……私も、誓います。あなたの誠実さに、生涯を懸けて応えることを」
重厚な鐘の音が響き渡り、私たちは初めて、真実の誓いの口づけを交わした。
かつて私を蝕んでいた「共有された婚約者」の呪いは、今、北国の清廉な雪の中に溶けて消えた。
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