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断罪と拒絶
「スーザン! スーザン、そこにいるんだろう!? 頼む、話を聞いてくれ!」
ロイド侯爵家の馬車を飛ばし、なりふり構わずオーチャード伯爵邸へと駆けつけたパトリスは、門前で必死に叫んでいた。かつての端正な容姿は見る影もなく、髪は乱れ、瞳は血走っている。
だが、重厚な鉄柵が開くことはなかった。代わりに現れたのは、冷徹なまでの怒りを纏った二人の人物――トーマスとイザベラだった。
「……見苦しいぞ、パトリス。近所迷惑だ、さっさと帰れ」
トーマスの声は、氷点下の風よりも冷たかった。その隣で、イザベラが扇子をきつく握りしめ、パトリスを汚物でも見るような目で見下ろしている。
「トーマス殿! お願いだ、スーザンに合わせてくれ! すべては誤解なんだ、僕はあんな女の言葉を……!」
「誤解? 笑わせるな」
トーマスが一歩前に踏み出し、パトリスの胸ぐらを掴み上げた。
「お前の口から出た『鬱陶しい』という言葉も、劇場でお前がジェシカと笑いながら妹に投げつけた侮蔑の数々も、すべて『誤解』だと言うのか? お前は自分の意思で、自分の口で、妹の心を切り刻んだんだ」
「それは……っ、僕はただ、彼女に僕を追ってほしくて……!」
パトリスのあまりに幼稚で独りよがりな告白に、今度はイザベラが冷ややかに言い放った。
「パトリス様。貴方は愛する人を試すために、その尊厳を泥に塗ったというのですか? ……最低ですわね。ラサール侯爵家の名において申し上げます。スーザンは今、お前の名前を聞くだけで震えが止まらなくなるほど、深い傷を負っているのです」
「……え?」
パトリスの動きが止まる。震えが、止まらない?
「お前は『駆け引き』のつもりだったのかもしれないが、妹にとっては終わりのない『虐待』だったんだよ」
トーマスはパトリスを突き放すと、懐から一束の書類を取り出し、彼の足元に叩きつけた。
「これは、これまでにお前が妹に行ってきた数々の不当な扱いの記録だ。証人は劇場や学園にいくらでもいる。……いいか、これ以上妹に近づこうとするなら、我々は泥沼の裁判も辞さない。ロイド侯爵家がどれほどの打撃を受けるか、その足りない頭でよく考えるんだな」
「裁判……。そんな、僕たちは婚約者で……」
「婚約? ああ、あれならもう終わったよ。父が正式に解消の手続きを済ませた。お前はもう、スーザンにとって赤の他人だ。……二度と、その汚らわしい口で妹の名前を呼ぶな」
トーマスとイザベラは、絶望に打ちひしがれるパトリスを置き去りにして、背を向けた。
閉ざされる大きな門。ガチャン、という非情な金属音が、パトリスの世界が完全に断絶された音に聞こえた。
「スーザン……。スーザン……っ!」
地面に這いつくばり、自分の名前を呼ぶ資格さえ奪われたことを知ったパトリス。
彼にできることは、ただ冷たい石畳を涙で濡らすことだけだった。
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ロイド侯爵家の馬車を飛ばし、なりふり構わずオーチャード伯爵邸へと駆けつけたパトリスは、門前で必死に叫んでいた。かつての端正な容姿は見る影もなく、髪は乱れ、瞳は血走っている。
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「……見苦しいぞ、パトリス。近所迷惑だ、さっさと帰れ」
トーマスの声は、氷点下の風よりも冷たかった。その隣で、イザベラが扇子をきつく握りしめ、パトリスを汚物でも見るような目で見下ろしている。
「トーマス殿! お願いだ、スーザンに合わせてくれ! すべては誤解なんだ、僕はあんな女の言葉を……!」
「誤解? 笑わせるな」
トーマスが一歩前に踏み出し、パトリスの胸ぐらを掴み上げた。
「お前の口から出た『鬱陶しい』という言葉も、劇場でお前がジェシカと笑いながら妹に投げつけた侮蔑の数々も、すべて『誤解』だと言うのか? お前は自分の意思で、自分の口で、妹の心を切り刻んだんだ」
「それは……っ、僕はただ、彼女に僕を追ってほしくて……!」
パトリスのあまりに幼稚で独りよがりな告白に、今度はイザベラが冷ややかに言い放った。
「パトリス様。貴方は愛する人を試すために、その尊厳を泥に塗ったというのですか? ……最低ですわね。ラサール侯爵家の名において申し上げます。スーザンは今、お前の名前を聞くだけで震えが止まらなくなるほど、深い傷を負っているのです」
「……え?」
パトリスの動きが止まる。震えが、止まらない?
「お前は『駆け引き』のつもりだったのかもしれないが、妹にとっては終わりのない『虐待』だったんだよ」
トーマスはパトリスを突き放すと、懐から一束の書類を取り出し、彼の足元に叩きつけた。
「これは、これまでにお前が妹に行ってきた数々の不当な扱いの記録だ。証人は劇場や学園にいくらでもいる。……いいか、これ以上妹に近づこうとするなら、我々は泥沼の裁判も辞さない。ロイド侯爵家がどれほどの打撃を受けるか、その足りない頭でよく考えるんだな」
「裁判……。そんな、僕たちは婚約者で……」
「婚約? ああ、あれならもう終わったよ。父が正式に解消の手続きを済ませた。お前はもう、スーザンにとって赤の他人だ。……二度と、その汚らわしい口で妹の名前を呼ぶな」
トーマスとイザベラは、絶望に打ちひしがれるパトリスを置き去りにして、背を向けた。
閉ざされる大きな門。ガチャン、という非情な金属音が、パトリスの世界が完全に断絶された音に聞こえた。
「スーザン……。スーザン……っ!」
地面に這いつくばり、自分の名前を呼ぶ資格さえ奪われたことを知ったパトリス。
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