政略結婚した浮気男が、今さら本気で愛を囁いてきます!

恋せよ恋

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10 悪友たちの苦言

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 月光サロン – 夜に集う紳士たちの密やかな雰囲気の社交クラブ。アルベールは親友たちに囲まれ、先日の「夜会のやらかし」を茶化されていた。

「いやー、アルベール、お前、あの女の子まで孕ませちゃうなんて、ほんとに……やることが派手だな」
 軽口を叩く友人たちに、アルベールは少し眉をひそめる。

「いや、でもな……正直、俺もやりすぎたと思ってる。だが、ロクサーヌが……」

 すると、厳しい友人が身を乗り出し、真顔で言った。
「お前な、子まで成した女の面倒を完璧に見るなんて、なかなかできることじゃないぞ。本来なら親子ともども叩き出されても文句は言えん」

 アルベールは苦笑いを浮かべながら、少し誇らしげに肩をすくめた。

 そのとき、書斎の扉が開き、第二王子アルベルトが現れる。
「そらみたことか、当然の結果だ」
 アルベールを睨みつけながら、さらに続ける。
「ロクサーヌはあれで夢見る乙女なんだ。大事にしすぎるくらい大事に扱え。なにしろ――王子様との結婚を夢見てたんだからな」
 言葉の後ろにニヤリと笑みを含ませ、アルベールを軽く挑発する。

 さらに、婚約者のオーレリア侯爵令嬢の発言を楽しげに口にする。
「『殿下が、アルベール様のような事をしたら……お仕置きしますからね』って可愛いく言われたよ」

 部屋に和やかな笑いが広がる。アルベールは少し赤面しながらも、心の奥で、ロクサーヌへの想いを再確認するのだった。



 伯爵邸に帰宅したアルベールは、重厚な屋敷の静けさに一瞬ほっとした。
 しかし心はざわついていた。友人たちやアルベルト王子の言葉、そしてロクサーヌのことが頭の中でぐるぐると巡る。

 廊下を進むと、扉の向こうにロクサーヌがいた。白いドレスの裾が優雅に揺れ、美しい所作で紅茶を飲んでいた。髪が柔らかく輝き、ふわりと甘い香りが漂った。

 アルベールは思わず息を呑む。
「……今日も、きれいだな……」
思わず漏れたその声に、ロクサーヌはちらりと彼を見て、くすっと微笑む。

 その笑顔に胸がぎゅっと締めつけられるような感覚――悔恨と熱望、そして抑えきれない想いが混ざった複雑な感情。

「ロクサーヌ……あの……」
 アルベールは言葉を探すが、どれも軽すぎる気がして止まる。

 ロクサーヌは静かに彼を見つめた。目が合った瞬間、アルベールの心ははちきれそうになる。

「僕は……これまでの、遊びでしかなかった女性たちのこと、全部謝りたい」
 アルベールの声は真剣そのもの。
「君に劣情を向けるのは、君を汚すようで……してはいけないことのように思っていた。でも、もう我慢できない。ロクサーヌ、僕は――君のことが好きだ」

 ロクサーヌはその告白に心を揺らされながらも、少し意地悪に微笑む。少し痩せた彼、でも色気が増していて、ずるいわね。

「……分かりました。では、あなたの覚悟を見せてもらいましょう」
 その声は穏やかで柔らかいのに、どこか芯の通った響きがあった。

 アルベールは思わず小さく笑みを返す。胸の奥がじんわり温かくなる――まさに“胸キュン”の瞬間だった。

 二人の距離は静かに、しかし確実に縮まっていく。ロクサーヌの指先が、かすかにアルベールの袖に触れる――それだけで心臓が跳ねる。

 アルベールは思い切って、そっとロクサーヌの手元に手を伸ばす。指先が触れる――ほんのわずかの接触だが、胸が高鳴る。

「……っ」
 微かに息を漏らすアルベールの声を、ロクサーヌは聞かないふりで視線を紅茶に落とす。

「……旦那様?」
 その声にアルベールの心臓は跳ねる。振り向く彼女の瞳は、柔らかく光り、しかし冷静な観察は変わらない。

 アルベールは覚悟を決め、そっと手を彼女の手の甲に重ねる。温かく、柔らかく、しかしどこか凛とした感触。
「……ロクサーヌ、俺……」
 言葉が詰まる。目の前の彼女を汚したくない、でも、この胸の高鳴りを伝えたい。

 ロクサーヌは静かに顔を上げ、微かに唇の端を上げる。
「……旦那様、少し大胆すぎませんか?」
 その声に含まれる軽い注意のトーンが、逆にアルベールの心を熱くさせる。

 彼はそっと彼女を抱き寄せる――けれどロクサーヌに怒った様子はない。

「……そんなに急に抱きしめては、驚きますわ」
 柔らかく、しかし笑いを含んだ声に、アルベールは胸を打たれる。

「……わかってる。でも……君が、恋しくて……」
 アルベールの声に、ロクサーヌは小さく笑みを浮かべる。
「ふふ……おかしな旦那様ね」
 その微笑みに、アルベールの心は完全に溶かされ、彼女の胸元で鼓動が重なる。

 紅茶の香りとともに、二人だけの静かな、甘くて切ない時間がゆっくりと流れる――。
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