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悪女の偽りが暴かれる
王都、ヴァルト侯爵邸。
主人が北部から帰還したというのに、この屋敷には歓喜の気配など微塵もなかった。
ユリウスは、自らの執務室で、机の上に置かれた「ヒビの入った指輪」を凝視していた。
深緑の宝石は、かつては彼の瞳と同じ色をしていたはずだ。しかし今、それは主を失い、煤け、救いようのない絶望を体現している。
「……セレフィーネ、どこだ。どこへ行ったんだ」
彼は狂ったように彼女の名を呼び、王都中を捜索させた。しかし、返ってくるのは「行方不明」「実家も沈黙」「騎士団も辞職」という、絶望的な報告ばかりだった。
彼女は、ただ出て行ったのではない。自分の人生から、ユリウスという男の存在を根こそぎ、完璧に消し去るために動いたのだ。
「ユリウス様、セント騎士爵家から……お使いが」
執事が震える手で差し出したのは、離縁の正式な受理を求める書簡、そして「二度と我が家の門を叩くな」という義兄ケビンからの警告文だった。ユリウスはそれをひったくり、馬を飛ばした。
雨上がりの泥を跳ね上げ、セント騎士爵家の小さな門の前に辿り着いたユリウスだったが、そこには武装した私兵たちが立ち塞がっていた。
「どけ! セレフィーネに会わせろ! 夫である俺が……!」
「夫、だと?」
門の中から現れたのは、激しい怒りを瞳に宿したケビンだった。
「ユリウス・ヴァルト。よくもその面でここに来られたものだ。妹はもう、お前の妻ではない。この離縁状を見ればわかるだろう」
「あんなもの、認めない! 彼女は誤解しているんだ、セザンヌのことは昔の縁で……!」
「昔の縁? ははっ、笑わせるな!」
ケビンは一歩、ユリウスに歩み寄り、その胸ぐらを掴み上げた。
「妹はお前に、自分の誇りも、騎士としての将来も、すべてを捧げる覚悟で嫁いだ。それを『責任取りの結婚』だと言い放ち、挙句の果てに元婚約者の女を屋敷に引き入れたのは誰だ!」
「それは……彼女を救うために……」
「救うだと? 妹はお前のその『浅薄な正義感』に、魂を切り裂かれたんだよ。……いいか、ユリウス副団長。お前はもう、夫でもなければ、騎士として尊敬の対象でもない。そして……」
ケビンの声が、低く、地を這うような響きを帯びた。
「……お前はもう、父親ですらない。二度と、我々の前に姿を見せるな」
「……父親?」
ユリウスの心臓が、ドクリと大きく跳ねた。
だが、ケビンはそれ以上の言葉を拒むように、冷たく門を閉ざした。
ユリウスはその場に立ち尽くした。「父親ではない」という言葉の真意を測りかね、ただ自分の指先の震えを見つめるしかなかった。
失意のまま屋敷に戻ったユリウスを待ち構えていたのは、離宮で「安静」にしているはずのセザンヌだった。
彼女はユリウスの姿を見るなり、縋り付くように腕を絡めてきた。
「ユリウス様! どこへ行っていらしたの? 怖い……あの女の兄様たちが、私を殺しに来るのではないかと……。……見てください、赤ちゃんも怖がって、お腹が痛むのですわ」
これまでのユリウスなら、迷わず彼女を抱き上げ、優しい言葉をかけていただろう。だが、今のユリウスの耳には、その声は甘ったるい戯言にしか聞こえなかった。
「……セザンヌ。君を診るために、王宮から腕利きの医師を呼んだ」
「えっ……? でも、私はいつもの先生で……」
「マグノリア殿下のご厚意だ。拒否は許されない」
ユリウスの背後から、厳格な表情を浮かべた年老いた医師と、数人の騎士が現れた。セザンヌの顔から、一気に血の気が引いていく。
「さあ、ご夫人。診察室へ」
「や、やめて! 私は病気なの! 安静が必要なのよ!」
セザンヌの悲鳴は無視され、彼女は半ば強制的に診察室へと運び込まれた。
ユリウスは、廊下でただ時計の音を聞いていた。一分、一秒が、永遠のように長く感じられる。
やがて、扉が開いた。
出てきた老医師の顔には、隠しきれない軽蔑と怒りが刻まれていた。
「ユリウス副団長。真実を申し上げます」
「……はい」
「セザンヌ殿は、確かに懐妊されています。……しかし、その時期がおかしい。お腹の膨らみ、および胎児の成長具合から見て、受胎したのは少なくとも『五ヶ月前』です」
ユリウスの思考が、一瞬停止した。
五ヶ月前。
それは、彼が北部の戦場で、セザンヌと再会するよりも、はるかに前のことだ。
「……つまり、どういうことですか……」
「簡単なことです。……腹のお子は、副団長のお子ではございません。彼女は再会した時、すでに『別の男』の子を身籠っていた。……おそらく、隣国での逃亡生活の中でか、あるいは亡くなった前夫との間にか……。いずれにせよ、貴方を慕って会いに来たとの言葉も、貴方の子を宿したという言葉も、すべては侯爵夫人の地位を奪うための、あまりにも卑劣な嘘です」
ユリウスは、壁に手を突き、その場に崩れ落ちた。
「……あぁ……」
情けない声が出た。
自分は、一体何を守っていたのか。
他人の子を宿し、自分を利用しようとした女を「犠牲者」だと信じ込み、そのために、自分を誰よりも愛し、誇り高く支えてくれたセレフィーネを、投げ捨てた。
「ああああああああああ!」
執務室に、ユリウスの獣のような絶叫が響き渡った。
彼は、セレフィーネが「責任取りの結婚」だと言われ、どれほどの絶望を感じたかを、今、ようやく理解した。
自分を捨てた過去のある女。その女の嘘に踊らされ、本物の愛を自ら踏みにじった。
その時、彼の脳裏にケビンの言葉が蘇った。
――『お前はもう、父親ですらない』
もし、もしも。
セレフィーネもまた、あの日、自分との子を授かっていたのだとしたら……?
ユリウスは、セザンヌのいる診察室へ駆け出した。
そこには、正体が暴かれ、醜く顔を歪めて笑うセザンヌが、騎士に押さえつけられていた。
「……ふふ、ふふふふ! バカな男。……ちょっと泣いて、昔の思い出を語れば、すぐに信じるんですもの。……セレフィーネがどんな顔をして出て行ったか、見せてあげたかったわ。あんなに惨めで、死人のような顔をした女、初めて見たもの!」
「黙れ……! 黙れえええええ!」
ユリウスの怒号は、もはや誰にも届かなかった。
彼はその日、大切な者を失った。
世界で一番自分を愛してくれた「妻」と、尊敬してくれた「女騎士」。そして、愛する「我が子」も。
___________
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主人が北部から帰還したというのに、この屋敷には歓喜の気配など微塵もなかった。
ユリウスは、自らの執務室で、机の上に置かれた「ヒビの入った指輪」を凝視していた。
深緑の宝石は、かつては彼の瞳と同じ色をしていたはずだ。しかし今、それは主を失い、煤け、救いようのない絶望を体現している。
「……セレフィーネ、どこだ。どこへ行ったんだ」
彼は狂ったように彼女の名を呼び、王都中を捜索させた。しかし、返ってくるのは「行方不明」「実家も沈黙」「騎士団も辞職」という、絶望的な報告ばかりだった。
彼女は、ただ出て行ったのではない。自分の人生から、ユリウスという男の存在を根こそぎ、完璧に消し去るために動いたのだ。
「ユリウス様、セント騎士爵家から……お使いが」
執事が震える手で差し出したのは、離縁の正式な受理を求める書簡、そして「二度と我が家の門を叩くな」という義兄ケビンからの警告文だった。ユリウスはそれをひったくり、馬を飛ばした。
雨上がりの泥を跳ね上げ、セント騎士爵家の小さな門の前に辿り着いたユリウスだったが、そこには武装した私兵たちが立ち塞がっていた。
「どけ! セレフィーネに会わせろ! 夫である俺が……!」
「夫、だと?」
門の中から現れたのは、激しい怒りを瞳に宿したケビンだった。
「ユリウス・ヴァルト。よくもその面でここに来られたものだ。妹はもう、お前の妻ではない。この離縁状を見ればわかるだろう」
「あんなもの、認めない! 彼女は誤解しているんだ、セザンヌのことは昔の縁で……!」
「昔の縁? ははっ、笑わせるな!」
ケビンは一歩、ユリウスに歩み寄り、その胸ぐらを掴み上げた。
「妹はお前に、自分の誇りも、騎士としての将来も、すべてを捧げる覚悟で嫁いだ。それを『責任取りの結婚』だと言い放ち、挙句の果てに元婚約者の女を屋敷に引き入れたのは誰だ!」
「それは……彼女を救うために……」
「救うだと? 妹はお前のその『浅薄な正義感』に、魂を切り裂かれたんだよ。……いいか、ユリウス副団長。お前はもう、夫でもなければ、騎士として尊敬の対象でもない。そして……」
ケビンの声が、低く、地を這うような響きを帯びた。
「……お前はもう、父親ですらない。二度と、我々の前に姿を見せるな」
「……父親?」
ユリウスの心臓が、ドクリと大きく跳ねた。
だが、ケビンはそれ以上の言葉を拒むように、冷たく門を閉ざした。
ユリウスはその場に立ち尽くした。「父親ではない」という言葉の真意を測りかね、ただ自分の指先の震えを見つめるしかなかった。
失意のまま屋敷に戻ったユリウスを待ち構えていたのは、離宮で「安静」にしているはずのセザンヌだった。
彼女はユリウスの姿を見るなり、縋り付くように腕を絡めてきた。
「ユリウス様! どこへ行っていらしたの? 怖い……あの女の兄様たちが、私を殺しに来るのではないかと……。……見てください、赤ちゃんも怖がって、お腹が痛むのですわ」
これまでのユリウスなら、迷わず彼女を抱き上げ、優しい言葉をかけていただろう。だが、今のユリウスの耳には、その声は甘ったるい戯言にしか聞こえなかった。
「……セザンヌ。君を診るために、王宮から腕利きの医師を呼んだ」
「えっ……? でも、私はいつもの先生で……」
「マグノリア殿下のご厚意だ。拒否は許されない」
ユリウスの背後から、厳格な表情を浮かべた年老いた医師と、数人の騎士が現れた。セザンヌの顔から、一気に血の気が引いていく。
「さあ、ご夫人。診察室へ」
「や、やめて! 私は病気なの! 安静が必要なのよ!」
セザンヌの悲鳴は無視され、彼女は半ば強制的に診察室へと運び込まれた。
ユリウスは、廊下でただ時計の音を聞いていた。一分、一秒が、永遠のように長く感じられる。
やがて、扉が開いた。
出てきた老医師の顔には、隠しきれない軽蔑と怒りが刻まれていた。
「ユリウス副団長。真実を申し上げます」
「……はい」
「セザンヌ殿は、確かに懐妊されています。……しかし、その時期がおかしい。お腹の膨らみ、および胎児の成長具合から見て、受胎したのは少なくとも『五ヶ月前』です」
ユリウスの思考が、一瞬停止した。
五ヶ月前。
それは、彼が北部の戦場で、セザンヌと再会するよりも、はるかに前のことだ。
「……つまり、どういうことですか……」
「簡単なことです。……腹のお子は、副団長のお子ではございません。彼女は再会した時、すでに『別の男』の子を身籠っていた。……おそらく、隣国での逃亡生活の中でか、あるいは亡くなった前夫との間にか……。いずれにせよ、貴方を慕って会いに来たとの言葉も、貴方の子を宿したという言葉も、すべては侯爵夫人の地位を奪うための、あまりにも卑劣な嘘です」
ユリウスは、壁に手を突き、その場に崩れ落ちた。
「……あぁ……」
情けない声が出た。
自分は、一体何を守っていたのか。
他人の子を宿し、自分を利用しようとした女を「犠牲者」だと信じ込み、そのために、自分を誰よりも愛し、誇り高く支えてくれたセレフィーネを、投げ捨てた。
「ああああああああああ!」
執務室に、ユリウスの獣のような絶叫が響き渡った。
彼は、セレフィーネが「責任取りの結婚」だと言われ、どれほどの絶望を感じたかを、今、ようやく理解した。
自分を捨てた過去のある女。その女の嘘に踊らされ、本物の愛を自ら踏みにじった。
その時、彼の脳裏にケビンの言葉が蘇った。
――『お前はもう、父親ですらない』
もし、もしも。
セレフィーネもまた、あの日、自分との子を授かっていたのだとしたら……?
ユリウスは、セザンヌのいる診察室へ駆け出した。
そこには、正体が暴かれ、醜く顔を歪めて笑うセザンヌが、騎士に押さえつけられていた。
「……ふふ、ふふふふ! バカな男。……ちょっと泣いて、昔の思い出を語れば、すぐに信じるんですもの。……セレフィーネがどんな顔をして出て行ったか、見せてあげたかったわ。あんなに惨めで、死人のような顔をした女、初めて見たもの!」
「黙れ……! 黙れえええええ!」
ユリウスの怒号は、もはや誰にも届かなかった。
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