13 / 14
本編 逆襲の幕開け
凍てつく女の凱旋
「エメラルダ……っ! 君、正気か!? 公爵家を破滅させて、君だって無事では済まないんだぞ!」
床に這いつくばったまま、レオナルドが絞り出すように叫ぶ。その顔は恐怖と屈辱で激しく歪んでいた。かつての傲慢な次期公爵の面影はどこにもない。
「あら、ご心配なく。私は既に『不当な扱いを受けた悲劇の妻』として、王家へ離縁状を提出済みよ。貴方がシャルロットと密会していた証拠、そして公爵家の資産を私的に流用していた帳簿……すべて、貴方の『実印』を押してね」
エメラルダは、手元に残った実印を、まるで汚物でも捨てるようにレオナルドの足元へ放り投げた。カラン、と虚しい音が響く。
「な……っ! あの印章は、君が管理していたはずだ!」
「ええ。だからこそ、貴方の筆跡を真似て、貴方の指印を盗んで、完璧な『自白調書』を作り上げたの。……貴方がシャルロットに溺れ、寝室へ通い詰めるのを周囲に見せつけたのも、すべてはこのため。誰もが、貴方が妻の義妹への執着ゆえに正気を失い、家産を蕩尽したのだと信じているわ」
エメラルダは窓を開け放った。冷たい夜風が吹き込み、彼女の銀髪を揺らす。
「結婚前に、貴方とシャルロットの計画を覚えているかしら? ……貴方は言ったわね。『エメラルダの肉片すら残すな』と」
「……っ!? なぜ、それを……。あの計画は、まだ実行して……」
レオナルドが言葉を失う。そう、今世の彼はまだその命令を下していない。だが、エメラルダの瞳には、前世で刻まれた凍てつく殺意が宿っていた。
「貴方の魂は、既に腐りきっている。……だから、今度は私が、貴方のプライドを、爵位を、人生を、消し去って差し上げるわ」
夜明けの鐘が鳴り響くと同時に、寝室の扉が勢いよく開かれた。
入ってきたのは、エメラルダの実家の騎士たち、そして王宮からの使者だった。
「レオナルド・ワーグナー。貴殿には公金横領、及び配偶者への虐待、不貞の疑いがかかっている。直ちに同行願おう」
「待て! 誤解だ! これはエメラルダが仕組んだ罠なんだ!!」
レオナルドは無様に暴れ、騎士たちに取り押さえられた。引きずられていく彼の視線の先で、エメラルダは静かに、そして誰よりも美しく微笑んでいた。
「……さようなら、レオナルド様。地下牢ではシャルロットが待っているわ。二人で仲良く、永遠に睦み合っていればいい。……底無しの泥沼の中でね」
数日後。
王都から遠く離れた、北の果ての別荘。
エメラルダは、暖炉の火を見つめながら、ゆったりと椅子に身を預けていた。
公爵家は取り潰され、レオナルドとシャルロットは爵位を剥奪。借金のかたに一生、地下の強制労働施設から出られることはない。
彼女の手元には、実家へ移した莫大な資産と、手に入れた本当の「自由」があった。
「……やっと、終わったわ」
エメラルダは自分の白い腕をさすり、大きく息を吐いた。
もう、あの男の臭いも、偽りの愛の言葉も、彼女を苛むことはない。
窓の外には、かつて彼女の命を奪った雪が、今は静かに、祝福するように美しく舞い落ちていた。
エメラルダは、残っていた最後の一杯の紅茶を飲み干すと、二度と過去を振り返ることなく、新しい物語のページをめくった。
完
___________
エール📣いいね❤️お気に入り⭐️応援よろしくお願いします🙇♀️
📢新連載🌹【嘘まみれのお姉様はどうぞお幸せに?~影武者の私が消えた後、お姉様は一人で何ができるのかしら?~】
床に這いつくばったまま、レオナルドが絞り出すように叫ぶ。その顔は恐怖と屈辱で激しく歪んでいた。かつての傲慢な次期公爵の面影はどこにもない。
「あら、ご心配なく。私は既に『不当な扱いを受けた悲劇の妻』として、王家へ離縁状を提出済みよ。貴方がシャルロットと密会していた証拠、そして公爵家の資産を私的に流用していた帳簿……すべて、貴方の『実印』を押してね」
エメラルダは、手元に残った実印を、まるで汚物でも捨てるようにレオナルドの足元へ放り投げた。カラン、と虚しい音が響く。
「な……っ! あの印章は、君が管理していたはずだ!」
「ええ。だからこそ、貴方の筆跡を真似て、貴方の指印を盗んで、完璧な『自白調書』を作り上げたの。……貴方がシャルロットに溺れ、寝室へ通い詰めるのを周囲に見せつけたのも、すべてはこのため。誰もが、貴方が妻の義妹への執着ゆえに正気を失い、家産を蕩尽したのだと信じているわ」
エメラルダは窓を開け放った。冷たい夜風が吹き込み、彼女の銀髪を揺らす。
「結婚前に、貴方とシャルロットの計画を覚えているかしら? ……貴方は言ったわね。『エメラルダの肉片すら残すな』と」
「……っ!? なぜ、それを……。あの計画は、まだ実行して……」
レオナルドが言葉を失う。そう、今世の彼はまだその命令を下していない。だが、エメラルダの瞳には、前世で刻まれた凍てつく殺意が宿っていた。
「貴方の魂は、既に腐りきっている。……だから、今度は私が、貴方のプライドを、爵位を、人生を、消し去って差し上げるわ」
夜明けの鐘が鳴り響くと同時に、寝室の扉が勢いよく開かれた。
入ってきたのは、エメラルダの実家の騎士たち、そして王宮からの使者だった。
「レオナルド・ワーグナー。貴殿には公金横領、及び配偶者への虐待、不貞の疑いがかかっている。直ちに同行願おう」
「待て! 誤解だ! これはエメラルダが仕組んだ罠なんだ!!」
レオナルドは無様に暴れ、騎士たちに取り押さえられた。引きずられていく彼の視線の先で、エメラルダは静かに、そして誰よりも美しく微笑んでいた。
「……さようなら、レオナルド様。地下牢ではシャルロットが待っているわ。二人で仲良く、永遠に睦み合っていればいい。……底無しの泥沼の中でね」
数日後。
王都から遠く離れた、北の果ての別荘。
エメラルダは、暖炉の火を見つめながら、ゆったりと椅子に身を預けていた。
公爵家は取り潰され、レオナルドとシャルロットは爵位を剥奪。借金のかたに一生、地下の強制労働施設から出られることはない。
彼女の手元には、実家へ移した莫大な資産と、手に入れた本当の「自由」があった。
「……やっと、終わったわ」
エメラルダは自分の白い腕をさすり、大きく息を吐いた。
もう、あの男の臭いも、偽りの愛の言葉も、彼女を苛むことはない。
窓の外には、かつて彼女の命を奪った雪が、今は静かに、祝福するように美しく舞い落ちていた。
エメラルダは、残っていた最後の一杯の紅茶を飲み干すと、二度と過去を振り返ることなく、新しい物語のページをめくった。
完
___________
エール📣いいね❤️お気に入り⭐️応援よろしくお願いします🙇♀️
📢新連載🌹【嘘まみれのお姉様はどうぞお幸せに?~影武者の私が消えた後、お姉様は一人で何ができるのかしら?~】
あなたにおすすめの小説
王太子に「戦友としか思えない」と言われたので、婚約を解消しました
明衣令央
恋愛
婚約者である王太子ヘンリーから「君のことは戦友としか思えない」と告げられた、公爵令嬢アリスティア。
十年以上の王妃教育を積んできた彼女は、静かに婚約解消を受け入れる。
一年後、幸せな結婚を迎えた彼女にとって、ヘンリーのその後は――もうどうでもいいことだった。
婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~
ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された
「理由はどういったことなのでしょうか?」
「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」
悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる
それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。
腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。
離縁され隣国の王太子と海釣りをしていたら旦那様が泣きついてきた。私は別の隣国の王太子と再婚します。
唯崎りいち
恋愛
「真実の愛を見つけた」と言って、旦那様に一方的に離縁された侯爵令嬢。だが彼女の正体は、大陸最大級の鉄鋼財閥の後継であり、莫大な資産と魔力を持つ規格外の存在だった。
離縁成立から数時間後、彼女はすでに隣国の王太子と海の上でカジキ釣りを楽しんでいた。
一方、元旦那は後になって妻の正体と家の破産寸前の現実を知り、必死に追いすがるが——時すでに遅し。
「旦那様? もう釣りの邪魔はしないでくださいね」
恋愛より釣り、結婚より自由。
隣国王太子たちを巻き込みながら、自由奔放な令嬢の人生は加速していく。
冷酷夫からの離婚宣告を受けたので、次は愛してくれる夫を探そうと思います。
待鳥園子
恋愛
「……それでは、クラウディア。君とはあと、三ヶ月で離縁しようと思う」
一年前に結婚した夫ジャレッドからの言葉に、私はまったく驚かなかった。
彼はずっと半分しか貴族の血を持たぬ私に対し冷たく、いつかは離婚するだろうと思っていたからだ。
それでは、離婚までに新しい夫を見付けねばとやって来た夜会に、夫ジャレッドが居て!?
妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った
ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。
昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。
しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。
両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。
「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」
父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた
ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。
だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。
私から略奪婚した妹が泣いて帰って来たけど全力で無視します。大公様との結婚準備で忙しい~忙しいぃ~♪
百谷シカ
恋愛
身勝手な理由で泣いて帰ってきた妹エセル。
でも、この子、私から婚約者を奪っておいて、どの面下げて帰ってきたのだろう。
誰も構ってくれない、慰めてくれないと泣き喚くエセル。
両親はひたすらに妹をスルー。
「お黙りなさい、エセル。今はヘレンの結婚準備で忙しいの!」
「お姉様なんかほっとけばいいじゃない!!」
無理よ。
だって私、大公様の妻になるんだもの。
大忙しよ。